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4つの誤ったゴール(アドラー心理学入門講座 第6回目より)

04月11日(木)から早稲田大学のエクステンションセンター中野校で向後千春先生の「アドラー心理学入門講座」が始まりました。今回もそこで学んだことを障がいのある方への支援場面でどのように活用できるか実践報告を交えて考えていきます。

05月23日、第6回目のテーマは「まわりに任せてみる~信頼」でした。本題に先立って、先週のふりかえりと、時間の関係で今週に持ち越された、「4つの誤ったゴール」についての説明がありました。今日は、4つの誤ったゴールについて事例を用いて説明をします。

講義では4つの誤ったゴールについて、共同体にうまく所属できないと感じるとその共同体に対して破壊的な行動で所属しようとする、という説明がありました。人はなんらかの形で所属を求めます。また、誤ったゴールは以下の4段階に分かれています。

(1)注目を得ようとする
(2)権力争いをする
(3)復讐する
(4)無能であることを示す

実際の事例に当てはめてみます。

私と出会ったころのAさんは、私がどんなに建設的な提案をしても「ムリ」、ムリ」を繰り返すばかりでした。また、Aさんが私に話をしてくれることはすべて、支援者の苦情ばかりでした。

Aさんは生活面、労働面において支援をほとんど必要とせず、養護学校を卒業したあと一般就労をしました。しかし、就労先の都合で事業所が閉鎖となり、福祉サービスの利用を始めました。

Aさんが辛い思いをしたのは周囲の期待が大きすぎたことです。あまり、支援を必要としないということは、ほとんどのことを一人でできるということです。ただし、完璧ではなかったり、つめがあまかったりします。すると周囲の反応は、なんでそれぐらいのことができないの、ということになります。Aさんが、がんばって注目を得ようとしても、周囲の人たちはもっともっと上、完璧を望みます。結果、Aさんがは周囲の人から認められたと感じることがなく、青春時代を過ごしてきました。

やがて、Aさんは家族に対して常に文句を言って自分の正しさを主張するようにようになりました。家族は、生意気なことばかり言っていると思います。結果、家に居場所がなくなりました。

グループホームに入居してもその状況は変わりませんでした。支援者も同じで、Aさんならもっとできるはずだと思います。家にいたときと同じです。やがて、Aさんの会話は被害者意識が強くなり支援者に冷たいあつかいを受けていると周囲に誇張して言うようになりました。

それでも事態は大きく変わることはありません。私は、そのころAさんに出会いました。その頃のAさんは私が何を言っても「そんなのムリ」を繰り返すばかりでした。

大きな転機は、Aさんの好きなテレビ番組に私が反応したことです。それからそのテレビ番組に関する会話が増えました。会話が増えると私とAさんの間に共通の地域があることがわかりました。その後、Aさんは私の携帯に共通の地域にある美味しいお店の情報を教えてくれるようになりました。気がつくと、支援者への苦情はめっきり減っていました。

誤ったゴールにたどりついてしまった人とのかかわりは、その人の良い側面、普通に注目することだといいます。

私に美味しいお店を教えてくれる(貢献)ということは、Aさんと私の関係はやっと共同体のサイクルを一周したところのようです。これからはゴールを誤ることなく、共同体サイクルを何周もして共同体感覚を強めていきます。

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