10月30日(月)『得意技は諸手突き』
昨日は県下剣道大会に出場してきた。
おそらく長崎県の誰しもが出ることができる大人たちの大会。
大会は34歳以下、35歳以上、55歳以上の3部門。
ぼくも34歳以下の部で東彼杵地区の副将として出場。副将というのは5人のチームで4番目のポジション。
剣道の試合となると高校3年生の時の玉龍旗以来の5年ぶり。
試合ってどんな感じだっけと思い出そうとするもなかなか思い出せない。現役の時と違って変に緊張感もないからそれも原因だったと思う。
ところが試合会場に着くともうすでにアップをしいるチームばっかりで、その会場の熱気や顔ぶれに気が引き締まる。そしてあの頃を懐かしむ。試合に帰ってきたんだなとちょっと楽しくなってきた。
アップをすませて開会式、それから34歳以下の部は55歳以上の部が終わってからということもあり、自分の試合まで時間があった。
そこで挨拶周りのためにいろんな人を探して回った。
鎬を削った同期たちや、お世話になった先輩方、さらにはいろんなとこの先生方までも知っている人がたくさん。
現役以来会ってない人がほとんどでとても懐かしく、近況報告や普段剣道してるのかなど、久しぶりに会って挨拶したり喋れたのは嬉しかった。
そして試合が近づいてくるのだが、やっぱり緊張してくる。あの頃のやらかしたら怒られるところからやってくる恐怖や心配からの緊張ではなく、”試合”という”やる”か”やられるか”の瀬戸際に立たされるところからの緊張。
しかも今回はチームの中で4番目の副将。
前3人の結果次第では勝負が決まっていたりすることもあるし、ぼくが絶対に勝たなければならないこともあるし、ぼくが引き分けでも勝てるようなこともあったりと、ぼくの勝敗次第でチームの勝敗が左右することも多々。
その時の前3人の勝敗状況によって自分がやらねばならない試合が変わってくる。いやなポジションである。
高校ではずっと先鋒や次鋒などの最初や2番目をやっていたからただ単に勝ちにこだわるだけで良かったけど、今回はそうはいかない。
そして初戦。
先日のnoteでも書いたように知り合いばっかの女子チーム。
部内戦で負け越してた高校の同期、地元の最強先輩、同期の最強チームの大将、一つ上の激強美人先輩、インターハイ優勝経験のある一回り上の先輩。
肩書きだけでも震えるほどの豪華メンバー揃い。
しかしうちも負けてはいない。
大学一年で週2くらいで剣道やってる従兄弟とその同期、地元のチームを指導している一つ上の仲のいい先輩、いつもは竹刀じゃなくて警棒を振り回している三つ上の先輩、そして自称同期の中で20本の指に入るぼく。
うーーん。見劣りする。
正味かもられるんじゃないかなとも思っていたし、周りの人も負けるんじゃねって思ってた人もいた。
ぼくも思い出作りの出場だから楽しく試合できればよかったが、あの試合会場に入ると無性に勝ちたくなる。さらには男のプライドもある。負けられない戦いが始まった。
試合が始まったら大学一年コンビがなかなかやる。
部活じゃなくてサークルでやってるって言ってたから大したことないと思っていたら、これがなかなか強い。全然いいところを打っているし、ちゃんと戦えている。
これもしかしたらあるんじゃね。
と思っていたところ、次鋒が一本勝ちしてきた。
一気に流れがこっちに寄って来た。
そして中堅も引き分けで終わり、ぼくの番がやってきた。
相手は激強美人先輩。試合前に初めて言葉を交わしたがまーじで美人だった。やばかった。個人的一番のべっぴん。喋る時にちょっと緊張してしまうくらい。高校くらいからファンだったぼくはそんな人と試合できるが内心嬉しかった。
ただこれは試合。殺し合い。情けなんてない。
今現在、チームは中堅までで一勝とリードしている。つまりぼくが勝てばチームの勝ちは確定する。もちろん試合を決めにいきたいと考えるが、ぼくが引き分けでもチームはリードのまま大将に回すことができる。チーム状況をみるに無理にいかなくてもいい。
しかし相手チームからすると、ここで絶対に勝っておかなければならない。
ここで引き目な試合をしているとその勢いにやられてしまう。状況によって立ち回りを変えるなんて器用なことはできないからいつも通りやることに。
試合が始まっていつものように攻め始めるが、相手の攻めがえぐい。めちゃくちゃ攻められる。自分のペースでやろうとしても攻めが強すぎるから中々ペースを握れない。相手の戦場になってしまう。
時間が経つとぼくも慣れてきていい攻防ができてくるのだが、隙をみて引き面をボコる。
ちょっと審判が甘めに感じたが、それでも一本を先取することができた。このまま終わればぼくのチームは勝ちが確定する。
でも気は抜けない。相手は取り返しにくる。
それから更に攻めが強くなる。そして体力も尽きない。ぼくなんて開始1分半くらいで動きが明らかに鈍くなっているのに、全然変わらない。それでちゃんといいところを打ってくる。気を抜いたらやられるそんな太刀筋。まじ強い。しんどい。勘弁してくれ。と。
そしてぼくも反撃を始めた時に、またあの声が聞こえた。
え、あれいけるくね?
いやいや待て待てこれは試合だぞ?
でも見えるしいけるだろ。
こないだのやつで味を占めるなよ。やめとけ。
でもさぁ、ここで決めたらカッコ良くね。
まぁそうやけど。
いいさそういう試合なんだから。
んー、わかった!いけ!
突きーーっ!!!
ズドンっ!!!
バサっ!!!
旗3本。一本。決めた。
前回の稽古会で味を占めていた突きが綺麗に決まった。完璧すぎる突きにぼくは残心しつつカッコつけていた。やっぱり突きで決めるのは最高なものだ。
公式戦で初めて繰り出し、一本に。
これほどとないくらいできてしまってた。
その突きのおかげで2本勝ちしチームの勝利が決まった。
大将も2本勝ちしてチームとしては最高の初戦だった。
完璧な諸手突きを決めたのもあるが久々の試合でまじ楽しすぎる試合だった。
先輩読んでますか。読んでたらまたやりましょう。また突きます。なんなら突きしか打ちません。またやりましょう。あとよかったら一緒に写真撮ってください。
そしてぼくたちは2回戦に進んだのだが、相手は五島のチーム。申し訳ないが正味だれも知らない人だった。
この試合もぼくまでに2勝1敗で回ってきて、ぼくが勝てばチームの勝ちが決まるという展開。もちろん決めにいくつもり。
開始早々、やりにくい相手だと悟った。剣道は相性がモロに出るものと思っているし、ぼくの苦手なタイプ。
でも勝てる自信はあった。
相手が面返し胴を狙っているのが見え見えだったから、タイミングをずらして爆面をかました。
でも審判は揃いも揃って胴のほうに旗をあげた。
まつうらは怒り狂った。
んなわけねぇだろ!どこに目がついてんだ!どうみても俺の面だろ!
と思うだけ。態度には出さない。
これが剣道というもの。
審判をしているのもAIではなく人間。そりゃ見間違えることもある。ぼくも散々やってきた。でも結果は覆らない。審判がこうと言えばこうなってしまう。チャレンジなんかはないし、もし導入するような声があれば猛反対する。
それでぼくは一本を取られてしまったのだが焦らない。試合が再開する。
ぼくは怒っている。やることはもう一択しかなかった。
突きーーーーーっ!!!
怒り狂った剣先は相手の肩を突き刺した。
バサっ!
旗3本!!!
一本!よっしゃ!!
全然はずれていたのに一本になった。突いたときに相手が崩れたのと、ぼくがドヤって一本ですよ?みたいな雰囲気を出していたからだろう。まぁさっき取られたのも誤審だったからこれでいい分だな。
まさかの2試合で突きを2本。もう得意技のレベル。伝家の宝刀。ノリに乗っている。会場は軽く沸いた。
取り返したのだが、それからもすぐ一本とってまた勝ち。チームも勝利し準決勝へ進出した。
まさかのベスト4。3位入賞で嬉しかった。どんな大会でも表彰台とは嬉しいものだ。
その準決勝の相手は警察の機動隊。仕事で剣道やってる人たち。所謂ガチ勢。
案の定。ボコボコ。かもられた。
内容なんも書くことないくらいボコボコ。
それでも3位。トーナメントの運が良かったのもあるけど3位。
違うトーナメントの準決勝も代表戦になって白熱したりと、決勝も決勝らしい激アツの試合で見てて楽しかった。
さすがに長すぎるのでこれ以上は書かないけど、久しぶりの試合は楽しかったし、剣道はやっぱりいいなと思えるような1日だった。またみんなと剣道したいものだ。
ただ試合終わって、応援に来てた地元の同期からの一言目が「お前どうした?」だったのだけは許せん。
褒めろバカ。
突きを決める動画をずっと見返しているそんなある日。
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