観光学的視点を交えたインド旅 その1
7月中旬、ふとJALのマイレージを見ると、20万マイルを超えていた。ここ数年、プライベートな理由でビジネスクラスを使って欧州に行くことが多かったからであろう(出張では飛行機にほとんど乗らない)。そして手帳とにらめっこ。8月のお盆の時期は1週間時間が取れるかもしれない。どうせお盆の時期はヒアリングなどの研究出張も難しいだろう。
JALのマイレージバンクから特典旅行の行き先検索を始めてみた。
しかし、どこも空いていない。すっかりビジネスクラスの楽なことに慣れてしまったので、エコノミークラスでの航空券検索はしない。ビジネスクラスでなるべく遠方に行ける場所を探そう、という、スケジュールと座席クラスのみが変数で行き先を決めることに。観光学の研究者としてはあまり宜しくはない。8月下旬からヨーロッパに家族に会いに行くことは決まっていたので、ヨーロッパ以外の世界が選択肢に。試しに調べたボストンは36万マイル。夏の超ピーク時の旅行で、しかもコロナ後の旅行需要が高まる中、1ヶ月後の旅行をマイルで行こうとすること自体、そもそも無理な話だ。JALの特典旅行では、20万マイルでも足りないか、座席自体が空いていなかった。諦めるか。
JALのページを見ると、「ワンワールド特典旅行」の検索ページがあった。JALに拘る理由はないので、調べてみたところ、もう少し選択肢が広がった。1週間弱なので、まだ行ったことのないアジアの国がちょうど良いだろう。ただ、大抵の国には行っていて、残りの未訪問地はフィリピンくらい。フィリピン。近すぎる。もう少し遠くに行ってみたかった。ビジネスクラスで検索しているので、10時間くらいは乗ってゆっくりと移動を楽しみたいのだ。
そして検索ページに出てきたのが、インド。おぉインド。あのインド。試しに恐る恐る調べてみると、なんと10万マイル+税10万円でインドに行けることが分かる。
一旦冷静になろう。一旦寝ることにした。
翌日、もう一度調べてみる。まだインド行きの特典旅行が予約できた。これはもう行くしかない。ただ、残念ながら行きはプレミアムエコノミーしか空いていなかった。それでもあのインドに行きたくなっていた自分は、ビジネスクラスで10時間くらいゆっくりとしたい、ということはすっかりどうでも良くなり、インド行きを決定した。ちなみにだが、帰りはヘルシンキ経由日本着という、どう見てもおかしな行程だったが、ビジネスクラスなら身体の疲れもあまりないだろう。
こんなことで決まったインドへの旅。
考えてみると、インドという旅行先は、草々選びにくい。だからこそ1ヶ月前の予約でも特典航空券が取れたのかもしれない。1ヶ月前でも特典旅行が予約できる行き先、インド。
精神的ハードルも高く、興味はあったが自分は避けておこうと思っていたインド旅がこうして眼の前に。なかでも行きたかったのはバラナシだった。
さて、普段は旅行先についてあまり事前に調べずに訪問することが多いのだが、今回はインドである。少し調べてくるとたくさん出てくる、怖い情報。ざっと振り返ると、必ずお腹を壊す。騙されて数万円盗られる。タクシーで変な旅行会社に強制連行させられる。電車は数時間の遅延が当たり前。デング熱に感染する。カレーには黒い油が浮いていてそれを飲むと体調を崩す。肝炎で入院。予防接種必須。夏は雨季で観光に不向き。伝染病も蔓延しやすい。人間不信になる。インドは甘く見ないほうがいい。等々。
なかなかの経験が旅行記には並んでいる。さて、行くことは決めたが果たして大丈夫か。やや怖気づいたのもまた事実。
事前に下調べ等をしっかりしておく必要があるらしい。そして、旅行1ヶ月前に「じゃあインド行こう」と言って決めるような行き先ではなかったらしい。しかも夏に。
でも行くしかない。行こう。
ホテル、デリーとバラナシの間の航空券、空港―ホテル間の交通手配。自分でも驚くほどの事前準備ぶりである。旅の行き先はその人の旅の習慣を変えてしまうらしい。それほどの国、インドとは一体。
ビザの取得が必要なことには直前に知った。アライバルビザでもいいが、事前にe-visaを申請しておいたほうが入国が楽だという。条件は、出発4日前までに申し込むこと。ただし、直前に申請すると承認の連絡が来ない可能性もあるので1ヶ月前には申し込みましょう、とウェブには記載があった。自分が気づいたのは出発1週間前。慌てて申請したが、ちゃんと出発前には連絡が来た。そんなにいい加減な国ではないのでは。
インドに行くというと、学生からも「大丈夫ですか」とか「予防接種しましたか?」とか聞かれ、していないと言うと「うぁ」と反応される。親からも過剰なほどの心配をされた。どうやら旅行観光という余暇は、周囲の反応に影響されて楽しさが半減してしまうもののようだ。旅は楽しいはずなのに。観光学的に興味深い。
でも中にはインドの訪問経験者もいてそういう人は大抵「良いですね」と言う。インドという国のイメージは、未訪問者と訪問者とで異なるらしい。都市のイメージ、観光地のイメージ研究的にも興味深い。どちらを信じるべきか。それは論理的にも明らかに後者であるべきなのに、前者に影響される。
余談だが、朝ドラ「らんまん」でこんなセリフがあった。
「ロシアにも子供がいる。ここと同じように当たり前に人が暮らしている」
そう、インドにも人は住んでいる。人が住める場所なのだ。
さて出発。色々な旅行トラブルを見すぎていたからか、相当慎重になっていたが、これは夏のバカンスの過ごし方である。楽しむ気持ちを持たないと。
前段が長すぎた。実際の旅の様子を、観光学的視点も交えながら振り返っておきたい。これはこれからインドに行く人に役に立てば嬉しいけれど、それ以上に自分にとってのメモ書きとしての要素が強い。
さて、筆者の趣味は写真である。その都市の文化風習だったり生活、街の写真をよく撮る。小型軽量で自然体で撮れるということもあって、10年以上Leicaのカメラを使っている。今回の旅には、M11、M10-Dの2台とレンズはvoigtlander 15mmとelmarit 28mm、summiluxの50mmと75mmの4本を持っていった。
ただ、結局良く使ったのは、M11+summilux 50mmだった。9割以上はこのセットで撮っている。M10-Dはそろそろ売却してもいいかもしれないとも思った。
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