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ご家族の支援

私は、障がいのある人たちが利用する事業所を経営しています。障がいのある人たちへの支援が仕事です。その支援の中には、ご家族への支援も含まれています。いろいろなはたらきかけをします。しかし、ご家族へのはたらきかけでつまづくことがあります。つまづきは、支援者が「親なんだから当然でしょ」という姿勢で対応するときに発生します

余計な一言

たとえば、支援計画の承認の場面です。原則は、利用者ご本人に説明をして承認をいただきます。しかし、必要に応じてご家族にも説明をします。そのとき、支援者が余計な一言を言ってしまいます。
「もう少しご家庭でも注意していただけると…」

事業所で起きている問題は、事業所の問題です。事業所で解決をしなければいけません。ご家族から聞くことは、ご家庭での様子や、ご家族の工夫です。

また、ご家族は精一杯のことをしてきました。そこに対する敬意を示さなければいけません。それをないがしろにして、ご家族を攻めるようなことを言ってはいけません。ご家族は、これ以上どうすればいいの、と迷ったり、私の育て方が悪かったからと、自分を責めてしまいます。

権力争い

さらに、面談では、ご家族と支援者の間で「そうは言っても…合戦」が始まります。お互いが一歩もゆずりません。利用者ご本人のことは関係なく、どっちの主張が正しいか、そんなやり取りになります。

私が立ち会う面談で、支援者とご家族がそうなってしまったとき、私は、いったんトイレに行きます。「すみません…ちょっとトイレに行かせてください。」と言って立ち上がります。また、トイレから戻ってくるときは、少し軽めに「すいませ~ん、最近、トイレが近くて、ところで、〇〇なんですが…」と、まったく違う話題を切り出します。このとき「それでどこまで話しましたっけ?」と言ってはいけません。

ご家族の価値を知る

支援者は、必要なことを伝えるよりも、ご家族の話を聴くことを優先しなければいけません。ご家族の話の中には、関係のない話もあります。いや、関係のない話の方が大半です。しかし、そこにヒントが隠されています。ご家族の価値観がどこから来ているのか、そこをさぐることができます。

支援者が、ご家族に対して「こうしてください」と言っていることは、ご家族が、病院や学校の先生、もしくは親戚から言われ続けてきたことです。また、なんども言われたとおりにやったのにうまくいかず、失望したことです。その繰り返しで今の価値観ができあがっています。私たちは、そこに気が付くように耳を傾けます。

支援者は、支援者と価値観が違うご家族に対して「あの家族は難しい…」と言います。難しいのは、ご家族ではなく、支援者とご家族の関係です。ご家族の話に耳を傾けるところから、利用者ご本人への支援が始まります。


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