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送迎するから所属して…(アドラー心理学入門講座 第5回目より)

04月11日(木)から早稲田大学のエクステンションセンター中野校で向後千春先生の「アドラー心理学入門講座」が始まりました。今回もそこで学んだことを障がいのある方への支援場面でどのように活用できるか実践報告を交えて考えていきます。

05月16日、第5回目のテーマは「自分の居場所を見つける~所属」でした。人はまず所属を求めます。所属とは「居場所」のことです。自分はここにいていいんだ、自分はここでやっていけるという感覚です。今日は理想とする福祉サービスが、ここにいたい、と思えるような場所であるかどうか、その点について考えます。

障がいのある方が、所属先を選ぶポイントの一つに「送迎」が関係してきます。今、街中では福祉サービス事業所のワゴン車がたくさん走っています。福祉サービス事業所にとって送迎サービスはあたりまえになってきています。しかし、そこには考えなければいけないことがあります。

一つ目です。本来所属先は、自分のライフスタイルにあった、自分が活躍できる場でなければいけません。また、障がいのある方の中には自分で自分の所属先を選ぶことができない方もいます。そのときはご本人に代わって、ご家族や今まで支援をしてきた方々が所属先を選びます。そのときの選択基準が、ライフスタイルではなく、送迎になっていることがあります。結果、ご本人にとっては本意でない場所に所属せざる得ないことになります

二つ目です。下の図をご覧ください。

私が研修等で使うスライドの一枚です。これはグループホームで生活をして、日中活動の福祉サービスを利用している方の例です。ご自身で日中活動に行かれない場合は、日中活動先の送迎車で日中活動先に向かいます。door to doorです。とても手厚いサービスのように思います。でも、利用者の立場からすると毎日、同じ時間に車に乗せられ、日中活動に行き、同じ時間に車でグループホームに戻されます寄り道はありません。「あっ、あれ欲しい」と思ってもコンビニにも寄れません。ご自宅に送迎車が迎えに行く場合も同じです。さらに行政は、この送迎サービスを推奨しています。

本当にこれで良いのでしょうか?

私たちの事業所では、できるだけグループホーム(自宅)と日中活動先の間をヘルパーにお願いするようにしています。しかし、ヘルパーは極度の人手不足で対応ができません。

所属の話に戻ります。所属先を確認するワークで重要度が高いものは「家庭」と「職場」だといいます。その家庭に代わるのがグループホームです。障がいのある方たちはその間を送迎車で行ったり来たりです。だからこそ、私たちサービスを提供する側は、その所属先が利用者にとって、自分はここにいていいんだ、自分はここでやっていけるという、という場所にしなければいけません。

アドラー心理学は福祉サービスのあり方を体系的に説明しています。福祉サービスでは意思決定支援が原則です。活動する場所、所属先は自分の生活にあった場所を選択する権利があります。そのときに参考となるのが自分のライフスタイルです。言葉で自分のライフスタイルを伝えることができない人はライフスタイルに合っているかどうか感情で伝えます。その感情には目的があります。私たち支援者はその感情に着目してその利用者の所属先がその利用者に相応しい場所かどうかの判断をします。

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