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〔所属〕楽(らく)な場所と楽しい場所の違い

「Aさん(利用者)は、一人でいる方が好きだから、自閉症だからね」
中堅職員による新人職員への引継ぎ場面での音羽です。この引継ぎは間違えています。

Aさんは自閉症と診断されています。一人ですごしている場面がたくさんあります。にぎやかな集団に入ると大きな声を出したり、泣いたり、自分のことを叩いたりすることがあります。大きな騒がしい集団は苦手です。でも一人でいることが好きで、それが楽しいわけではありません。

Aさんは、一人でいる方が楽(らく)なだけです。

最近は自閉症の人のことがテレビドラマになった影響もあり、自閉症の人は一般的に対人関係が苦手だという認識が広まっています。しかし、対人関係が苦手な理由はひとそれぞれ異なります。Aさんは予測が苦手です。自分の周りの人がどのような動きをするのか、その集団がどのような動きをするのかその予測が苦手です。だからどうしていいのかわからなくなってしまいます。その結果、大きな声を出したり、自分を叩いたり泣いたりしてしまいます。

Aさんは、いつも一人でいたいわけではありません。いつも自分が入れる集団を求めています。一人で遊んでいるときも、チラッと周囲を見ます。自分を受け入れてくれる集団を探しています。私たちはその瞬間をキャッチしなければいけません。

Aさんは一人が好き、そう決めつけてしまったときからAさんの入れる集団はなくなってしまいます。アドラー心理学を学び、所属の大切さを知りました。人はさまざまな方法で集団に所属しようとします。例えば、Aさんのように集団の中で大きな声を出したり、自傷行為をしてしまうというのは、この場から逃れたいという意思表示です。しかし、そこで終わりにしてはいけません。正しくは、この集団は私には適さない他の集団に所属したい、というメッセージです。

利用者が安心してすごすことができる場所や活躍できる場所を探す手伝いは大事な支援の一つです。

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