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PanF+というフィルムについて

あまり使われないイルフォードの常用低感度フィルム

PnaF+というフィルムはイルフォードの常用フィルムのラインナップであるプラスシリーズで低感度フィルムの役割を担っています(低感度PanF+, 中庸感度FP4+, 高感度HP5+)。
FP4+とHP5+は軟調な描写傾向で調整の幅が広いことと、実行感度が比較的高いことから扱いやすく初心者から上級者まで幅広く愛用されています。特にFP4+は軟調かつそれなりに広いラティチュードを持ちつつも、しっかりとした輝きのあるハイライトを出してくれるので好きです。HP5+は比較的増感耐性もあるので、お守り代わりに持っています。ちょっとハイライトが出づらいのでプリントで号数を高めにしています。
描写のFP4+とお守りのHP5+、これでラインナップとしては事足りているので、PanF+をあえて使おうとは中々ならないわけです。

Film:FP4+,Developer:Rodinal, Camera;HasselbladSWC

実際にPanF+を使ってみた感想

比較検証も行ってみたので、こちらもぜひ参考にしてみてください。

差として見比べてみるとHP5+とFP4+ほどの大きな差はPanF+とFP4+の間にはないのですが、単体の描写としてはやはり低感度で多くの光を使ってるだけあって良い描写するなぁという気がしました。特に上記のブログでも出ている日陰の写真なんかは結構好きな感じです。また、二枚目の草木の写真も豊かな諧調とそれなりに高い解像感できっちりと描写されている印象です。
写真も最終的にはどれか一つのフィルムで撮るわけですから、少しでも諧調豊かで高解像な写真にしたいと思うならFP4+よりPanF+の方が良いというのは間違いないと思います。

Film:PanF+,Developer:Rodinal, Camera;Hasselblad500C+Planar80mm2.8


Film:PanF+,Developer:Rodinal, Camera;Hasselblad500C+Planar80mm2.8


Film:PanF+,Developer:Rodinal, Camera;HasselbladSWC

PanF+の抱える問題と用途

とはいえ、ではPanF+とHP5+のラインナップに変更するかというと、そうもいきません。大きな問題は二つあって、一つはPanF+が保存状況や取り扱いに対して繊細であること、もう一つはISO100程度までが汎用性を考慮すると使用しやすい感度の下限であるという事です。
前者の問題ですが、いまだ詳細は明らかではないのですが、明らかにHP5+に比べて水洗でステインは落ちにくく、期限切れは感覚的には実行感度の低下が顕著な印象です。乳剤もはがれやすい気がします。また、あまり在庫を抱えられないのでマメにネット注文することになりますが、それもやや面倒です。
後者の感度の問題に関しては、PanF+の描写の美しさそのものが豊富な光量に支えられている感じがするので増感するというわけにもいきません。特に愛用しているSWCはF値が4.5なので、気軽に詰めておくにはISO125程度が限界です。
以上の観点から、実際に使用するならば用途が決まっていて光量の確保しやすい状況が好ましく、ストロボを使用するようなしっかりしたポートレート撮影や三脚の使用が前提の風景撮影などではないでしょうか。また、古いフィルムの感じの描写なので、春から秋の日中スナップになら使用してみても良さそうです。

PanF+は使ってみた方がいいのか?

使ってみた感想としては、伝統的な良い写りのするモノクロフィルムという感じなので、やや気難しい面はありますが使ってみると良いと思います。Deltaシリーズのような高解像の粒子ではなく、あくまで古典的な特徴をいかしたまま高い描写能力を作り出すという感じで結構面白いですし、ハマる人もいるのではないかなと思います。物は試しで、1本試してみてはいかがでしょうか。


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