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蹲踞について

僕は喫煙者である。最近は喫煙者パージな世の中になっており、肩身が狭い。勿論、周りへ副流煙や不快感を与えることには申し訳なさを感じているが、あまりにストレスフルな仕事をしている為に、当分はやめられそうにない。

カフェなんかも、喫煙室があるお店をチョイスする。タバコとコーヒーという悪魔の組み合わせは、永久不滅である。

先日、休日に読書をする為にいつものカフェに入った。そのお店にも当然喫煙室がある。とりあえず、入ってすぐに「一発ヤニかましとくか」と思い、喫煙室に入った。

室内には僕とおじさん1人しか人がいなかった。普通に火をつけて吸い始めると、おじさんが急に相撲の蹲踞(そんきょ)の姿勢を取り始めた。そして蹲踞の姿勢のまま、タバコに火をつけて吸い始めた。

この時点でクセが強いのだが、吸い方も大クセだった。1吸いすると、手を素早く灰皿の上に動かし、灰を落とす。寸分の狂いなく、その動作を蹲踞の姿勢のまま続ける。ごっつぁんです。とか言い出すんじゃないかと変にヒヤヒヤしながら、狭い室内なのでジロジロ見るわけにもいかず、僕はスマホをいじるしかなかったのだが、横が気になって気になって仕方がなかった。

そうこうしている内に、もう1人室内に入ってきた。その人は世捨て人みたいな風貌をしたお爺さんで、一眼見てヤバい人だと分かる感じだった。

案の定、マジックで「山本太郎」とびっしり書いてあるポーチを取り出して、タバコを吸い始めた。蹲踞と山本太郎。クセまみれの2人に囲まれる形で狭い室内にいるので、怖くて怖くて仕方なかった。

早く吸い切って出てしまいたかったのだが、たまたまロングのタバコを吸っていたことと、何か起きないだろうかという変な好奇心で、少しの間居座ってみた。

蹲踞は間髪入れずに2本目のごっつぁんですを始める。山本太郎は、自慢のポーチを喫煙室の床に放置したまま部屋を出て行った。忘れたというよりは置いていった形だったので、そのまま放置しといた。

改めて、喫煙室の魔境っぷりを見せつけられた。


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