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都政新報(2021年11月5日号)に寄稿しました (「聴く」力  人を生かし、人を動かす)


主に都内の自治体向けに発行されている、「都政新報」(株式会社都政新報社 発行)の11月5日日号に、『「聴く」力  人を生かし、人を動かす』というタイトルで寄稿させていただきました。

都政新報社様のご好意により、記事掲載の説明を付した上での寄稿文掲載の許可をいただきましたので、こちらにも載せておきます。

「聴く」ことの大切さや、この力の持つ大きさについて、私自身が感じたことを書いています。

参考にしていただければ幸いです。



聴くことって学んでない!


聴くことって、こんなに難しくて疲れるものなのか…。

元々人を育てることが好きで、職場でも窓口や訪問先、部下や同僚の話を毎日聴き続けながら人と関わってきたはずの私は、コーチングを学び始めたときに冷や汗をかくほどの衝撃を受けました。

このとき私は、「そうか、聴くことって今までちゃんと学んだことがなかったんだ」という事実に気づかされました。

仕事をしていると、他者の話を聴く場面は毎日、そして何度も訪れます。

でも、私たちは聴くことを学んできていない。もしかして、ここには大きな損失があるのではないだろうか…。

コーチングという一つの聴く技術を学んだことで、私は自分の仕事力が格段に上がったことを実感することができました。

「聴く」には、大きな、そして大切な力があるのです。


聴くが持つ力


 私が聴くことに強い興味を持つようになったのは、『人を動かす』(D・カーネギー著)に出会ったことがきっかけでした。

「まずあなたが相手に関心を持たないとすれば、どうして、相手があなたに関心を持つ道理があろうか?」や、

「話し上手になりたければ、聞き上手になることだ」という言葉を目にしながら、

自分が日々窓口や訪問先、職場内で繰り返している「聴く」という行為には、実はもっともっと大きな可能性があるのではないかと気づいたのです。

素早く要件を把握するためや、的確な指示や提案、解決策を伝える前提で聴くこと。これらは必要に迫られながら我流で身に付けてきたものがあります。

でも、そこに「人の心を動かし、人の行動に変化を起こす」ほどの力を生み出せていたかといえば、ノーでした。


聴くことには大きな力があります。

聴くことに長けてくると、相手からの強固な信頼を得ることができ、お互いが同じ視点で物事を見ているかを確認し、調整することもできるようになります。

聴くことが承認となって相手のモチベーションを上げることもでき、自発的な行動を促すこともできるようになってきます。

そして、相手の言葉を受け取ることによって、自分自身が1人では気づけなかったことを知り、お互いの知恵や知識をどんどんつなぎ合わせていくことができるようにもなるのです。


ただ一方的に黙って聴くだけでなく、ましてやほとんど聴かずに自論で打ち返してしまうのでもなく、相手の言葉に興味を持って能動的に聴いていく。

そこには人を生かす、大きな力があるのです。



「わかったつもり」が一番恐い

 聴くことと対極にあるものとは、「わかったつもり」と言えるかも知れません。

「きっとこうにちがいない」「おそらくこうだろう」と、しっかり聴かないまま「わかったつもり」になってしまうことは、とても恐いことです。

人は理解されることに喜びを感じる反面、決めつけられることには不快感を覚えます。

また、決めつけられてしまうことで不信感や諦めが生まれ、相談もなくなり、すれ違いが常態化してしまいます。

会話が減ることによって、必要な情報も共有されなくなってしまうのです。


極端に聴けない人というのは少ないと思いますが、それでも多くの人は「わかったつもり」のままにしていたり、「わかったつもり」で指示したりアドバイスしたりしていることがあるのではないでしょうか。



仲間のことを聴く 

スケジュールに追われ、締め切りに追われていると、つい仲間との対話を減らしてしまいます。

「私が忙しいって、見ていればわかるでしょ!」

「忙しいんだから、自分で考えて動いてよ!」なんて、

仲間なんだからわかってほしい、わかってくれて当然という態度が出てしまうこともあるでしょう。


でも、仕事を創り、動かすのは「人」です。

一緒に仕事をする仲間のことを大切にしなかったら、良い仕事も良い職場環境も手には入りません。

仲間の言葉やその背景にある気持ち、価値観、こだわり…。

仲間にきちんと正対してこれらを聴くことも、忘れてはならない大事な仕事です。


自治体の仕事には正解が容易に見いだせない課題が山積しています。

与えられた作業を素早くこなすだけでなく、仲間と協力し合って知恵を出し合い、一緒に考えながら、仕事を未来へとつなげていかなければなりません。


お互いが「わかったつもり」のまま、すれ違ったままに日々を過ごすのではなく、きちんと理解し合い、協力し合って仕事を創り上げていく。

そのために仲間のことを「聴く」という行為を、決しておろそかにしない覚悟が必要なのです。



未来に向けた話をしよう

自治体職員の日常には、「聴く」があふれています。

だからこそ、聴く力を身に付けていきましょう。能動的に聴き、これを成果につなげていきましょう。

「聴く」という行為には、想像以上の集中力と好奇心が必要です。簡単なものではないですが、人の気持ちを前へと向かわせる大きな力があります。


追われる日常から、考え創り出す日常へ。

その一歩を踏み出す力が「聴く」にはあるのです。





【出版情報】
公務員の方からも、そして公務員ではない方からも、「役に立つ」「大事なことがわかりやすく書かれている」といった嬉しい反響をいただいています。
組織の中で、チームの中で自分の強みを磨いていきましょう。

『自分らしさを見つけて伸ばす 公務員の「強み」の活かし方』(学陽書房)

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