3月4日(土)『ぼくのチェックリスト』

先日ヒコロヒーさんのエッセイ『きれはし』を読了した。いつ読み切ったかは覚えてないけどずっと下書きに温めていた。

ヒコロヒーさんの頭の良さが窺えるような知的な文章。言い回しや例え、表現などに感心するばかり。初めて見るような単語も多く、自分の語彙力のなさが浮き彫りになってしまった。言葉を多く知っていると感情を細かく表現できるため、この本には多くを学ばせてもらった。

全17編の話があるわけだがどの話も面白い。話としての構成や展開などが見事で、思わず笑ってしまう話や、しんみりしてしまう話、考えさせらる話など一冊の満足感が半端じゃなかった。一つ一つの話のインパクトが強くて印象付けられる。

本書を是非手に取って読んでほしいのだが「チェックリスト」という話についての感想だけ今回は書かせていただきたい。他のも書きたかったがこの話だけは特別なので、この話を、この話だけは書かせて頂きたい。あらすじなんかは書かないが、多少のネタバレを含むかもしれない。

この話を読んで、ぼくがこれから身を投じる世界は夢はあるが残酷で、夢があるからこそ依存してしまうものだと強く感じ、少し怖気付いてしまった。特にキツかった下積み時代がリアルに書き記してある。長年苦しんだからこそ出てくる言葉や感情にぼくは胸に留めることしかできない。辞めたくても辞められないという心境にぼくはまた心が苦しくなる。芸人に下積み時代は付き物だが、金銭面の問題だけでなく、精神的な問題も大いに存在するのだと、なんならそっちの方が重要だと。

そして作成された「これができたら辞めていいリスト」。ぼくはとても悲しい気持ちになった。辞めるために目標を設けて、辞めるきっかけを自ら作る。これ以上に悲しいことはないのではないだろうか。ただ当時のヒコロヒーさんはこのリストに救われたとある。想像もできない苦しみに頭がおかしくなりそうだった。

この話を読み終えてぼくもチェックリストをつけようかなと考えた。それはヒコロヒーさんのような辞めるためのリストではない。夢を可視化するためのもの。常に目につくことでモチベーションや希望を高い状態で維持できるだろうと。賞レースで結果を残すこと、ある番組に出演すること、冠のラジオ番組をもつこと、全国ツアーで長崎に凱旋すること、憧れの芸人さんたちと飲みに行くこと、大好きな俳優女優と写真を撮ってもらうこと、などなど。数え出すとキリはないが、チェックの項目が多ければ多いほど、ぼくは頑張らざるを得なくなる。

このチェックリストの全ての項目にチェックがつく日は、いったいいつになるのか果てしないものだ。


この本の帯に誰からのコメントもなく”ヒコロヒーの本”という己の拳だけで勝負しているのがカッコ良すぎるそんなある日。

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