支援の矛盾/「ご相談ください」と「自分で決めましょう」
支援場面における矛盾の一つです。利用者から電話があり、その矛盾を突っつかれました。ご相談くださいと書いてあるのに、相談したら自分で決めましょうと言われてしまったと言います。
私の社会福祉法人の場合
私は、障がいのある人が利用する社会福祉法人を経営しています。主たる業務は理事長業務です。ただし、もともとは現場の支援者だったこともあり、当時から付き合いのある利用者からは、直接、相談を受けることがあります。
私の社会福祉法人は、規模の小さい社会福祉法人です。しかし、事業の種類がたくさんあります。そのため利用者の状況もさまざまで、支援の必要量が人により大きく異なります。利用者の中には、日常生活全般において支援が必要な人がいます。また、話を聴くことが主たる支援の人もいます。その人たちからは、メールや電話で相談をされます。
「〇〇さんがしたいようにお手伝いします」
その内の一人から電話がかかってきました。その利用者が、直接支援にあたる支援者に相談をしたところ、支援者からは「〇〇さん(利用者)はどう思いますか、〇〇さんがしたいようにお手伝いします。」と言われたのことです。
私に電話をかけてきた利用者からは、「どうしていいかわからないのに、そう言われてもさぁ、それがわかったら苦労しないよ。」と言われてしまいました。そのとおりです。
意思の尊重
支援は、利用者の意思を尊重することが大原則です。しかし、利用者の言葉だけをくみ取っていると、支援ではなく放任になってしまいます。支援は、意思決定支援でなければいけません。意思決定支援は、自分で最善の答えを見つけられるようにお手伝いをすることです。
今回のやりとりは、言葉のやり取りだけです。困っている利用者の気持ちには寄り添っていません。「自己選択」とか「利用主体」、「意思の尊重」という言葉だけが独り歩きをしていくとこういう事態を招きます。
するどい突っ込み
また、この利用者からは、するどい突っ込みを入れられてしまいました。
「髙橋さん、紙には、『困ったら何でもご相談ください』って書いてあるよ。でも相談しても教えてくれないじゃん。」
本当にそのとおりです。
紙とは、契約書と一緒に渡す、重要事項説明書です。そこには、そのとおりに書いてあります。私たちは、決まり文句で「いつでもご相談ください」とか「配慮いたします」という言葉を使います。しかし、実際に利用すると、「自分で決めましょう」とか「こうしなきゃだめでしょう」と言われてしまいます。矛盾しています。
自分で自分のことを決めるということはだいじです。しかし、決めるためには選択肢や経験が必要です。障がいがあるためにそこが不足していると決断ができません。まずは、選択肢を用意したり、経験を積む手伝いが必要です。
今回は、良い突っ込みをいただきました。
連続投稿1000日まで、あと89日。