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「なぜ?」「どうして?」を表現する

 高校3年生の夏はとにかくこのテーマで葛藤し、悩み、苦しんでいました。部活で気分転換をしても、すぐに現実に引き戻される様は、おそらく(身体的な)不自由のない高校生と比べても遜色はなかったと思います。
 そう、書籍の中でも繰り返し述べていますが、ここから先は障害のない人たちとどう向き合っていくか、すなわち日本全国の高校生がライバルということになります。
 私がこんなにも自分探しに悪戦苦闘していた理由は、何を隠そう私の受験が推薦入試、しかも学校を代表しての「指定校推薦入試」だったからです。内容は志望理由書と面接のみですが、何よりだからこそ「人間性」(中身)が重視されるのです。

 母校である『筑波大学附属桐が丘養護学校』(現:特別支援学校)は、国立で唯一の肢体不自由者に特化した普通科の学校です。今でもつくづく、「(そんな学校に入れた)自分は幸運だったな」と思います。
 だからこそ研究校として、将来教員を目指す【教育実習生】や【介護等体験生】を常時受け入れていることも特色の1つです。そうした背景もあり、私も在籍中は学生の皆さんに大変お世話になりました(この時はまだ、後に教育実習生として凱旋することになるとは夢にも思いませんでした)。
 その当時、私には「将来は子どもと関わる仕事がしたい」との強い思いがありました。そのため、福祉系の学科に進むべきか教育系の学科に進むべきかで、心底迷っていたのです。しかし一方で、自身の身辺自立(1人ではトイレに行くことが難しい)という問題を抱えており、オープンキャンパスとなると設備が整っていそうな福祉系の大学ばかり行っていました。

(大東文化大学から桐が丘への)指定校推薦の募集がある(※当時)と知ったのは、すでに某福祉系大学との事前面接(・・・身体に障害があるけれども、合格した暁には入学させてほしい旨を伝え、入学後の対応に関する事項を協議する場)に出向いた後でした。大学関係者8人に対し、私と担任が取り囲まれるという過酷で希有な状況を乗り越えて、やっとの思いで先方から受験の了承を得たタイミングだったのです。
 もちろん、もし指定校推薦の対象となれば必然的に他大学への出願はできなくなります。また、専攻分野もその時点で「教育」ということになります。すなわち、これまでの(オープンキャンパスも含めた)方向性とは一線を画すことなるため、私は(そもそも指定校推薦に出願するかどうかで)相当悩みました。
 同時にそれは、12年もの間、「学校の先生」という存在をより身近な環境で見てきたからこそ悩みでもありました。「(授業や会議、教材研究や通知表の作成に至るまで)教師の仕事はとにかく大変」だと思っていましたから、「これまで自分が先生方にしていただいたことを、はたして子どもたちにしてあげることができるのか」ということだけが、とにかく不安でした。故に自分が教師になるイメージを描くことが全くできなかったのです。
 それでも、最終的に出願を決意したのは、進路相談の時に言われた担任からの言葉が私の背中を押してくれたからです。

「教育学科は直接的に子どもと関わることができると思うし、様々な分野を広く浅く学ぶことができるよ。大学生の段階で自分の可能性をそこまで狭めなくても良いんじゃないかな」 

という経験者からの言葉は、迷い続ける私にとって大きな後押しとなりました。

 もともと(大学卒業後まで視野に入れて考えた時)、自分の就職活動は一筋縄ではいかないことは想定していたため、「大学で学ぶのは就職に直結することがいい」という想いを持っていました。しかし最後は、「まずは大学に行かなければ意味がない」との結論に達し、大東文化大学を受験することを決めました。
 しかし、「(他大学ではなく)なぜこの大学(学科)でなければならないのか」「この大学(学科)で何を学び、どうなりたいのか」を言葉にしていく作業は想像以上に困難を極めました。[子どもと関わる仕事]は世の中にたくさんありますが、高校生が想像できる範囲などたかがしれています。大学側が知りたいのはそうした漠然とした目標ではなく、目標にたどり着くための私のビジョンや計画性だったのだと、大学受験を通して学びました。

「なぜ?」「どうして?」という、選択の裏側にある根拠を表現することに苦心したものの、紆余曲折の末に2006年12月、紆余曲折の末に『大東文化大学文学部教育学科』への入学を勝ち取りました。

 そして、この日々を通して実感することができた「これまでの経験はすべて無駄ではないんだ」という自信が、未来の私を新境地へと運んでくれることになるのです。

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