「全てを楽しみきる為に」

「いつか必ず楽しくない時がやってくる。その時にどう楽しむかだよ。」

1年前のことである。
私の強みはどんな状況も楽しめることですと、
声を大にして言いふらしていた私は、この言葉を言われた時 頭に「?」が舞っていた。
当たり前のことをのたまってらっしゃる。私に楽しくないときなんてないのにな。
そう思ったからだ。

しかし、やってきてしまった。
ないと思っていた、その時が。

貴方がいなくなった。

貴方というのは、私の上司なのだが、異動した。
この人には強烈なリーダーシップがあった。この人についていけば間違いなかったし、私が成長できるステージを常に用意して引き伸ばしてくれた。私の理想の上司。

誰よりも私を理解しようとし、時に拒絶されながらも(ごめん)、愛を持って寄り添い続けてくれた。隣にいるのが当たり前で、大切にし合えるのが当たり前。本当に、人間力メーターがカンストしているこの人と、このままずっと一緒に仕事がしたかったし、出来ると思っていた。根拠はないけど。


辞令が出て2週間。彼はみんなから涙とともに盛大に見送られ、遂に私たちの部署に新しい上司がやってきた。
新しい上司は、前の上司とはリーダーシップの取り方も、人との向き合い方も、なにもかもが違った。当たり前のことだが、私はそれに、それこそ盛大に戸惑った。迷い悩み、前のことを思い出しては悲しくなった。

それから私は、前の上司が遺したうちの部署の強みや、みんなの想いを重ねたくて伸ばしたくて、新しい上司を仲間にしたくて、奮闘した。
でも、すぐには出来なかった。

私はゴールを先に設定し更新するタイプ。
新しい上司は凹みを直し積み重ねていくタイプ。

ビジョンの見えない人との仕事はこんなにつまらないのかと、毎日嘆いた。勿論私も成長途中だし、出逢った意味は絶対にあるからと、私もこの新しい上司から学びたい!話したい!聴きたーい!!ということを伝えてはいた。でも、彼の深いところにある想いを理解させては貰えなかった。

共感ができない。

こんなに悲しいことはない。悲しくて、もどかしくて、怒りに変わることもしばしば。
わからなかった。
この時、初めて仕事が楽しくなくなった。


私がここにいる意味、前の上司からの期待値、ここに来ての上司の異動。全てを考えてみれば、わたしの役割は明確なはずだった。し、俯瞰すれば自分で期待値も設定できた。
新しい上司と後輩たちを繋ぎ、新しい上司の一番近い仲間になるのが私の役割。そして自らを更に成長させることは勿論、上司に、前の上司から学んだうちのよさである人間らしさを伝えるのが私の期待値。
(読者の方へ。ツッコミ入れたくなる気持ちはわかりますが、今は優しく見守ってください…)


勇気が出なかった。これ、私がそう思ってるだけで本当の役割は違うんじゃないの??私がそこで考えたこと自体、前のレールの延長線上にある考え方だった。だからすごく不安だった。


味方が、後ろ盾が、仲間が欲しいな。

そう思って、他の部署にいる同じアイデンティティを持った先輩たちを頼った。真剣に話を聴いてくれて、親身になって寄り添ってくれる。同じ血が流れた戦友だ。でも。勇気は出なかった。新しいレールに、みんなで乗るわけではないから。


そうこうしていると、本当にバッタリなのだが。
道でエリアマネージャーに会った。この人は私が入社して2年目から、謎に(前の上司と仲がよかったからだと思う)私のことを見てくれていて、お会いしていなくても絶対的な私の味方であった。エリアマネージャーは、上司の上司に当たる役職。だからこの人の考えは、目的地に向かうレールの上では経由地に当たる。

一連の流れをわーっと聴いてもらう。アドバイスが欲しいというより、私の向かうべきところはこれで合っているのか。確認をしたかったのだ。
黙って聴いて、理解して、共感して、寄り添って話をしてくれる。そして言われた。

「今悩んでいるのは、お前が真っ直ぐ成長している証拠だから、俺からは敢えて答えは言わない。悩み抜いてほしい。ここが絶対にステップアップになるからね。でも、本当ににっちもさっちも行かなくなったら、24時間いつでも連絡してくれていいから。それまでは、やりたいようにやってごらん、なんかあったら責任は俺取れるからね。」

なんてかっこいいボスなのだろうと思った。
そして、後押しするだけでなく、しっかりレールも整えてもらって。
強力で最高の味方を得て、私は自分に自信を持つことができた。また輝けるような気がした。

加えて、安心して挑戦できる環境があることがいかに大切なのかを感じた。困難にも全力で立ち向かっていける環境。私はそれを、今までずっと創ってもらっていたのだ。知らぬうちに。私も創る側になりたいと思った。


気持ちがフラットになった。
そして、もう一度自分に問いかける。

私がここにいる理由はなんだ。

そうすると、前の上司を否が応でも意識してしまう余り、今の上司に心から向き合えていなかったことを痛感した。
私がしたいことなのに、私ができていなかった。
本当に反省した。


なりたい姿になるためのギャップがわかった。
私の機会点。本来なら、弱みに向き合うのは苦しいし面倒くさい。でも、自分の進みたい道筋に向かって、苦しくても成長していくことは楽しい。だから、あるべき姿となりたい姿を考えることは大切なのだ。


人と関わることで、こういう気づきも得られる。
私に向き合って話を聴いてくれる、居場所も感じることができる。苦しいときは励まし合える。お互いの成長に関わりあえる。そしてそれぞれの想いを通わせ、重ねることで仲間になる。同じ想い、同じ言葉ではないからこそ、人は面白い。

今回も、誰かと関わることが鍵だった。
自分ひとりでも楽しめるけど、ほんとうの楽しみ、より大きな喜び、幸せは仲間と共にいることで感じられる。
そういえば、貴方が教えてくれたことだった。


全てを楽しみきる為に、全力で考えろ。
困難も仲間となら楽しみに変わる。

あの時の答えが今ここに。

貴方が伝えたかったのはここかしら、と
今日も仕事をしながら思うのだ。


(終わり!)



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