障害福祉サービスにアドラー心理学を応用する
アドラー心理学を基本とした子育てにおける親の育成プログラム、パセージのテキストの最初のページには、子育てにおいてはどういう大人になってもらうかはっきりと意識しなければいけないと書かれています。
そこで次のような行動面の目標を示しています。
〈子育ての行動面の目標〉
1)自立する。
2)社会と調和して暮らせる。
この目標は子育てだけではなく、人を支援するあらゆる場面で有効です。
私は障がいのある人たちを支援する事業所を経営しています。もともとは現場の支援者です。現場にいた頃にパセージに出会っていたら、あんなにひどい支援はしなかったのに、と後悔しています。
障がいのある人への支援においては、ご本人の希望を尊重した「支援計画」を作成し、それに基づいて支援をおこないます。それは利用者と支援者の間の約束であり、支援者間において共通認識を持つための書面です。しかし、その支援計画が支援に反映されているかというと必ずしもそうではありません。
支援者が支援計画を意識することなく、自分の経験値や一般論で対応してしまう場面がたくさんあります。その原因の一つは利用者の求める表面的な希望(デマンド)にとらわれすぎていることです。表面的な希望は複雑です。軸がはっきりしていないと常に支援者は振りまわされてしまいます。そこでその軸として応用できるのが、パセージにおける行動面の目標ではないでしょうか。
障害福祉サービスにおいて、意思決定支援と地域生活への移行は最重要課題とされています。サービスを実現させるための研修も頻繁に行われています。その研修では、「自己決定と自立」という項目があり、そこで意思決定支援について学びます。しかし、自立についての定義は、受講者の判断に委ねられます。「地域生活分野」という項目もあります。そこで学習することは地域資源の活用です。
自立の定義は人によって様々です。アドラー心理学を学ぶと、自立とは自分の課題を自分で解決しようとする勇気だということ、また地域資源の活用は貢献の要素が重要であるということを知ります。
まずは、自分のフィールドで理解を広めていくことをしなければいけません。