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痛みを伝えることは難しい

病院に行くと、「痛みを10段階で言うとでくらいですか」と聞かれます。私は、この質問が苦手です。私にすると、0か10なのです。

しかたなく「7ぐらいですかねぇ」と答えます。すると医者は「前回が8だから少し薬が効いているのかなぁ」と言います。私は、あわてて否定します。

今日は、痛みの伝え方について書きます。

痛みを伝える

私は、障がいのある人が利用する事業所を経営しています。利用されている人たちは「知的障害」と言われる障がいを持っています。その利用者の中には、痛みを上手に伝えられない人がいます

上手に伝えられない人は、「なんだか体がいつもと違うけどよくわからない」、「これを痛いというのかもしれない」、「痛いけど体のどこが痛いのかわからない」などいろいろな状況です。自分の体のことを、正しく認識してそれを言葉で表現することが苦手です。

障がいのある当事者の方が書いた本で「発達障害当事者研究」という本があります。本著の中の一節では、「お腹が痛い」という現象も、病的なものなのか、お腹がすいてキューとしているのか、女性特有のものなのか、幾つもある選択肢「~かもしれない」の中から選び、結び付けることができないと書かれています。

事業所では…

事業所の例では、すべての痛みを「頭が痛い」もしくは「お腹が痛い」と表現する人がいます。たぶん、小さいころ、体のどこかが痛くて苦しんだときに、親が「大丈夫?頭痛い?お腹痛い?」と聞いたことで、同様の状況を総じて「頭が痛い」とか「お腹が痛い」と表現するようになったと思われます。

また、痛みを伝えられても、ご家族や支援者が近くで見たり触ったりすることを極端に嫌がったり怖がったりする人がいます。

「痛い」と言いながら自分の手で耳のあたりを押さえていました。しかし、それ以上はわかりません。ご家族や支援者が「よく見せて」と言ってもみせてくれません。人によっては、歯が痛かったり、耳が痛かったり、神経だったり様々です。患部が特定できないと通院ができません。また、通院をしても、嫌がって処置をしてもらうことができません。

救急車騒動がありました

反対に、正しく伝えられないことで大騒動になったことがあります。ダウン症という障がいの人の多くは、心臓に疾患を持っています。そのため小児期に手術をした人も少なくありません。

以前、ある利用者が事業所から一人で自宅に帰る際、救急車で運ばれるということがありました。その人は、お腹が痛くて、バス停で苦しんでいました。それを見かけた人が心配をして声をかけてくれました。そのとき本人が「心臓痛い」と言ってしまったために、おおごとになってしまいました。

ご本人は、自分は心臓が悪い、という認識を強く持っていました。

変調のサインを見逃さない

痛みを上手に伝えられないということは、本人にとって辛くて、もどかしいことです。一生懸命、訴えても伝わりません。私たちもどうにかして痛みを解明しようと試みます。しかし、なかなかうまくいきません。そのため、日ごろから利用者の体の状態を把握することが大切です。

また、お盆前は、いつも以上に利用者の体調の変化を気にします。病院が休みに入るので、なおさら対応が遅れます。利用者の行動や、気分の起伏に注意して、変調のサインを見逃さないようにしなければいけません。

お盆休みに入りました。日中活動の休みに伴い、グループホームの入居者の中にも帰省された人がいます。少しさみしいグループホームです。

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