注目を獲得するのに有効な戦略(アドラー心理学入門講座 第7回目より)
04月11日(木)から早稲田大学のエクステンションセンター中野校で向後千春先生の「アドラー心理学入門講座」が始まりました。今回もそこで学んだことを障がいのある方への支援場面でどのように活用できるか実践報告を交えて考えていきます。
05月30日、第7回目のテーマは「人の役に立つ~貢献」でした。本題に先立って、先週の講義に対する質問から質問を選んび、グループで質問会議を開きました。その質問の中に興味ある物があったので、あらためてここで取り上げ、関連する事例を紹介します。
質問は、なぜ子どもは良いことは覚えず、悪いことはすぐに覚えるのか、それをアドラー的な視点で考えるとどうなるのかというものでした。
アドラー的に考えると、全ての行動には目的がある。その目的は所属することである。ということになります。子どもであれば、親に注目をしてもらいたい。でも普通にしていても注目してもらえない、努力して良いことをするより、手っ取り早く悪いことをして親の注目をあびたい、ということになります。
障がいのある方の中には、自傷行為という行動に出る方がいます。その自傷行為もアドラー的に考えると、所属することを目的とした行為であるということができます。自傷行為とは、字のとおり、自分で自分の体を傷つけることです。たとえば頭を叩いたり、頭を床や壁にガンガンぶつけたり、床をかかとで強く踏みならしたり、こぶしで壁を叩いたりします。
日中活動では、4月当初、自傷行為をする利用者が増えました。新しい利用者が来て、なじみの支援者が新しい利用者の対応をしていると、他の利用者が自傷行為を始めます。また、新しく採用した支援者の前でも同様です。
グループホームでは、誰か一人が不穏になって支援者がかかりきりになると、他の利用者が自傷行為を始めることがあります。私のところにも来て!というアピールです。
そのときの対応として、支援者は、「叩いたら痛いでしょう」とか「そんなに叩かないの」と、言葉をかけます。でも、利用者は、痛いことも、いけないことだということもわかっています。
たとえば、その利用者が言葉で「ちょっと来てください」と言ったとします。それでもこの場面では支援者は「ちょっと待っててください」と言います。やっぱり自傷行為は注目を獲得するには一番有効的な戦略です。
一方で、自傷行為や大泣きをしたときに支援者がすぐに対応すると、甘やかしていると指摘されることがあります。確かに、支援者の反応で強化されています。しかし、だからといって、急に支援者が反応しなくなると、利用者の自傷行為はさらにエスカレートするかもしれません。もしくは支援者に嫌われたと思うかもしれません。
言葉によるコミュニケーションが苦手な利用者にとって自傷行為は、痛くても長年かけて身につけた手段、戦略です。
自傷行為に遭遇したとき、「ごめんね、待たせて」、そんな気持ちで話かけます。また、私に気持ちを寄せてくれたことに感謝しながら、一緒に所属感を高めるよう努めます。