日記・YOASOBI『ラブレター』の意味

 「なにか」に救われた経験がある人には、YOASOBIの『ラブレター』を聴いてほしいと思う。


 昨年12月の武道館でのライブでもセットリストの最後に歌われた大切な一曲だ。

 『ラブレター』というタイトルから「恋愛の歌?」と思っている人も多いと思う。僕も最初はそう思っていた。けれどそうじゃないんだ。

 YOASOBIの『ラブレター』は「音楽への感謝」を歌った歌だ。

 YOASOBIの曲にはすべて「原作」となる文章がある。『ラブレター』はひとりの女の子の手紙が原作になっている。手紙に興味がある人は下のリンクから読める。

リンク:はつねさんからの手紙

 「音楽さんへ」。そんな書き出しで始まる手紙は「もしも音楽に言葉で感謝を伝えられたのなら」という想いに溢れている。

 『ラブレター』が発表されたのは、コロナ禍であらゆる音楽活動が思うように叶わない時期だった。それは音楽ライブだってそうだし、学生の部活動だってそうだ。だからこそ「音楽さんへ」という手紙とそれを原作に作られた『ラブレター』は、いままでどんなに音楽に救われていたかを如実に示していた。

 『ラブレター』は最後、こんな歌詞で終わる。

どうか1000年先も
どうか鳴り止まないで
いつも本当にありがとう

YOASOBI『ラブレター』より

 音楽に無くなってほしくない。人間が存在し続ける限り音楽も存在していてほしい。そんな手紙の意味を汲み取った歌詞だ。

 これは主語が音楽だけれど、この主語を別のものにも置き換えられるなぁと僕は今日、思ったのだ。

 僕は本が好きだ。紙の本。厚い本も薄い本も、飾り気のない本も豪華な装丁の本も大好きだ。でももしかしたらこの先、本は気軽に手に取れるものではなくなってしまうかも知れない。

 そんなふうに思った時にYOASOBIの『ラブレター』を聴いた。僕は音楽にも救われてきたけれど、同じかそれ以上に本に救われてきたことを思い出した。

 僕は「本へ」という手紙を書きたいと思った。ひとりの女の子が音楽に「どうか生き残ってほしい」と願いを込めて書いたように、僕も本に生き残ってほしい、人間が存在する限り本も存在し続けてほしいと思った。

 歌詞の主語を「音楽」から「本」へと読み替えてみると不思議としっくりとハマって、僕はただだた本に生きていてほしいのだと思った。本と共に生きていたいのだと思った。

 そんなふうに、あなたをいままで救ってきた「なにか」に感謝の手紙を書いてみたらきっとなにかに気づけるんじゃないかと僕は思う。

 日常が元に戻りつつある世界で、なんとなく元に戻りつつある世界で、この2年間で失われてしまいそうになりながらいまも残り続けているものは決して偶然生き残っているものではないのだと噛み締めなくてはいけないと僕は思った。

 音楽や本に「ありがとう」と思う。それは音楽も本も僕たちと一緒に今日まで生き残ってくれていたからだ。そしてこれからは本や音楽、そしてあなたが大切にしたい「なにか」に感謝して応援するところにいま来ているのではないかと、僕は思うのだ。








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