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チクショーについて

ある休日の暇な時。YouTubeで昔流行った芸人さんのネタでも見るかと思い、エンタの神様と検索をかけた。

エンタ全盛期に育った僕。          ですよ。ネゴシックス、アクセルホッパーなどなど、こんな人達もいたな〜なんて思いながら、動画を見漁った。

そんな中、ある芸人に再会した。       小梅太夫である。最近またテレビで見かける機会も増えたが、ハイトーンボイスのチャンチャカチャンチャンからの「チクショー」というオチ。 改めて見ると、けっこう面白い。

小梅太夫の動画を見ながら、果たして実生活で声に出して「チクショー」と言うことってあるか?と思った。

言わずもがな、チクショーとは想定外の出来事や理不尽な出来事に直面した時に出る、怒りの感情の発露である。チクショーの語源は、たぶん六道の畜生だと思うが、畜生とは人以外の動物の事を指すようだ。

語源に忠実に捉え直すのであれば、人らしからぬ行いに直面した時に発露する怒りの感情といったかんじになるだろうか。

僕も仕事とかで、チクショー的な場面に出くわすことがあるが、そんな時にマイ脳内Googleの最上位に出てくる言葉は、「クソ」である。

クソの方がそもそも文字数が少ないし、怒りをボールのように勢いよく放ることができる。実際に周りの人を見ていても、登場頻度はクソの方が圧倒的に多い。

そんなクソが優位な社会の中で、1度だけチクショーを耳にしたことがある。

発言者は、僕が新人だった時の直属の課長さんである。僕は住宅系の会社に勤めているのだが、 まぁなかなかのクレーム産業である。特に建築中現場の近隣からのクレームがかなり多い。大抵は正当なものだと思うが、たまに理不尽なものもある。理不尽なものほど、先方がなかなか引かない為、対応に苦心する。

その課長さんは、本当に人格者の方で清廉潔白。営業スタイルも仕事に対する姿勢もとても尊敬できる方だった。社内社外問わず、厚い信頼を受けていた。ただ1つ、案件の引きが悪いと言うか、 クレーム現場を常に抱えており、クレーム対応は日常茶飯事だった。

ある日のこと。いつものように(?)課長さんはクレームの対応をしていた。電話対応だったので詳しい内容は分からないが、現場からのクレームだったようだ。結構な無理難題を理不尽につけられている感じが、横から伝わってくる。それでも丁寧かつ毅然に対応する課長さん。      僕もうまく収まることを祈りながら、横目で見守っていた。

結局、向こうの要求を飲む形で収束したらしく、電話が切れた。電話が切れた途端、その課長さんが一言。「チクショー」と呟いたのである。  

これが僕とチクショーのファーストコンタクトである。

そのチクショーには、やりきれないという思いが込められており、今だにその情景は頭に残っている。

それでもさすがは課長さん。怒りはそのチクショーのみで収まり、部下に対してあたることもなく、いつもの温厚な姿に戻られた。

たぶん、現場との軋轢や理不尽な要求、部下も前にしている状況。様々な関係を踏まえた結果、 クソを超越してチクショーが出てきたのだと思われる。

僕はまだ、真にチクショーと出てくるようなハードな場面に出くわしたことはないのだろうと認識した。けれども、これから昇進し、マネジメントをする立場になるにつれて、もしかしたら「チクショー」と口にする日が来るかもしれない。

小梅太夫の小梅日記を振り返ってみても、  「偏差値の低い学校に入学したら、先生がチンパンジーでした」など、クソでは片付けきれない チクショーと言わざるを得ない状況に直面しているのである。(偶然にも人ならざるものと直面している)

ストレス社会と言われる昨今。        もしかしたら、チクショーはその頂点に鎮座しているのかもしれない。



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