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【アドラー心理学ゼミナール1】5つの基本前提

 早稲田大学エクステンションセンター中野校に行くとnoteを書きたくなります。人生100年時代、中野校は私の人生の折り返し地点にあたる場所です。その中野校で向後千春先生のアドラー心理学ゼミナールが始まりました。そこで学んだことを記します。

(前置き/アドラー心理学との出会い)

 私は、50歳の手前である事件の関係者になり、そのときに自分の生き方を見直しました。そこで出会ったのがアドラー心理学です。その後、アドラー心理学を学ぶために通い始めたのが早稲田大学エクステンションセンター中野校です。また、約10年前、中野校に通い始めたことをきっかけにしていろいろなことを学び始めました。その学びをまとめるのに使いはじめたのがnoteです。先日(と、いっても1ヶ月前)、ひさしぶりに中野校でアドラー心理学に関する講座(ゼミナール)が開講されました。

対人援助職にはアドラー心理学が必要だ!

 私の仕事は、障がいのある人が利用する社会福祉法人の経営です。また、相談業務を中心に直接支援にも携わっています。対人援助職と呼ばれる仕事です。私は、この対人援助職にはアドラー心理学の考え方が役に立つと思っています。しかし、残念ながら対人援助職を養成する学びでアドラー心理学に出会うことはほとんどありません。

 たとえば、社会福祉専門職の国家資格を取得するための学科に心理学に関する学科があります。ただし、そこで学ぶのは病んだ人と向き合うような古典的な心理学だけでした。20世紀の社会福祉はそれで良かったかもしれません。しかし、21世紀になり社会福祉の概念が変わりました。

“Welfare”から“Well-being”へ

 20世紀の福祉は“Welfare”でした。Welfareが指す福祉は、保護すべき人を救うという意味です。それに対して21世紀の福祉は“Well-being”です。Well-beingが指す福祉は、幸せに生きるという意味です。だからアドラー心理学が必要です。なぜならアドラー心理学は幸せに生きるための心理学だからです。

 また、アドラー心理学には5つの基本前提というのがあります。この基本前提を対人援助職に携わる者が理解することで、いまの社会福祉が抱える課題の改善につながると思います。アドラー心理学の5つの基本前提と今の福祉課題を説明します。

 まず、以下がアドラー心理学の5つの基本前提です。アドラー心理学はこの5つの理論から成り立っています。また、この理論を現代社会福祉の基本前提とすることで問題解決につながります。

(1)支援者の価値は私的感覚であることを知る(仮想論で考える)

 対象者への支援は支援計画に基づいて支援が提供されなければいけません。また支援計画は対象者の希望に基づくものです。しかし、そこに支援者の価値「こうあるべき」が強く打ちだされることがあります。これは間違えです。支援者は、自分の信念に基づき自分が見たいように対象者を見て、支援をしているということに気づかなければいけません。

(2)問題となる行動だけを見ない(全体論で考える)

 支援者は、対象者の障害や問題となる行動ばかりに意識が向いてしまいがちです。また、対象者の感情だけを取り出してその人全体をラベリングしてしまうこともあります。対象者はいつも問題行動をしているわけではなく、またいつも怒っている、不安定になっているわけでもありません。その部分だけでなくその人全体を見ることがだいじです。

(3)支援者の口癖「なんでそんなことするの」(目的論で考える)

 支援者は、対象者が納得できない行動に出たとき「なんでそんなことする」と問いただすことがあります。また、何度も同じような場面に出くわすと「なんども言っているでしょう」と怒り始めます。これは原因論です。対象者の行動は、その人なりに良くしようと思ってとった行動です。それが支援者の価値と合わなかっただけです。支援者は対象者の目的に目を向けないといつまでもその人を理解することはできません。

(4)医学モデルから生活モデルへ(社会統合論で考える) 

 対象者の問題に対する原因のとらえ方が変わってきました。以前は、フロイトの精神分析学を基本とする「医学モデル」でした。医学モデルでは、課題を抱える人個人に原因があると考えます。それに対して現代の主流は「生活モデル」です。生活モデルでは、原因をその人とその人を取りまく環境との相互作用よるものと考えて解決を図ります。また、権利擁護の視点では、住み慣れた街で安心して暮らすということが福祉の第一義的課題となっています。これは、社会・人と人の中で暮らす、社会統合論そのものです。

(5)意思決定支援の原則(個人の主体性で考える)

 かつての福祉は「措置(行政主体)」でした。それが今は「契約」です。サービスを利用したい人は自分で選んで、自分で契約をします。私たち支援者は、利用したい人が自分にとって最善の選択ができるようにお手伝いすることです。それは、利用する人の希望通りに支援することではありません。自分の人生において、最善な選択をすることができない人や苦手な人がいます。私たち支援者は、その人たちに対して一番良い選択ができるように支援をします。福祉は個人の主体性が大原則です。

 最後に障害者基本法第3条第2項を引用します。

全ての障害者、可能な限り、どこで誰と生活するかについて選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと。

障害者基本第3条第2項

 法律にもアドラ―心理学が理念が反映されています。

 以上のように、今の福祉の課題をアドラー心理学で考えるとスッキリ説明ができます。アドラー心理学の5つの基本前提が福祉サービスの基本前提となるように、アドラー心理学を学んで実践し、伝えていきたい、そんなふうに思っています。


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