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副業で起業した会社を4桁万円で売却しました

タイトル通り、副業で起業した会社を売却しました。
私は現在24歳で、社会人2年目になります。
新卒入社時のnoteで書かせていただいた通り、引き継ぎ会社員としてByteDanceで働いています。

これまでSNSでは公にしていませんでしたが、昨年の夏に副業で起業していました。そして、今年10月、その会社を売却いたしました。
約1年間経営していたことになります。

何をやっていてなぜ売却に至ったのか、これまでの軌跡と今後の思いをまとめてみたいと思います。
(※4800字あります)

相棒との出会い

2019年の夏、とあるサマーインターンで上田という男と出会いました。
無愛想で髪ボサボサ、さらには遅刻してくるという、第一印象は最悪な男でしたが、2人とも左脳型で開発バックグラウンドがありPdMを目指しているという志向性が似ており、すぐに意気投合しました。
上田はその後サイバーエージェントのDRAFT(サマーインターン)で優勝し、DeNAのサマーインターンでも優勝したことからも分かるように同世代の中でも非常に優秀でした。

当時の上田の記事:2019年開催 選抜型インターンシップ「DRAFT」優勝インタビュー

大阪に住んでいた上田は東京に来るたびに私の家に泊まり、夜通しサービス案の議論をしていました。
「一緒に事業を立ち上げよう」
そう言って新規事業案を考え、一緒に教育系のサービスを立ち上げましたが、お互いその領域への思い入れが薄く、長くは続きませんでした。

その後も東京に来れば一緒に飲みに行くという関係が続いていました。

行きつけの中目黒のカフェ

学生時代から中目黒に住んでいた私は、週2〜3回通う行きつけの近所のカフェがありました。
2020年の夏、いつものようにカフェへ行ったところ、店長さんがボヤッと「コロナ禍で飲食は厳しい、なんとかできないか」と呟きました。
土日はほぼ満席の人気店でしたが、コロナ禍の影響もあり厳しい経営状態が続いているようでした。

"ITの力でなんとかできないか"
"大好きなカフェを少しでも助けられないか"

そんな想いで飲食DX領域でのサービスを考えました。
事業的にもイケると考えた私はすぐに上田に連絡しました。当初は、難色を示した上田でしたが数ヶ月後電話がかかってきて、やろうとなりました。

飲食DX

私たちが提供していたサービスは飲食店向けのSaaSです。
レガシー業界の1つである飲食はまだまだDXが進んでおらず、データ活用もままなりません。

IT業界では、顧客データを取得しアプローチをしたり(アプリであれば通知を送ったり)、リテンションを高める施策を行うことが当たり前のように思われていますが、飲食店はそうではありません。

そもそも飲食店はその日に何人のお客さんが来るか想定できません。一度来店されたお客さんとのデジタル上の接点もありませんし、再度来店してもらうアプローチもできません。
何%がリピーターなのか、新規顧客なのかも分かりません。データの活用が非常に難しい業界なのです。

"これらのデータ活用ができれば飲食店の経営が少しは楽になるのでは"
"DXの波が飲食業界にもこれからやってくるのでは" 
そう考えサービスを立ち上げました。

打算的な勝算

きっかけは身近な人(カフェの店長さん)の力になりたいという右脳的な想いですが、ビジネス的理由(左脳的理由)はいくつかあります。

  • ネットワーク効果がないためWinner takes all の市場ではないこと(大手が参入してきても生き残られる)

  • 初期コストがかからないこと(自分達の開発時間とサーバー費のみ)

  • 就職後も負担少なく運営可能なこと

  • SaaSとしてM&AのEXITに向いてること

  • 飲食DXの波が来る初期のタイミングだと見ていたこと

上記の理由から、勝算があると踏んでいました。目標は副業のまま3年以内に1億円でEXITでした。
実際に市場の見立てとタイミングはおおよそ正しく、その後飲食DXの市場は大きくなってきたと思います。

初期の検証と手応え

2020年の冬頃から開発を始め、2021年の3月にその中目黒のカフェで検証を開始しました。
当時からお互いに長期インターンをしていたため、仕事後の平日の夜と土日で開発する毎日でした。
MVPで最低限の機能で運用を開始し、至らない点も多くありましたが実際にお店のバイトの方やお客様からも多くのフィードバックをいただき改善をスムーズに回すことができました。

お互いに新卒入社それぞれの道へ

2021年4月、私はByteDanceに、上田はDeNAにインターンからそのまま新卒就職しました。
お互いに就職してやりたいことも多くあり、この事業を本業とするのではなく、就職の道を選びました。

実は本業ではお互いエンジニアではなく、私はPMM(プロダクトマーケティングマネージャー)、上田は企画職でした。
ただお互い開発バックグラウンドがありPdM的思考も強いため、機能要件を決め自分たちで開発するという超アジャイル開発で、デザインとフロントエンドを僕、サーバーサイドと全体の開発を上田、PdM的な機能開発の優先度決めや機能企画は2人でと良いコンビだったと思います。

会社員としての本業もお互い忙しい日々でしたが、毎週木曜22:00-24:00が私たちの会議時間でした。Zoomを繋げながら黙々と午前3時頃までコードを書いていた時もありました。
本業に支障が出ないよう、デプロイは金曜の夜中に行うのが私たちのルールでした。(なにかあっても土日に対応できるように)

会社設立

検証で手応えを感じ、さらに導入店舗を増やそうということになり、2021年の8月、法人登記しました。

株式に関しては、私が株式100%で資本金や設立費用も全て私が出しました。
2人で株を持つという選択肢もありましたが、どんな出口になっても対応できるようどちらかが100%持つという責任範囲を明確にする座組みにしました。
お互いの信頼関係があったからこそできたと思いますし、結果的によかったと思います。

外部からの資金調達はせず(借入もせず)、全て自己資金で行っていました。

チームとしての開発と事業成長

さらにスケールさせるために開発と営業人材となる学生インターンを仲間に入れました。
それでも、学生インターン(業務委託)を含めても5人以下、フルコミットは0名と小さなチームでした。

週末に開発合宿をし、夜通し開発してた日々はスタートアップらしさがあったなと思います。

「キタ!これは非連続な成長や!」
と思う瞬間と、
「ヤバい、うまくいかないかも」
と思うスタートアップらしい波がひたすら続いていたと思います。

大企業との事業連携をしたり機能開発を増やしたり営業活動を行なったりと紆余曲折ありつつも導入店舗数も増え、前に進んでいました。

カフェの閉店、M&Aへ

2022年4月、大好きだった中目黒のカフェが閉店してしまいました。
元々この会社を作った最初のきっかけでもあったお店が閉店し、飲食は難しいと改めて感じました。

結果的に店長さんの力になりきれなかった無力感をひしひしと感じました。
時を同じくして、相棒の上田も新しいチャレンジをしたいということになり、M&AでのEXITを検討し始めました。

4桁万円でのM&A EXIT

M&Aマッチングプラットフォームを通してやり取りさせていただき、初回コンタクトから3ヶ月ほどで契約合意まで至りました。
サービスも継続していただきかつさらなるスケールに必要なアセットがある会社様で、私のロックアップもなしで全て引き継ぎできることとなりました。

売却金額は4桁万円です。(ギリ)
元々3年以内に1億円で売却という目標で進めていたため、目標には至らず道半ばではありますが、この1〜2年やってきたことを評価いただけたことは嬉しく思います。
(EXITとしては大きな金額ではありませんが、買い手企業様の貴重なお金を出して評価いただけたことに深く感謝しております。)

個人的には、何億円も調達したり年商数十億円の事業を作っていたり何千億円での上場をしたりとしている同世代の方々を見ると、足元にも及ばないなと思います。

視座を高くもっと高みを目指していきたいと思います。

副業で起業するということ

副業が当たり前になりつつある今、副業で起業するというケースも今後1つの選択肢になっていくかと思います。
実際に私としては良い選択だったと思っています。

ただ、本業の収入で生活は保証されている身ではありつつも、事業がうまくいかない時は不安で押し潰されそうにもなりました。自己資金を食い潰している状況はヒリヒリで、先行投資的に人を雇い給与を払う怖さもありました。
副業起業だとしても感じた不安だったので、100%人生賭けている起業家は偉大だなと心から思います。

また、私たちのような副業のスモールビジネスにSaaSは向いてないだろうという意見もあるかとは思いますが、逆に初期の開発の時間さえまとまって取れればその後の本業との両立も可能で、副業に適している側面もあると思います。
ただ、SaaSらしくスタートアップ的に資金調達してJカーブを掘っているところには勝てません。そこは腹括って勝負した人が大きく勝つのだと思います。

反省点も多くあります。
■思いきれなかった先行投資
自己資金だからこそ先行投資にビビってしまい、思い切った投資に踏み切れずにいました。また副業なので、資金調達をするほどではありません。SaaSなので、開発費(自分達の時間)とサーバー費以外初期コストはかからない一方、まとまった売上も初期はなかなか立ちません。

もし次同じことをやるのであれば、開発前に複数社顧客を先に見つけておきSaaSとしてではなく受託的な形で初期の売上を立てにいくかと思います。また、初期のターゲットもロングテールの中小企業や個人ではなく、一定規模の企業をまず先に顧客とし、着実に売上を作るかつプロダクトを磨き、その後ロングテールにSaaSとして広げていくかと思います。

飲食バイト経験がなかった
私も上田も飲食店でのバイト経験がほぼなく、予想していた以上にオペレーションが複雑だったこと、飲食業界が想像以上にレガシーでお堅い業界であったことは想定外でした。
業界特化の副業起業をする場合、自分がレバレッジできるスキルや経験がある方が強いなと思います。

今後について

今後どうするのかについてはまだ未定です。
これまで副業に充てていた時間がすっぽり空くので、副業のお誘い、スタートアップのお誘いなどお声がけしていただけると嬉しいです!!

ちなみに、本業(ByteDance)も楽しくさせていただいており、今のところ辞める予定はありません。(お誘いいただけること自体はウェルカムです笑)
(※念のため書いておくと外部に機会を求めることは良しとされている文化です)

本業でも(広告関連の)新規プロダクト周りを担当させていただいており、これから楽しみなリリースもいろいろとあります。

おわりに

振り返ってみると、やっぱりカオスな時間が自分は好きだなあと思います。真夜中にイヤホンで音楽聴きながら黙々と開発していた日、夜通し朝まで開発しレッドブル片手に朝日を見た日、LUUP乗りながら街を駆け巡り飛び込み営業をして初めて契約を取れた日、バグが発生しお店の前でPC開いてバグ修正した日、ザ飲食みたいなコテコテの飲食経営社長さんと飲み会(という名の営業)をした日、
毎日楽しかったなと思います。

またこれからもスタートアップマインドで楽しんでいきたいと思います。


P.S. サムネイルの写真は大阪から来たメンバーとの決起会後の帰り道の写真です。(いつか創業期の時の写真として使おうねと言って撮ってくれました笑)

※本noteは買い手企業様とも記載内容について合意しております。

※本業の所属企業には副業申請をしております

※売却益は相棒とお互いが得られるような座組みにしています

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