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「カガミ」/ 詩


嵐の午后に カヴァレリア・ルスティカーナ

するりと針穴を滑る

フィラメント手縫い糸に手こずりながら

着古したシャツの 繕いをする



めくれた当て布

そのぐるりに 悪戯に針を運び

次々と風に運ばれゆく雲が

部屋の陰影も塗り替えてゆく





宵の暗がりに浮かび上がるのは

待宵草の仄明かりで

それにひとつシェードを被せ

針を運ぶ指先を照らすのだ





着古したシャツは

針を刺すたび刻々と表情を変え

繕いを超えて 生まれ変わる

古いのに新しいような顔をし

初めてなのに馴染むような感じで 

何気なく袖を通す





カガミの種子の舟に乗り

紫の空を渡りたい

その軌跡は音を放ち

銀河を周遊するだろう




水琴窟のように響く 滴る水音

星々の合間をするりと縫い

名も無き舟は

恒星に反射する


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アンソロジー詩集
「あめつち vol.1(theme/変わる)」
収録

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  ꙳★*゚.。 ☆。.:*・゜

過去作品より。

去年の晩秋に締切だった、三つの詩のうちの一つです🍂🍁

あれから約一年...

早すぎる...🤔


因みにカガミとは、ガガイモの別名です🌿