印鑑は自分で押そう
障害福祉サービスの利用契約は、利用されるご本人と契約を結びます。ご本人の状況によりご家族が代理で契約を結ばざる得ないときもあります。しかし、ご本人のいない場所で契約を結ぶことはありません。
そのため、障害福祉サービスを利用されている人は、印鑑を押す機会が頻繁にあります。利用契約を結ぶときは契約書だけでなく、支援内容を記載した支援計画書に印鑑を押します。また、サービス利用期間中は、定期的にモニタリング(ふりかえり)があり、その都度、計画書に印鑑を押します。さらにサービスによっては利用したごとに印鑑を押さなければいけないこともあります。印鑑を押す機会が頻繁で大変です。しかし、印鑑は自分で押さなければいけないし、支援者は、利用者が自分で印鑑を押せるように支援をしなければいけません。しかし、これができません。
グループホームでの出来事です。ある事業所から、これから行くので(利用者の)印鑑を押して欲しいという電話がかかってきました。タイミングが悪く、その利用者はご自宅に帰っていて不在でした。その旨を伝えると先方は、ただ印鑑を1ヶ所押していただくだけなのでお手間を取らせません、と粘ります。理事長でも、勝手に利用者の印鑑を押す権限はありません。
日常で印鑑を押すという行為が軽んじられています。事業者に印鑑を押してくれと言われたときは、必ず利用者本人を呼ぶようにしています。すると先方は「わざわざ来ていただかなくても印鑑だけもらえれば」と言います。おまけに「いつもは職員さんが押していますよ」と言われ、ショックを受けます。
印鑑が100円ショップで売られるようになり、印鑑の持つ意味が薄れてしまいました。大事なことは印鑑を押す目的を利用者と一緒に考えることです。
障害福祉サービスを提供する事業者には、人権に関する研修が義務付けられています。「押印」という行為についても人権の一つだということを考えていかなければいけません。