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2022年ベストアルバム30

 今年は年始早々に子供が生まれて、聴けるものが以前より限られてきたのだけど、振り返ってみれば去年よりも幅広に色んなジャンルを聴いていたようだ…
 個人的に気に入った作品に、感想に毛が生えた文を添えました。


30. Manisdron / Body Of Void
genre: Techno、Kraut Rock、Psychedelic

岡山のTHE NOUPのドラム氏によるソロプロジェクト。人力テクノ/クラウトロック/電子サイケ/EBM辺りが異常な混じり方しちゃってて凄い。前作セルフタイトルEPもかなりの怪作だったけど、そこからもう一歩サイケデリックな方に踏み込んでいる。そして意味ありげで意味が全然わからない謎ボーカルも妙な雰囲気を醸し出していてドラッギーでヤバい。今作も凄すぎる。




29. After / AM
genre: Crust Core、Psychedelic

大阪の異形ハードコア。D-BEAT、クラストの類とループミュージックの相性がいいことはANTISECT辺りで既にわかっていたけど、クラストのノイジーさを持ちながらここまで酩酊感、リズムの不明瞭さを打ち出してるバンドは他にいないと思う。怪作。
※配信、デジタル等ありません…




28. HOLD ME DOWN / Powerless
genre: Industrial Metal、Black Metal

アメリカのインダストリアル(ブラック)メタル。インダストリアルブラックはブラック的な邪悪さの方が前面に出ているバンドが多いイメージだけど、このバンドはあくまでインダストリアルメタルで良い。Godflesh系の圧殺タイプ、Klutæ系の捻くれつつも畳み掛けるマシンビート、SPK的なより原始的なインダストリアルと色々てんこ盛りで最高な1枚!やはりSentient Ruin恐るべし…




27. ISSUGI / 366247
genre: HIP-HOP、Boom Bap

毎度渋すぎるISSUGIのアルバムだけど、今回はいつものスモーキーな16FLIP名義のビートに比べてかなり曲ごとにカラーが立ったDJ SCRATCH NICEのビートによって全く飽きずに聴き通せる。ISSUGI聴いてる時が一番ヒップホップ聴いてる感覚になる。




26: Trikorona / 様々な困惑(2022)
genre: Grindcore、Emoviolence、Psychedelic

東京は小岩(だったよな)のサイケデリックグラインド(と呼びたい)2ndフル!
これがとんでもない内容で、GASPよろしくなサイケデリックなグラインドコアに激情/エモバイオレンス的な知性/直情性を注入させたような、他に代えようのない真にオルタナティブなハードコア。ハードコアではおおよそ聴かないような奇怪な音が次々と……。ジャンル的な意味ではなくホントの意味でのカオティックハードコアであると思う。
※こちらもデジタルや配信等今のところ無さそう。バンド側のスタンスは仕方ないが、広く聴かれてほしいとは思ってしまう。それくらい良い。




25. Pharmacist / Flourishing Extremities On Unspoiled Mental
genre: Gore Grind、Death Metal、Progressive

前作まではCarcass純正サウンドだったPharmacistが突然リリースしたプログレッシブで複雑な曲展開のゴアグラインドアルバム。Individual Thought Patternsの頃のDeathにCarcassが乗り移ったかのような音楽性に悶絶。惜しむらくはドラムが打ち込みくさいところだけど、そこまで気にならない。コレは名盤。




24. CAILN / The Essenceof Ruthlessness
genre: Death Metal、Doom Death、Hardcore

東京デスメタリックハードコアCAILN!
引きずりまくるドゥームデスなリフに所狭しと差し込まれる暴力的過ぎるビートダウンと、フロアの大惨事が目に浮かぶサウンド。所々入ってくるブラストビートも良いアクセント。個人的にはBolt Throwerを連想するバリバリのデスメタルなんだけど、やはり強烈なモッシュパートにハードコアバイヴスを感じる。




23. OMSB / Alone
genre: HIP-HOP

今年聴いた日本のHIP-HOPアルバムで最高の1枚だった。曲毎にかなりカラーの違うトラックをまとめ上げるOMSBのリリックは生活に寄り添ってくれるような、でも尻を蹴り上げられるような、不思議なバランス。どの曲もとことんフックが耳に残るし、爽やかで、でも力強い余韻の残る1枚。




22. PRESS ON AHEAD / Blizzard Style Core
genre: Beatdown Hardcore

岩手は盛岡のハードコアバンド。アルバムタイトル通り寒々しいブリザードリフに、大阪スタイルの極悪ビートダウンと、サウンドは徹底して冷徹だけど、デスボイスともスクリームともつかない鬼のような声のボーカルから来る怒りと熱量が凄まじい。名盤。




21. Blacklab / In A Bizarre Dream
genre: Doom Metal、Hardcore Punk

大阪ドゥームメタルデュオBlackLabの3rdアルバム!作風は前作までに比べてソフトにコンパクトに聴ける曲が多くなった印象。でも相変わらず濃すぎるバンド。オールドスクールなドゥームメタルを基調にしつつ、個人的には走る部分にハードコアを感じるのが好きなポイント。Yuko Morino氏のボーカルも、クリーンパートは魔女の様なドゥームメタル的歌唱だけど、やはりシャウト部分はハードコアを感じる。




20. Rigorous Institution / Cainsmarsh
genre: Crust Punk、Anarcho Punk、Post Punk、Industrial

ポートランドのクラストパンク1stフル!ブラックメタル系邪悪ボーカルに、クラストパンクな楽曲、ノイジーな不協和音ギター、そして微弱でチープなシンセサイザー。AmebixとKilling Jokeを同列に並べて聴いている自分のようなタイプには最高なアルバム。




19. Cassels / A Gut Feeling
genre: Indie Rock、Post Punk、Junk Rock

ロンドンのポストパンクバンドCasselsの3rd!Big BlackやShellacなどアルビニワークスが好きならば確実に気に入りそうなノイジーなギターサウンドに、ぶっきらぼうだけどどこかキャッチーでポップなメロディが乗った、オルタナ好きには間違いないやつ。




18. Petit Brabancon / Fetish
genre: Nu-Metal、Sludge、New Wave

京(DIR EN GREY)、yukihiro(L'Arc〜en〜Ciel)、ミヤ(MUCC)、antz(東京酒吐座)、高松浩史(THE NOVEMBERS)によるスーパーバンドの1st!
前情報から、豪華V系文脈によるニューメタルくらいのものになるのかと思っていたけど、蓋を開けてみたらかなり豊富な音楽性をニューメタルを軸にまとめ上げたような内容で最高の出来。個人的に最大の嬉しい誤算は、最近のMUCCからあまり期待していなかったミヤが原点回帰以上のヘヴィネスを叩きつけてきたこと。曲によってはスラッジ/ポストメタル辺りへ足を踏み入れた楽曲もあり、アンダーグラウンドのヘヴィミュージックもしっかり研究しているのが伝わってくる。デビューアルバムとして完璧だと思う。




17. Age Of Apocalypse / Grim Wisdom
genre: Hardcore、Hard Rock

NYのビートダウンハードコア1stフル!去年だか一昨年だかの編集盤も衝撃的だったけど、1stフルも完全に傑作に仕上げてきた!曲構造はフロアの地獄が想像できるビートダウンスタイルなんだけど、所々明らかにVan Halen辺りを意識してそうなギターリフが飛び出したり、実際サウンドもアメリカンハードロック的なカラッとした音だったりする。ボーカルもオジーを上手くした感じ(?)の野太いクリーンボーカルでかなり個性的。要所要所でNeurosisのメロウパートみたいな新基軸も盛り込みつつ、かなり濃厚なアルバムに仕上がってる。




16. COLD GAWD / God Get Me the Fuck Out of Here
genre: Shoegaze、Stoner

US産シューゲイズバンドの1st。シューゲイザー文脈というよりはストーナーやヘヴィサイケ由来と思われる煙たいギターに冷たくも甘いボーカルが乗る絶妙さがヤバすぎる。90年代インディファンで響かない人はいないでしょう。




15. Faceless Entity / The Great Anguish of Rapture
genre: Atomospheric Black Metal、Primitive Black Metal

どこまでも光のない暗黒を描き出す、オランダの絶望ブラックメタル。ボーカルの叫びもイービルと言うよりは悲鳴に近いもので、執拗に繰り返される限界までノイジーでかつ深淵なギターノイズに圧倒される。ブラストビートを挟んできたり、時折リズムチェンジもあるのだけど、終始暗黒一色で曲が進んでいくため、体感としては無限回廊をひたすら彷徨っている感覚。一方で非常に美しくもあるので、苛烈なシューゲイズとして聴くこともできるかもしれない。個人的に今年のブラックメタル最高作。
※リリース元のArgento Records、良質なブラックメタルばかりリリースしていて、隠れ良レーベルだと思う。




14. Chat Pile / God's Country
genre: Sludge、Junk Rock、Industrial Metal

オクラホマのスラッジバンド1stフル!典型的なスラッジと明らかに違うのが、初期Swans〜Godfleshと繋がるジャンクなIndustrial Metalの系譜にくるバンドであること。マシーナリーなドラムビートなどまさにその物。ボーカルは語り口調から強烈な喚きのようなシャウトまでを使い分けていて、曲の盛り上がりと共に苛烈になる様が激情ハードコアのボーカルを野太くしたように感じられるし、無機質な楽曲との対比も良い。




13. Bad Breeding / Human Capital
genre: Anarcho Punk、Post Punk、Indie Rock

UKアナーコパンクバンドによるフルアルバム!旧来からアナーコパンクはAmebixにしろRudimentary Peniにしろポストパンクと音楽的にリンクする部分があったけど、このバンドはそこをかなり意識的に推し進めていて、ノイジーなポストパンク/インディロックに大接近したアナーコパンクが鳴っている。サウンドも懐古的なものではなく現代的な音像に仕上がっていて、かなり鮮烈な印象を受ける。名盤!




12. sza / SOS
genre: R&B、HIP-HOP、POPS

これは衝撃的だった。R&BやHIP-HOPはめちゃくちゃ詳しいわけではないけど、コレほど食らったアルバムは久々。作品全体を通底する雰囲気はジャケットとタイトルからも分かる通りかなりセンチメンタル。ポップでキャッチーながらも憂いが漂うメロディを、ラップを挟みつつ歌い上げるパスキーボイス。全体を通して、丸みと温かみのある包まれるようなトラック。曲数の多さを感じさせない名盤。




11. Tzompantli / Tlazcaltiliztli
genre: Death Metal、Death Doom

Xibalbaのブライアン率いるデスドゥーム1stフル!引きずり圧殺するようなデスドゥームに所々非常に空間的な(diSENBOWELMENT的な)アレンジ、そしてさすがハードコア文脈だけあるモッシーなパートも各所に盛り込まれている。そしてそれだけに止まらない個性として、Xibalbaでも要所で聴かれるトライバルな要素を全面的に打ち出してきている。今年の個人的デスメタル最高作!




10. 宇多田ヒカル / BADモード
genre: POPS

わざわざ今さら自分が語るような語るようなアルバムじゃないけど、様々なサウンドやリズムの実験をポップスのど真ん中で鳴らした大傑作。やはり宇多田ヒカルは何処までも凄い。




9. IN THE SUN / Metaphor
genre: Deconstructed Club

埼玉発のエレクトロユニットによる名盤!!電子/人力ないまぜになったビートに乗る妖艶でゴシックな雰囲気を纏うエレクトロニクス!さらに妖しいムードを演出するサックス!今年ここまで身体を乗せながら世界観に耽ってしまうクラブミュージックは他になかったと思う。Disciplineという耽美で過激なレーベル(及びパーティ)からリリースされているのも納得なエッジィなアルバム!超名盤!!




8: VINCE;NT / VAPID
genre: Post Hardcore、Junk Rock、Stoner

東京のポストハードコア/ジャンクロック1stフル!FUGAZIやJesus Lizard等のポストハードコアやジャンクロック的な要素、煙たく引きずるようなストーナー要素を併せ持った音楽性。そしてこれらのジャンルの他のバンドに見受けられないほど、それらの要素を非常にドラマチックにまとめ上げている。そこに爬虫類的/妖艶なボーカルが乗る非常に独自な世界観がめちゃくちゃ魅力的。そしてドラムを中心に録音のクオリティが異常に高くて、再生した瞬間異世界に飛ばされる。超名盤!!




7. くだらない一日 / rebound
genre: Emo

東京のエモバンド2nd!これこそエモ!!と言いたい!!(でもエモリスナー以外にもLOSTAGEやアジカン聴く人まで刺さると思う)
アルペジオを伴う温かみのあるパートから、ナードな感情を強烈な歪みでもって暴発させる激情パートまで完璧!ギターボーカル高値氏の吐き捨てるようなぶっきらぼうさもやるせない気持ちを増幅させてきて、聴いていて泣きそうになる。歌唱とも叫びとも取れる崩壊寸前のギリギリさが胸に突き刺さる!!超超名盤!!ライブ観たい!!




6. CRYPTAE / Capsule
genre: Avangarde Death Metal

オランダ変態ロウデスメタルによる2ndフル!
狙い澄ましたロウなサウンドは1stに軍配が上がるけど、今作はさらに謎のチープエレクトロを導入していてすごい。従来のデスメタル要素をブラスト、ヘヴィリフ、デス声くらいしか見出せず、何処目指してるのか分からなくて全く得体が知れない。デスメタル(+α)の構成要素でもって、全くデスメタルではない楽曲を組み立てているような異形の怪作!!!




5. GRIM / CHEERLEADER
genre: Industrial、Noise、Death Industrial

日本のインダストリアル/ノイズ生ける伝説GRIMによる大傑作!!今年リリースの中だとMagnolia's Dreamの方がLPのカラーヴァリアント含め大規模に展開されていたと思うけど、個人的にはコチラ!!オールドスクールインダストリアルのキャッチーな部分を抽出したようなリズミックで攻撃的な楽曲のオンパレード!GRIMの作品は他のインダストリアル/ノイズではまず得られないような多幸感を伴うものが多くて、このアルバムもサウンドは過激ながらどこかファニーな感覚がある。そういったGRIMの稀有さを象徴するようなアルバム最終曲"HENRY'S SONG"は、GRIM節とも言えるメルヘンなメロディから始まり、全てのシューゲイザーを蹴散らすかのような超多幸ハーシュノイズで占める最高の曲。この曲は個人的に2022年ベストソングだった。




4. FRET / BECAUSE OF THE WEAK
genre: Industrial Techno

Napalm Death〜Scorn etc…のミック・ハリス御大によるインダストリアルテクノプロジェクト!!極太極重な強靭な金属的ビートに、超筋肉質でしなりまくる上物が過激に絡み合って、激ハードでインダストリアルなテクノミュージックを生み出している。これ以上コメントのしようがないけど、とにかくビートの重さや金属打撃音の気持ちよさにひたすら揺れまくれる極上の1枚!!超名盤!!!




3. DIR EN GREY / PHALARIS
genre: Heavy Rock

言わずと知れた、V-アヴァンギャルドヘヴィロック11thフル!!前作〜前前作の楽曲のコンパクトさは保ちつつ、非常に暗黒で鬱屈した世界観を濃厚に反映したアルバム。楽曲毎の圧倒的な個性やバラエティ、あらゆるネガティヴィティの表現を使いこなす京の声のバリエーションによって、聴けば聴くほど理解が深まる奥深いアルバムに仕上がっている。近頃の京のクリーンボイスでの表現力は他に比べられる人がいない領域に達していて、ほぼシャウトやデス声の類を使用していない9分以上に渡る長尺曲にして最終曲"カムイ"はアルバムでも出色の暗黒美を表現し切っている。数多いDIR作品でも3本の指には必ず入る大傑作!!




2. 明日の叙景 / アイランド
genre: Post Black Metal、Blackgaze

東京ポストブラックメタルバンド2nd!!コレは本当に驚愕の大名盤になった!前作までも美しいメロディをたたえた良盤をリリースし続けていたけど、今作は"本気で取りにきたな"と思わせられる内容。"眉間に皺を寄せて天を仰いでしまう"美しすぎるメロディはそのままに、極めて日本的なロック文脈から取り入れた展開/リズム/メロディを採用して圧倒的キャッチーさを獲得している。また、ボーカル布氏の文学的な歌詞もアルバム全体にインテリジェンスな(でも鼻につかない)世界観を付与する最高の仕事をしている。録音についても今までの(恐らく)意識的にくぐもっていてボーカルも引っ込み気味だったミックスから、全ての音がクリアーな完全無欠なものになり、ここからも完全に"本気で取りにきた"作品だと思わされた。ポストブラックだけでなく、凡ゆるヘヴィミュージックにおいて後世に残る大名盤!!!




1. boris / fade
genre: Drone Metal

全世界のファンがこの音を鳴らすBoris(boris)を待っていた!!!(勢い余って全世界のファンを代弁してしまった)
boris名義でのリリース。ドローンメタルの王者(と捉えた時の)Borisとしては面目躍如の大名盤!!同じくドローンメタルのパイオニアにして帝王であるSunn O)))との決定的な違いは、彼らが果てしない暗黒を描き出すドローンメタルであるのに対して、Borisはもっと宇宙的?広大な海?の様な美しいものを連想させられるところか。とにかくこの壮大で重厚な音の繰り返しからなる途方もない美しさを皆に聴いてほしい!!最高!!!


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