食べたい物を好きなだけ食べる
お袋が特別養護老人ホームで生活をしています。幸い、職場から車で10分ほどの場所なので、ひんぱんに顔を出すことが出来ています。たいていは、おやつの差し入れです。
最近はインフルエンザの影響で、居室棟に入ることができません。ロビーで面会します。そこで二人であんパンを食べながらコーヒーを飲んでいました。私はブラック、お袋は昔からあるしっかり甘いコーヒーです。
その横を支援者が通り過ぎたときのことです。支援者がお袋に言いました。
髙橋さん、息子さん?いいわね~、あら、また甘いの、大丈夫?
お袋は苦虫をかみつぶしたような顔をしていました。
確かに、甘いものが大好きなお袋です。毎朝、コカ・コーラのミニ缶を飲むことを習慣にしています。さらにひんぱんに菓子パン(小さいやつ)とコーヒーです。(確かに甘いものばかりだ…)
この状況では、仕事では私も利用者さん同じようなことを言ってしまうかもしれません。食べ物の管理はとても難しいです。どこまでご本人の希望を尊重すれば良いのかわかりません。「自己決定」、「自己決定」と言われると、本人任せにしてしまうことがあります。でも、それは「放任」という虐待のひとつになりかねません。支援者である以上、健康を害するということをわかっていながら放置することはできません。
お袋は、親父が死ぬときに食べたいものを自由に食べさせてあげられなかったことをとても後悔しています。親父は入院中にこっそり病院を抜け出しました。バスに乗って駅まで行き、てんぷらを食べてきました。あとで、親父もお袋も看護師さんに注意されたと聞いています。その後、親父は好きなものを食べることなく亡くなりました。
歳をとって、自由に活動ができなくなると、楽しみは食べ物だけになります。でも残念ながら施設の食事はその欲望を満たすことはありません。それは目的が「健康的」であるからです。
まだしばらく、命の長さと自由に生きるということを天秤にかけながら暮らす日々が続きます。
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