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ボーペンニャン・ソサエティ #未来のためにできること

「ボーペンニャン」

その魔法の言葉は、ラオスで暮らしていると一日に何度も耳にする。仕事でミスをしたとき、時間に遅れてしまったとき、物事が上手くいかなかったとき。ラオスの人たちはあたたかい笑顔でこの言葉をかけてくれる。

「ボーペンニャン」は日本語に訳すと、「大丈夫」「問題ないよ」「気にしないで」のような意味である。穏やかで争いごとを好まない国民性のラオス人を象徴するような言葉だ。ちなみに「どういたしまして」の意味もあるので、ラオスに旅行に来る際は真っ先に覚えておいて損はない。

穏やかにラオスを流れる雄大なメコン川の夕日

ラオスに初めてやってきた1年半前、慣れない仕事や時間を守らないラオスの人たちにイライラしてしまうことがあった。日本を離れた異国の地でちゃんと仕事ができるのだろうかと心配になる夜もあった。そんなときにあの魔法の言葉をかけられると、肩の荷がスッと下りていくような気がした。完璧なんて目指さなくていいんだ。できない自分だって誰にも責められることもないんだ。そんな風に考えられるようになった。

豊かな自然に囲まれるラオス

東南アジアに位置するラオスは、お隣のタイや近年成長の著しいインドネシアと比べると、経済的な成長において取り残されており、アジア最貧国の一つとされている。あの村上春樹さんも『ラオスにいったい何があるというんですか?』という本を書かれたくらい、ラオスには何もない。きっとラオス人の根底にあるボーペンニャンの精神が、競争社会を好まなかったというのも理由の一つだろう。

でも、ラオスで暮らしていると、いつも豊かな心で過ごせていると感じる自分がいる。たしかに町には何もない。首都でさえ、東京のような高層ビルはほとんどないし、この前行ったルーフトップバーの"ルーフトップ"は2階であった。物質的には満たされていないかもしれないが、ボーペンニャンという言葉を使うとき、常に心には余裕がある。

"ルーフトップバー”から眺める町並み

ラオス人のボーペンニャンの精神に触れると、大抵のことは深刻に考えすぎなくていいんだなと思わせてくれる。相手や自分のミスに必要以上にこだわりすぎず、お互いに許し合うおおらかな社会。この世界がボーペンニャンな社会になれば、未来はもっと明るくなるかもしれない。