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人生を垣間見る話題が必要です

障がいのある人の支援をするときは、定期的にサービス提供事業所が集まって打合せをおこないます。一人の利用者に対して、複数のサービス提供事業所がかかわっていることがあります。また、事業所によってその利用者のどこに注目をするのかが異なります。そのため報告される情報だけをつなぎあわせると、実際の本人とはちがった人ができあがることがあります。

加齢に伴ってサービスが増えるということ

私は、障がいのある人が利用する社会福祉法人を経営しています。理事長職と兼務で相談支援業務に就いています。先日、ある利用者のことについて複数のサービス提供事業所が集まって話をしました。その利用者は、加齢に伴い生活が大きく変わりました。従来のサービスだけでは支援が難しく、複数のサービスを使わなければ生活ができなくなりました。そこでサービスを提供するすべての事業所が集まって打合せを実施しました。

加齢に伴う生活の変化の一例です。知的な障がいのあるAさんは、グループホームに入居しながら、日中活動を提供する事業所を利用しています。最初は、一人で交通機関を使っていました。それが一人で移動することが危なくなり、ガイドヘルパーや車による送迎サービスを使うようになりました。また、グループホームの生活も、一人でお風呂や食事ができなくなり、グループホームに居ながらホームヘルパーを使い始めました。(グループホームの支援者は、つきっきりで支援ができないことがあります)さらに訪問看護も必要になりました。こうのようにしてサービスが増えていきます。

できないことばかりが強調されて伝わって行く

打合せの席でのことです。あとから追加されるサービスは、その利用者のできないことが明確になってから使い始めるサービスです。そのため、担当する事業所からの報告は、できない部分、そこに対してどんな支援をしているか、それでもできないことがある、そういう話が多くなり、強調される傾向にあります。

強調されると、打合せに参加をしている人は、そこばかりをメモします。また、それを自分の事業所に帰って引き継ぎます。すると、その人のことが他の支援者に伝わるときは、苦手なこと、できないことがたくさんある人になって伝わります。そこで、私は、その人の人生が垣間見えるような話をします。

人生が垣間見えるような話をする

私と長い付き合いの利用者がいます。最近、認知症に似た症状が出始めました。障がいのある人が高齢になったとき、障害福祉サービスを使うか高齢福祉サービスを使うか議論になります。その利用者は、年齢的に高齢福祉サービスの一歩手前の年齢です。制度のはざまでなおさら困るところです。

その利用者は、最近、昼夜逆転、徘徊、排せつの問題など出てきました。その打合せに集まった人たちはその道のプロです。いろいろな専門的アドバイスが出てきました。しかし、目をつむって聞いていると、自分の知っている利用者のイメージとはかけはなれた人になっていました。

最後に、一言だけ話をさせていただきました。その利用者は、急激に老化が進み、できないことが増え、支援者の目が離せなくなりました。しかし、昔から変わらないことがあります。それは、どんなときでも、何においても感謝の言葉を忘れないということです。

薬を手渡せば「ありがと。」と言います。コップに麦茶をそそぐと「ありがと。」と言います。靴を履くときに手を差し伸べると「ありがと。」と言います。そういうやり取りがあたりまえのご家族の中で育ったのだと思います。その人と一緒にいると、私はめちゃくちゃ親切な人になることができます。

支援には、その人の人生を垣間見る、そんな話題も必要です。

連続投稿1000日まで、あと18日。

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