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1つになる経験

 中学時代は、多くの初体験を通して集団生活の楽しさを実感することができました。それは同時に、仲間とともに自分の可能性を模索し続けた3年間でもありました。
 自分は果たして「皆についていけるのか」という意識は、「皆の役に立ちたい」という思いに変わり、頼られることで得た喜びは、やがて「特別な存在になりたい」という強烈な自我の芽生えにつながりました。自分が皆のお手本になるんだという思いがあったからこそ、目立つことに消極的だった過去から卒業することができたのだと思います。こうした自信を抱かせてくれた友達や先生方には心から感謝しています。

 何より私を変えたのは、「1つになる経験」です。先に述べたチームスポーツで一丸となって勝利を目指すことはもちろん、自分の提案に皆が賛同し、団結して1つの目標達成に向かって努力するとという経験は、今でもかけがえのないものになっています。
 特に自身が学級委員長を務めた中学3年の文化祭、「中参横町」は忘れられない思い出です。川越の菓子屋横町をモチーフに、13人のメンバーがチームを組んで出店し、「それぞれが自分の得意分野を活かして勝負する」をスローガンに5~6個のブースを出店しました。昔から文章を書くことが好きだった私は、ペアで詩集を作成し、販売することになりました。各自が多様な障害特性を抱える中で、相方が手書きした詩も私がすべてパソコンで校正するのは大変でしたが、そうした経験を通して「お互いを補い合う大切さ」を学びました。
 また、学級委員長としてこうした自主性に溢れた企画を統率することにも苦心しました。チームで主体的に出店するとはいえ、横町としての統一感を出すため全員で決めなければならないことも多くありました。同級生とはいえ、理解力もそのスピードも異なるメンバーをまとめ、進行していくことは至難の業でした。

 うまくいかず、話し合いの度に思い悩む中で嬉しい出来事もありました。それは、恩師が「長野くんは悪くない。あなたは今のままで大丈夫だから」という言葉をかけてくれたことです。その数日後、先生はさらに紛糾する話し合いの途中、「もっと長野くんの話を聞こうよ!(長野くんは)皆のためにやってくれているんだよ」と呼びかけて下さったのです。
 その日も話し合いをうまく進行させることができず1人で落ち込み、精神的にも日に日に追い込まれていく中でかけてくれたその言葉に、本当にどれだけ救われたか知りません。そうした紆余曲折を経て、迎えた文化祭本番は大成功。私たちの詩集は完売し、漫談やネールアートといった他のブースも大盛況のうちに幕を閉じました。並行して実施した学年全員でのバンド演奏も無事終え、中学部の放送委員長として文化祭の終了を自らの言葉で告げた瞬間、安堵感とともになんとも言えない脱力感を覚えました。

 本当に大きな達成感でした。

 恩師の後押しと友人たちとの切磋琢磨によって走り抜けた3年間は、集団の中で役割を果たす難しさと楽しさ、同時に「苦しくても見てくれている人はいる」ということを私に教えてくれた日々でした。こうした人に対する絶対的な信頼感はその後も私の支えとなっていくのです。

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*ヘッダーの写真で着用している法被は、確か先生方がどこかから借りて用意して下さったのだと思います。

*中学校時代のエピソード編は、これにて完結です。


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