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気にかける

私は障がいのある人が利用する事業所の経営をしています。専門は、障害福祉サービスです。しかし、これからの専門性は、地域福祉サービスという視点が大切です。昨日のnoteでは、地域住民と結びつきを強める取り組みについて書きました。今日は、地域福祉における地域連携について具体的な例を示します。

地域や多職種とつながるわけ

福祉サービスの制度は、対象ごとに法律があります。例えば、障害者総合支援法、介護保険法、児童福祉法などです。また、その法律に基づいてさまざまなサービスや事業所が位置づけられています。概論として、制度をまたいだ多職種連携が必要だと言われます。しかし、実際は対象者ごとの専門職だけで集まることがほとんどです。

私の専門分野は、障害福祉サービスです。なかなか高齢福祉サービスの事業所と手を組むことができません。しかし、障害福祉サービスを利用している人もやがて高齢者になります。また、利用者の家族も高齢者になってサービスを使うことがあります。そのときになって、あわてて高齢福祉サービスの事業所に足を向けるのが現実です。それでは、十分な連携ができません。障害福祉サービスの専門職であっても、日ごろから、高齢福祉サービスや地域のインフォーマルサービスと親しくなっておくことがだいじです。そんな事例を紹介します。

利用者Aさんの家族の話

知的な障がいがある50代のAさんの話です。Aさんは、私の法人の日中活動とグループホームを利用しています。また、Aさんの家族は、80代のお父さんとお母さんです。二人は、加齢に伴い不便を感じることはあるものの、福祉サービスを利用することなく、夫婦ふたりで生活をしていました。ある日、お母さんが倒れて緊急入院をしてしまいました。

お母さんが入院してすぐのころは、お父さんも気が張っていたのか、シャキシャキと動いていました。また、食事は近所のスーパーで総菜を買うことで3食しっかり食べていました。しかし、お母さんが入院して2週間ぐらいしたころから、お父さんの様子がおかしくなってきました。

私は、お母さんが入院したあと、定期的にお父さんの携帯電話に電話をしていました。しかし、だんだんに電話の内容がおかしくなりました。やりとりが認知症の始まりかうつを思わせるような内容になりました。その後、電話の電源が入らないままになってしまいました。私は、対応に困り地域包括支援センターに相談をしました。

地域包括支援センターにSOSを求める

地域包括支援センターは、地域の高齢者を支援している機関です。しかし、ご本人から申請に行かないと利用につながりません。利用者の家族は、介護に関する支援を必要としなかったので、高齢福祉サービスとつながっていませんでした。

このときは、利用者の実家近くにある地域包括支援センターの担当者と私が顔見知りでした。そのため、前置きなし細かい説明なしの「ごめん、ちょっと様子、見に行って来て」の一言で担当者が動いてくれました。また、これをきっかけにして、地域の民生委員が気にかけてくれるようになりました。

気にかける

支援で必要なことは、特別な福祉サービスだけではありません。「気にかける」ということです。私は「お母さんが入院しちゃったけどお父さん大丈夫かなぁ…」と気にしていました。地域包括支援センターに話をしたあとは、地域包括支援センターの担当者や民生委員が気にかけてくれるようになりました。おかげで、だいじにいたらずお母さんの退院を迎えることができました。

支援でたいせつなことは、気にかけることです。そのためのつながりを日ごろから作っておくことがだいじだと再確認をしたできごとです。



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