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利用者の思いを予測するときのツール(エンゲストロームとアドラー)

相談業務を担当する支援者から相談を受けました。

相談業務では、他事業所との調整役のような業務もあります。今回は、他事業所(サービス提供事業所)の支援者から、利用者の支援方針が定まらず困っているという相談がありました。

私は、障がいのある人が利用する事業所を経営しています。理事長職以外に相談支援事業所の管理者をしています。そこで、私にも話がありました。私と担当支援者で、相談があった利用者の状況の整理を始めました。

エンゲストロームの文化・歴史的活動理論

私は、状況を整理するときにエンゲストロームの文化・歴史的活動理論を参考にします。これは、向後千春先生のちはる塾おとな学部で研究の勉強をしたときに教わりました。下の図は、そのときのテキストの引用です。

就労支援員2

私が、支援について考えるときは、左側の「主体」に利用者を置きます。その向いが、利用者の希望する生活です。三角形の頂点が支援者の介入です。

私たちが支援をするときは、目に見える部分、三角形の上半分が中心になりがちです。しかし、その背景には、見えない「ルール」「コミュニティ」「分業」がからみあって影響しあっています。支援をするためには、そこを整理して明らかにします。

利用者とサービス提供事業所間のずれ

今回、このツールを使って整理をしたところ、利用者本人が決めているルールと、その利用者が活動する事業所のルールにずれがあること、さらに、利用者に求められている役割と本人が望む役割が違うことがわかりました。

その利用者は、指先が器用なことから、多くのことを求められていました。しかし、ご本には気乗りせず、非積極的です。それに対して支援者は、できるのにやらないのはもったいない、と言います。ご本人は、そこまでやらなくてもいい、なんでそこまでやらなければいけないんだ、そんなふうに思っていることが予測ができました。

ライフスタイルも予測する

また、利用者の経歴や、エピソードも読み込みました。その結果、アドラー心理学のライフスタイルB族に当てはまるのではないかと予測できました。そうであるならば、その人は、受動的で対人関係優先だということになります。

これに気づいた瞬間、その利用者の行動に合点がいきました。支援者は、仕事の上達を第一に考え、本人は仲間との親密さを第一に考えています。そこにずれが生じています。

この状況から、この利用者の支援では、他の仲間を喜ばせるような役割になっていただくことから進めて行くのが良いのかもしれません。

予測した先は…

障害者総合支援法では、どこで誰とどのように暮らすか、それを自分で選ぶ権利があると記されています。支援者は、それを支えることが仕事です。しかし、支援者都合で、暮らし方を誘導してしまうことがあります。

利用者の中には、言葉によるコミュニケーションに限界がある人がいます。その場合、支援者の予測が中心になります。そのとき、どんなツールに当てはめて予測をしていくのか、それによって、その予測の方向が違ってきます。

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