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2020.9.7 ひやおろしについて。

仕事の関係でひやおろし、秋あがりについて調べていたのだけれど、あまりにとんでもないことになっていてたまげたのちょっと書きます。

まずひやおろしについてなのですが、わたしの記憶が正しければひやおろしは「冬~春先までにつくったお酒を火落ち菌による酸敗、温度上昇による劣化などとかく品質低下を防ぐために一度火入れ(加熱殺菌)してタンクや桶に貯蔵し、そのまま春夏の期間で熟成させて、外気温とお酒の貯蔵庫の気温が同じくらいになったら(熟成の形や香味を保つために)もう一度火入れはせずにそのまま(常温で、この常温を「ひや」という)詰めて(古くは杉樽、現代は瓶に詰めて)卸す・出荷すること」だったはずです。

↑ここ違ってたらわたしも勉強し直しますのでご指摘ください。

情報収集のために「ひやおろし」で検索していたら、ひやおろしの説明に関して引っかかりや違和感があるサイトが多く出てきました。

具体的な列挙は避けますが、散見された情報は以下。

①一回火入れしたけれど、二回目をしてないから、生に近い味わいがある
②生の状態のひやおろしが存在する
③ひやおろしの際に行われる火入れが「低温加熱殺菌」であると表記する
④紙面の文字数が限られているからなのか、必要な情報が抜けるor都合のいい妄想で定義をないがしろにしている
⑤(ひやおろしに限ったことではないけれど)ひやおろしを広めたとされる組織の「ひやおろし」ページの説明を丸パクリしているのに出典表記がない

と、今日数時間調べてこんな感じです。

順にコメントしていくと、

①嘘はやめよう。恐ろしいことに「大手」と認識されている酒蔵の「ひやおろし」ページにもこれがあった。二件。商売だから多少の誇張はいいが、嘘はやめて欲しい。一度火入れしている時点で生酒とは異質なものになっている。「なってない!」という人は耳鼻科へいこう。というのは冗談だけれど、とかく不誠実の極み。

②ジャンルブレイカー。「これが〇〇だ」という定義がある程度定まって伝播したあとに「△△もいいのでは?」「□□もいいだろ」と亜種をぶちこむひとがいるのはわかるが、行き過ぎると底が抜けてそのジャンルがある意味がなくなる。肩書じゃなくて商品の魅力で売ってくれ。たぶんおいしいから「ひやおろし」とかつけなくても売れるよきっと。

③大抵の火入れの説明中でそれが「低温」であることは強調されないと思うのだけれど(というか温度の表記もなく「低温」とだけ書くのが嫌らしい、まあ確かに65℃いかない程度で火入れするのが一般だから低温なんだけれども!)、ひやおろしに限って「低温」を強調する方法は良くない。ひやおろし以外もたいてい同じ温度で火入れしているはずである。差異がある蔵だけがかける売り文句だけれど、はたしてどれくらいの蔵がそうしているのか。未知数。

④書くな。

⑤大学行け。そんなとこですぐバレるオリジナリティの捏造するな。敬意をもって引用したと書け。

一般消費者が書いたものなら気にしなかったのだけれど、上記にもあるように「大手」と認定されてもおかしくない規模の酒蔵のサイトでも嘘がまかり通っている。これは端的によくない。

あと、今更だけれど。

「これは、ひやおろしじゃなくて『秋あがり』だよなあ」って思ってる酒蔵の方がいたらそっちの表記にしたほうがいい。商習慣に巻き込まれて形骸化したキャッチコピーの使用に堕するのはどう考えても愚策だ。「秋あがり」なら問題ない。気温40越えの地域も出るほどの季節に「ひやおろし」しているのか?

(立場上突っ込めないところもあるから蔵が自主的にやめてくれ、というのがわたしの個人的な本音である。)

あまりにひどい状況だったので書かずにはいられなかった。ここまで混沌としているとわたし自身の知識も「本当にこれでよかったっけ?」と不安になるほど。改めて調べなおそうと思う。

とにかく、良心があるメーカー、広報サイトはマジで嘘はやめた方がいいよ。そこだけは念押しして言っておきます。

初っ端で「たまげた(語源:魂消た)」って書いたけど、ほんとにひやおろしの魂消えてるよこれ。

前途多難。


酒と2人のこども達に関心があります。酒文化に貢献するため、もしくはよりよい子育てのために使わせて頂きます。