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「危ないから…」vs「一人がいいです」

利用者と支援者の外出を見ていると、鬼ごっこになっているときがあります。また反対に、がっちり手を握られて密着しているときもあります。

私は、障がいのある人が利用する事業所を経営しています。私の法人の事業所も、活動の一つとして利用者と一緒に買物に行ったり、一般交通機関を使って外出をします。また、利用者によっては、ガイドヘルパーを使って自宅と事業所の間を行き来する人がいます。

ガイドヘルパーと一緒に帰る

私は、利用者が帰られるとき、玄関に出て見送ります。玄関ではガイドヘルパーが待っています。なじみのガイドヘルパーを見つけると自分からガイドヘルパーにあいさつに行く利用者がいます。反対に、ガイドヘルパーが待っていても、かまわずダッシュで帰る利用者もいます。そんなときガイドヘルパーは、あわてて走って追いかけます。

別の利用者とガイドヘルパーのペアは、しっかり手をつなぎ密着しています。手をつないで帰る利用者とガイドヘルパーの中には、利用者にガンガン引っ張られているガイドヘルパーもいます。

ガイドヘルパーは、大変な仕事です。

支援者も悩んでいます

私の法人の支援者に聞くと、外出時、どこまで支援をすれば良いのか迷うと言います。利用者に待ってもらうのに、どの段階でどんな言葉をかけるのがいいのか、また成人の利用者と歩くのに手をつないで歩くことがよいのか悩んでいます。

支援者は、万が一事故が起きたらたいへん、安全を第一に考えて支援をします。そのため利用者を規制する場面が増えます。しかし、利用者からすれば、この道はよく知った道で大丈夫、自分は自分のペースで歩きたい、そう思っていることがあります。

「心理面の目標」で考える

支援者から「外活動をしていると注意ばかりが増えて、利用者の顔が曇ってしまいました」という相談がありました。そのとき、私が思い出したのは、アドラー心理学を基本とする子育てにおける親の育成プログラム、パセージの心理面の目標です。パセージでは、自分のかかわりで相手がどう思ったか、それを常に確認します。そのときの指標が「心理面の目標」です。

心理面の目標
1)私は能力がある
2)人々は私の仲間だ
※野田俊作「パッセージ」

支援者よりも早く駆け出して行ってしまう利用者に対して「走ったら危ないでしょう」とか「ちょっと待ちなさい」、「ひとりで行かないでください」と繰り返していると、利用者は、能力を否定されたと思います。また、ダメ出しばかりする支援者とは仲間になりたくないと思います。

安全と利用者の思いの両方を考えて…

私は、利用者において行かれそうになると、お願いをします。
「ごめんなさい、髙橋さんを、おいて行かないで…」
「ごめんなさい、髙橋さんは、そんなに速く歩けない…」
ときどき、利用者には「おじいさん?」と聞かれます。

福祉サービスにおいて「安全」は絶対です。しかし、そこばかりを押し出すと利用者は窮屈になります。「安全」と「利用者の思い」、その両方がぶつかることなく、バランス良く支援をする対応を常に考えます。

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