注意される人から感謝される人へ
05月11日(土)から早稲田大学のエクステンションセンター中野校で向後千春先生の「アドラー流子育て講座」が始まりました。私も娘二人の父ということ、またそれ以上にアドラー心理学はあらゆる援助場面に応用できることから受講しています。今回もそこで学んだことを障がいのある方への支援場面でどのように活用できるか実践報告を交えて考えていきます。
講座内容は以下のようになっています。
05月11日(土)am 第一回 怒らない~目的論
05月11日(土)pm 第二回 誰の課題か~ライフタスク
05月25日(土)am 第三回 介入しない~自然の結末
05月25日(土)pm 第四回 比べない~ライフスタイル
昨日は、第一回の「怒らない~目的論」で学んだことを、実体験にかぶせて「怒っても事態は変わらない」というタイトルで支援者と利用者のやり取りを書きました。今日は、それをより具体的に取り上げます。
障がいのある方たちが生活する場所にグループホームがあります。私の経営するホームは障がいのある方6名が支援者と一緒に生活をしています。そこでのできごとです。なお、ここで紹介することは5年前のことで今は改善されています。
夕ご飯前のことです。夕ご飯ができると、支援者が1階から「ご飯ですよー」と声をかけます。すると2階から元気よく利用者が降りてきます。その後、洗濯物を干しに2階に上がった支援者が、利用者の居室の電気が点いたままであることに気がつきました。支援者はその利用者に言いました。「また、部屋の電気、つけっぱなし。いつも下に来るときは消して来なさいって言っているでしょう」。かなりきつい口調です。言われた利用者は、電気を消しに2階に上がります。その利用者が1階に戻って来ると支援者が言いました。「できるじゃない、明日からは言われる前にやりなさい」。
楽しい夕飯の雰囲気がいっきにどんよりしてしまいました。また、このやり取りから察すると毎日、同じやり取りが繰り返されていることが予測できます。そのせいか、電気を消し忘れる利用者が、上から降りてくるだけで他の利用者が「電気!」と注意するようになりました。悲しいことです。
支援者の話を聞きました。すると、「部屋の電気を消すのは当たり前」、「電気代がもったいない」と言います。でもこの思いは利用者には届いていません。
私からは、「電気を消してください」、とお願いをしてみたらどうですか、さらに、電気を消してきたら「ありがとう」と声をかけてみてください、と支援者に提案をしました。しかし支援者は、自分の部屋の電気を消すのをなぜお願いしなければいけないのか、それにお礼を言うのはおかしいと反発しました。
この場面において理想状態は、下に降りてくるときは電気が消えているということです。どうしたらその状態が実現できるか、さらには誰もが気持ちよく暮らせることを考えて欲しいと、支援者にお願いをしました。でもその気持ちは伝わりませんでした。
その後、支援者が変わり、対応も変わりました。相変わらず、電気は点いたままです。でも消しに行ったあとお礼を言うようになったら、他の利用者も一緒にお礼を言ってくれるようになりました。注意される人から感謝される人に変わりました。
ただ、怒っても何も事態は変わりません。どうして欲しいのかきちんと伝えることが大切です。アドラーは伝える時の極意をこう言います。
「優しくきっぱりと」
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