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2022年1月の記事一覧

掌篇小説 人魚の鱗

 少年は人魚から鱗を貰いました。人魚の鱗です。それは太陽に透かすと七色に輝きました。
 少年はそれを街の知り合いたちに見せて回りましたが、ひとりとしてそれを人魚の鱗だとは信じませんでした。誰も人魚の鱗を見たことがなかったからです。少年はその鱗が人魚のものであると証明する手立てを持っていませんでした。
 その夜、少年は間違いなく人魚から鱗を貰ったのだと頑なに信じて眠りましたが、翌朝目が覚めるとそれは

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