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"経営者の敗北”との向き合い方

先日、尊敬する起業家のひとり、家入さんのnoteを読んで、めちゃくちゃ共感した。

僕自身”社員が辞める=経営者の敗北”だと思って経営してきたところがあって、まさに”敗北”という言葉を使っていたし、社員が辞めるたびに「この会社に居続けたい理由を創れなかった」「会社の魅力が足りなかった」と、自身の経営力不足を突きつけられる感覚で、落ち込んで打ちのめされてた。

でも、最近ちょっと、その考え方が変わったんだ。
シンプルに言うと社員が辞めることを”敗北”と捉えないようになった。

今日はそのきっかけや、それにまつわる出来事を紹介しつつ、僕たちが"会社の仲間"についてどのように考えているかをお伝えしたい。

潰れかけた経験と恐怖心

ちなみに僕は結構な寂しがり屋だし、メンタルも強くないと思う。
社員がひとり辞めるたびに"敗北"だと捉えて打ちのめされて、去っていく社員への申し訳無さと罪悪感が湧いてきて、数年前の経験、会社が潰れかけていろんな人が去っていたときのことがフラッシュバックするようになっていた。

「また、ひとりになるんじゃないか」という恐怖心。

だからこそ「誰もが社員で居続けたいと思える会社を創りたい」と、それを目標に経営してきたところもある。でも、そんな僕の恐怖心を拭い去り「社員でいることだけが、会社との関わり方じゃないんだよ」って教えてくれた人達がいる。

リーボの元社員たちだ。

元社員とのコラボレーション

先日、リーボの東京進出についてリリースした。提携先の株式会社Familectは、元社員の園田が東京で設立したクリエイティブ企業。

園田はうちを辞めて2年経つけど、東京にいって独立したあともずっとコミュニケーションとってて、たびたび業務委託でお仕事もお願いしてて、なんなら数ヶ月に一度福岡に戻ってくるから、そのたびに集まってみんなで飲んでる。飲むたび「数年経ったら戻ってきます!!」と未だに言ってくれる。

実は会社を離れた元社員とまた一緒に仕事をしたり、コラボレーションしたりすることはこれまでもあった。

元取締役 深井龍之介がリーボ顧問として参画(17年7月〜21年9月)

龍之介、リーボ顧問時の紹介ページ

・元社員 "あああつし"とコラボレーションし自治体PR動画制作(23年1月)

園田も、龍之介も、あつしも、リーボを辞めたあと、それぞれのフィールドでめちゃくちゃ活躍している。

そんな彼らが、会社を辞めるとき一様に「今後もリーボと関わっていたい」と言ってくれた。そして、退社後のそれぞれの環境に身を置きながら、実際に仕事の上でもプライベートでも関わり続けている。

僕たちにとっての"会社の仲間"とは

先日のFamilectとの提携を知った友人が、こんな言葉をかけてくれた。
「このリリースだけでリーボの社風が伝わりますね。辞めた社員がリーボを好きなことがわかるし、リーボの”仲間”の捉え方が広いこともわかる」と。

以下は、僕たちのWEBサイトのMEMBERページに記している言葉だ。

一緒に作品を創っていく仲間を、リーボでは「CREW(クルー)」と表現しています。これまでの会社組織の既成概念に囚われず、社内外といった垣根もない、オープンなチームでありたい。
そのため、CREW(クルー)に応じて、リーボとの関わり方や、働き方は多種多様。みんなそれぞれが自己を解放し良いクリエイティブを共に創りあげる、大切な仲間です。

リーボMEMBERページより

上記で、もうほとんど説明してしまっているけれど、要はどんな関わり方であっても同じ方向を向いてくれているなら、僕たちはCREWであり"仲間"だと考えている。

社員じゃなくても、リーボのことが好きでいてくれて何かしらで関わってくれるなら、皆等しく仲間。業務委託のパートナーさんたちも仲間。アルバイトも仲間。辞めた社員も仲間。

社員とそれ以外の人たちの間に線があるとするなら、それは単なる雇用契約関係の有り無しだけであって、"仲間"と"仲間以外"の線ではない。

元社員との関わりが続いていく、今のこの会社を見ていてそう思うようになった。

"仲間"の概念を象徴するOPEN DAY

僕たちは毎月第一金曜の夜、OPEN DAYと称してフリーフード・フリードリンクのパーティをオフィスで行っている。業務委託のクリエイターさんや、弊社に興味もってくれている学生だったり、近所のクリエイティブ企業だったり、それこそ元社員が来てくれたりと、毎回賑わっている。

先日2月3日(金)に行われたOPEN DAYの様子

このOPEN DAYは、リーボの"仲間"という概念を象徴しているようなパーティだと思ってる。

元々このOPEN DAYは、僕たちがお仕事をお願いしている、業務委託のクリエイターさんたちとのコミュニケーションが目的だった。仕事の受発注のみのやり取りだけでなく「人と人として関わりたい」「普通に気楽に飲んでお話したい」と思って設計した。

「毎月定例」と「フリーフード・フリードリンク」にした理由は、そうしたクリエイターさんが来やすいし、断りやすいから。発注側の僕らから「○月○日にこういう飲み会をやるのでやりましょうよ」と呼びかけてしまうと、どうしても無理して参加するようなことが起きそうだし、「気楽な会」になりにくい。

そうして始まったOPEN DAYだったけど、思いがけずいろんな効果を発揮してくれている。業務委託のクリエイターさんが新しいクリエイターさんを連れてきてくれて新たなパートナーになる。映像作家を志す学生が遊びにきて、これがきっかけで入社する、アルバイトになる。

つまり、このOPEN DAYに集まってくれている人たちは、"リーボに関わりたい"と思ってくれる人たちの集まりなんだ。

"社員が辞めること"は"敗北"か

会社は、人と人の繋がりだ。会社の理念やサービスに共感した人が集まり、集団を形成し、チームとして動いていく。

でも、そのチームを織りなす個々人には、それぞれの人生がある。

彼らは、年齢、結婚、出産、新たに生まれた夢、人生を変えるような作品や人との出会い、親しい人からが放たれた言葉、仕事を通して得た経験….
それぞれたくさんの影響を受け、変化し成長しながら生きている。

変化することは人間として至極自然なことだ。

社員が、自分の人生について考えが変化し「こういう風に生きていきたい」と思うとき、それが"リーボの社員"では成し得ないこともあると思う。

そうなると、僕が目指していた「誰もが社員で居続けたい」という経営は、人間の性質を無視した不自然な経営だったかもしれない。目指すべきは「社員が辞めない会社」ではなくて「共感してくれるひとが関わり続けたいと思える会社」なんじゃないかな、と。つまり僕にとっての"敗北"は、関わってくれた人に「二度と関わりたくない」と思わせてしまうことであって、社員が辞めること自体は"敗北"と捉えなくていいんじゃないかと思えるようになった。

無論、社員が辞めることに対して無頓着になるって話ではなくて、一緒にやってきた社員に"辞めたい"と思わせてしまうってことは、会社を経営している僕や、会社そのものに必ず何かしらの課題があるわけで、それに対しては真摯に向き合って改善しないといけないと思っている。

最後に

僕たちは Keep on Rollin'-革命と進化を繰り返し前進し続ける- をVISIONとしている。これからも新しい人が入ってきたり、社員でなくなったりするメンバーもいるだろうけど、変化を恐れず、常にクリエイティブしつづけ、関わり合ってくれる仲間たちと前進し、成長し続けていきたいと思う。

諸行は無常。それを受け入れながら、僕たちは理想に向かって走り続ける。


補足

断っておくと、僕たちはいわゆるスタートアップではないし、社員数が20人に満たない小さな会社だ。だからこういう風に考えることができるってところもあると思う。
自社のサービスを創り圧倒的スピードで急成長を目指すスタートアップと、クライアントワークのクリエイティブ事業を柱としている僕たちとでは、性質が全く異なる企業体だし、そもそも経営者によって考え方は様々なので、どう考えるのが正解かを議論したいわけではない。まして家入さんの考え方を否定しているわけでももちろんない。

余談

余談だけど、先述の会社が潰れかける前夜、どんどん社員が辞めていってるまさにそのとき、イベントで知り合った、当時まだ代表をされていたアカツキの塩田さんにお会いし、会社の状況を相談したことがある。そのときに塩田さんに「辞めた社員のことも愛していますか?」と問われた。「辞めた社員も、気づきを与えてくれる愛すべき仲間のはずですよ」って。

当時の僕は、辞めていく社員のことを考える余裕などなく、まして愛しているかなんて考えたこともなかったから、ピンと来なかった。

でも、今になってわかる。

げんちゃん、大切なことを教えてくれてありがとう。
今なら、辞めた社員もみんな愛してると心から言えるよ。