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植物とのひとこま('21.10.17)
急に秋めいて感じられる、そんな月も半ばの日曜の午後は、晴れたり雲が太陽を遮ったりと、どこか落ち着きなく表情を変えていた。
しかし、思えば後半月で霜月を迎えるわけだから、少々肌寒くとも不思議ではあるまい...と思いつつも、やはり急にくっきりと感じた季節の輪郭に驚くのだった。
こんな日は自転車を止して歩くのが良いだろう。
図書館までの道すがら、下草や辺りの木々を眺めながらのこのこと歩み、季節の足跡を数えてゆく。
住宅の間の口を開けたような空き地に、セイタカアワダチソウがこじんまりと叢を作っていた。
背後に控える蔦むす家屋、そして何らかの木の緑陰も相まり、秋風に揺らぐ姿はなかなか風情を感じさせた。
しばらく眺めていたい情景だが、傍から見ると何をしているのか定かではない不審者であろう。
なので適当に一枚撮り、先を進んだ。
自転車では横目に見流すだけの、鰻の寝床のように細長い公園内を歩む。
薄日に透けるルリマツリの青が、更に淡く感じられ、この花を集めたステンドグラス越しの光を浴びたく思う。
そして公園の中ほどでは、足元にジニアたちがさざめいていた。
花たちは掠れた色をしていたが、今年の雨だらけなおかしな夏を乗り越えてきたわけで、その薄まった色のなかにも力強さが感じられたものだ。
自由気ままに歩む。
遠回りをし、別の場所でもう少し植物観察をしようと決める。
別の公園を横切り、街を横断する川辺へと下ろう。
護岸の石の隙間からは、風で飛ばされた種が着生するのだろうか、これでなかなか多様性が感じられて楽しいのだ。
不定期に草抜きされているようで、ハズレに当たると緑の気配が感じられず残念なのだが、今日はどうだろうか。
そんな風に余り期待せず石段を下り、川辺りに立ち辺りを眺める。
瀬音に洗われながら目にしたのは、例えば花芯より紫色を生み出しているようなヤナギバルイラソウ。
そして菓子細工のようなメリケンガヤツリ。
オギと並びすらりと伸びるチカラシバ。
今日は源氏が優勢なのか、白花がちな源平小菊はエリゲロンで。
時折強めの北風が大きく揺らすのは、たっぷりとした蜂蜜のようなセイタカアワダチソウ。
そしてノジギクだろうか、しゃんとしたキク科植物が丸く愛らしいつぼみを空に披露していた。
足元には早くも色付いたサクラの葉が散り、昨夜の雨溜まりが秋空を映していた。
そんな風に川辺りを流し、地上へと戻る。
公園では、まだアメリカデイゴの鮮やかな赤が茂みをカンテラのように照らしていた。
図書館で用事を済ませ帰路に着く。
歩道の脇では、ムラサキゴテンが天鵞絨の夜のような葉の上に、愛らしい花を浮かべて。
また広場の隅では、アメジストセージたちが鮮やかに滴る色を風のなかに溶かせていた。
月も半ばの日曜日の午後、紫色に見送られながらの散策を終え、帰宅するとクリシュナトゥルシーの小さな花が少し開いていた。
紫の日曜日。
好きな色と、秋と、植物とのひとこま。