2020.7.13 酒詩「手取川 吉田蔵 U」
その歩みを雪の上に
見る 柔い雪には縁がある
触れればそれは
溶ける
溶けるのに
痛みを刻む
透明に
雪は 降り 続 く
夏の暑さなど
溶かせ
手が 動き今日も
波紋が広がる
震えは物理的なものか
あるいは──
階段を登る 今日も
階段を
登る とは
日々は
われわれは
何かしら
触れたのだろうか それに
(ついに誰も答えない)
登る
高さは怖さ 怖さは 誇り
であるのか である である そうか?
のに踊り場の景色はいつも
ああ 変わらない
困ってしまう
やめられはしない
(やる やめる やる のどれも逃げ道ではない)
やめない道の木の芽を踏み 一歩
手は 動き続けて
動かされておらず
この間
かと言って
動くわけでも
なく晴天の空は今日も
曇り空曇り空 曇りのち曇りのち
曇りを砕いたような雪
指をまた覚醒させる暖かい光と細い煙は
空の一点にいつも集まる
祈 って も
降り 続 く
怒涛では
なく しんしんと
さながら
雲を食むような
日々 味わいはなく 感触はあり
悴む手 は
悴む 手は
悲鳴をあげず
なんで?
悲鳴を あげず
ため息はまた雲に
それを見た人はいつものんきだ
それで いいんだけどさ
生み出す人は また食む人
雲を食むのは 生きること
だ 連綿と続く連鎖を裏返せば
熱に雪
いつの日も
影に花
柔い雪には
縁がある
触れれば
それは
溶けるのに
──溶けるのに 透明に
痛みを
刻
む
どうってことない
リフレインが
今日も
勝手に歩む
既視感のあるリフレイン
巻き込む
意図はいつも白く溶けて
またここで笑ってしまう
役に立たない意図といて
リフレイン
(「いいお酒だねえ。」)
(「ホントだねえ。」)
そうでしょう?
うん そうでしょう
刻まれていく 刻んでく
両手で
一歩に蔓がまとわりつく
白さ 雪の結晶
視線に溶ける冬夜の燈火
夏 田園であなたを待つ
──なァ あんまり怖い顔すんなよォ
柔い雪には 縁がある
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詩を読んでいただきまして、ありがとうございます。
酒詩は飲んで心に突き刺さったお酒を印象・蔵の背景・そこから湧くインスピレーションごと言葉で書き記そうという試みです。
上記の詩はSAKEメディアの「Sake TIps!」に掲載させていただいたものです。
今回のお酒は、非常に優しく柔らかい第一印象から入って奥深い景色を見せてくれるものでした。また、この酒蔵の蔵模様を描いたドキュメンタリー作品「ザ・バース・オブ・サケ」がNetflixで観ることができます。
興味を持った方はそちらを見て、お酒もぜひ飲んでいただければと思っております。
酒造りは現代においても生死がかかったような場面が必ずつきまとう過酷な職です。(かといって神聖と畏怖で囲みすぎると気軽に楽しめなくなってしまうから、普段はあんまり気にしなくてもいいとは思うんですけどね。)
そんなことを頭の片隅において詩を読んで、酒を飲んでもらえたらなーって考えてます。
それでは今日も、乾杯。
酒と2人のこども達に関心があります。酒文化に貢献するため、もしくはよりよい子育てのために使わせて頂きます。