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酒詩:上喜元 生酛美郷錦ひやおろし



星の川辺で出会ったあなたと

千年続く文通をする

それにしてもここは谷底で

顔すら見えない夜のお話

ちくちく痒い木々のまわりは

夏以外がよく死んでいて一興

触る腕はまた

触れた脚はまた

いっそう感覚をひりつかせていく

言葉が通じないわたしたちは文通をする

いつでもはじめて使う言葉で

つぶやきのように

慰めのように

水が滴る

銀縁の眼鏡は月

消えた炎は体温も奪う

ずうっとずうっとこのままいても

寒いまま

寒いまま手を握っていて

わたしたちは歩きだす

死人の季節たちがつられる

四肢がつめたい

顔の形をたしかめる

舌先でそっとたしかめる

千年続く文通をする

言葉が通じないわたしたちの

どうしてもたしかめたい色は

なつかしい家の瓦の色

時間をまとって歩く

顔の見えないあなた

声の出ないわたし

文通する

大胆に恥じらって文通する

目をつむってあなたの顔を思う

笑った顔を見たくなるあなた

怒った顔はきっと見えない

あなたは、どこへ?








酒と2人のこども達に関心があります。酒文化に貢献するため、もしくはよりよい子育てのために使わせて頂きます。