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一歩進んだ音楽理論 和声学編

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和声についてのあれこれをご紹介していきます。
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2023年3月の記事一覧

V9の和音 一歩進んだ和声学 Part 12

今回はV9の和音について学んでいきます。 V9の和音はV7の和音に9度上の音が付加された和音です。ポピュラー音楽ではテンションコードと呼ばれるものの1つです。このV9の和音にも色々な制約があるみたいです。さっそく見ていきましょう。 1 V9の和音先程述べた通り、V9の和音はV7の和音に根音から9度上の音を付加したものです。これを9の和音といい、V9で表します。またV9の和音は「属9の和音」と呼ばれます。 和声学においては9の和音はV音の上だけに形成されるという見解をとって

V9の和音根音省略形 一歩進んだ和声学 Part 13

今回はV9の和音根音省略形についてを学んでいきます。V9の和音の根音を省略した形で、構成音としてはVII7の和音と同一になります。ここではVII7の和音とV9の和音根音省略形は別の機能を持つ和音として区別されます。ではV9の和音根音省略形はどのような機能を持つのか、見ていきましょう。 1 V9の和音根音省略形文字通りV9の和音の根音を省略した形です。今まで省略されていた第5音もここでは含まれます。表記はV9のVの部分にスラッシュを付けます。 V9の和音根音省略形では三つの

D諸和音の総括 一歩進んだ和声学 Part 14

今回は今まで登場したD(ドミナント)諸和音のまとめです。加えて補足事項を少し紹介しようと思います。 1 D諸和音の総括ここで今まで出たVの和音をまとめます。 (i) Vの和音 Vの和音は基本形、第1転回形、第2転回形の三つの形を持ちます。 それぞれの後続和音は Vの和音→Iの和音、Iの和音第1転回形、VIの和音 Vの和音第1転回形→Iの和音 Vの和音第2転回形→Iの和音、Iの和音第1転回形 となります。 (ii) V7の和音 V7の和音は基本形、第1転回形、第2

バス課題の練習 一歩進んだ和声学 Part 15

さて、今回は今まで学んできたことをいかしてバス課題を行います。バス課題はあらかじめバス声部に音が与えられ、それに上3声を配置するものです。では早速行いましょう。 例題1以下のような例題を用います。 ここで4小節目と8小節目に注目してください。ここは全音符でV音が配置されています。これは半終止と呼ばれるもので、句読点の「、」にあたるものです。この場合、使える和音はVの和音のみです。 また最後の小節ではI音が全音符で配置されています。これは全終止と呼ばれるもので、句読点の「

和音の補遺 一歩進んだ和声学 Part 16

今回は今まで学んだことの補足をしていきます。重要度は下がりますので、「こういうのがあるんだ」程度の認識で捉えて頂ければ。ではまいりましょう。 和音の補遺・低音4度の予備における補遺 低音4度の予備においてIの和音第2転回形においては必要としません。 ・声部の離隔 配置において、各隣接声部音間の隔たりが標準的な配置以上になることを、声部の離隔といいます。 復習ですが、各隣接する声部隔たりの範囲は ・ソプラノ~アルト 1度~8度 ・アルト~テノール 1度~8度 ・テノー

II7の和音 一歩進んだ和声学 Part 17

今回からは和声法第2段階へと突入していきます。第2段階では主にS諸和音を中心に取り扱います。最後には転調を含めたバス課題を行います。 今回はII7の和音についてを学びます。V7の和音の次に使用頻度が高いといってもよいII7の和音ですが、V7の和音と異なる箇所はあるのでしょうか。さっそくみてきましょう。 1 II7の和音文字通り、IIの和音に7度上の音を付加したものです。 このII7の和音の第7音も下行限定進行音です。 II7の和音の後続和音はV諸和音しかないですから、よっ

準固有和音 一歩進んだ和声学 Part 18

今回は準固有和音についてを学びます。この準固有和音はある調において、他の調の和音を一時的に借りてくる借用和音というもののひとつです。今回では準固有和音とは何なのかに重点を置いて紹介していきます。早速見ていきましょう。 1 定位音度と変位音度各調における「音階各音度の固有の音高位置」を、それぞれの音度の定位といい、定位にある音度を定位音度といいます。 例えばハ長調(Cメジャー)の定位音度は以下のようになり、 ハ短調(Cマイナー)の定位音度は以下のようになります。 そして

準固有和音の配置と連結 一歩進んだ和声学 Part 19

今回は準固有和音を使った上3声の配置と連結についてを学びます。ここでは気を付けるべきこととして、対斜(たいしゃ)というものがでてきます。この対斜が準固有和音を使った連結において注意すべきものとなります。では どのようなものなのか、早速見ていきましょう。 1 準固有和音の配置準固有和音の配置については制限がありません。それぞれ密集、開離、Oct配分で配置します。 また〇V9の和音根音省略形は短調のV9の和音根音省略形と同じく、第9音の配置の制限はありません。 2 準固有和

V調のVの和音 一歩進んだ和声学 Part 20

今回はV調のVの和音というものを学んでいきます。これは借用和音の一種で、V調のVの和音を一時的に借りてくるものです。ポピュラー音楽ではセカンダリードミナントとして知られているものですが、和声学ではどのような機能を持っているのでしょうか。早速見ていきましょう。 1 各音度調ある調において、Iの和音以外の各音度3和音(定位音度からなる)をそれぞれIの和音としてもつ調を、その調の各音度調といいます。 ある調の各音度調に対して、その調自体をI調と呼びます。 それぞれを IIの3

V調のVの和音② 一歩進んだ和声学 Part 21

前回からの続きです。今回はV調のVの和音をさらに細かく見ていこうと思います。 1 vVの3和音vVの3和音は基本形、第1転回形が主に使われ、第2転回形は用いられません。 基本形の配置は高音位は自由で密集、または開離配分で配置します。 第1転回形の配置は根音高位のOct配分が最適です。しかし、根音高位の開離配分も使用されます。 (i) vVの3和音→D諸和音の連結 vVの3和音の第3音は限定進行音で、2度上行します。 ただしV7の和音、V9の和音(それぞれ根音省略形

V調のVの和音③ 一歩進んだ和声学 Part 22

前回からの続きです。今回はvV7の和音根音省略形、vV9のを和音、vV9の和音根音省略形を学んでいきます。 1 vV7の和音根音省略形vV7の和音根音省略形は第2低音位のみを取り扱います。 上3声は第7音を重複した形で使用します。高音位は自由、密集、開離、Oct配分で配置します。 (i) vV7の和音根音省略形→V(7)の和音の連結 vV7の和音根音省略形→V(7)の和音の連結において vV7の和音根音省略形の第3音は2度上行させます。または、半音階的関係をなす2音があ