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「コーヒー嫌いのスタバ好き」が席巻するこれからの日本茶マーケット

やっと夏になり、毎日晴れて気持ちのいい日々が続いていますが、今日はお茶の未来について少し考えていることを書き記しておこうと思います。

これから新規でお茶に参入しようと思っている人、お茶カフェを立ち上げようと思っている人に注目いただきたいnoteです。業界人、教養として日本茶、カフェなどのマーケットを理解したい方にもおすすめです。

なぜ書こうと思ったのか?

最近よく話題になっている「綾鷹カフェ」大ブームでびっくりしていますが、時代背景を踏まえると納得ができます。

今までお茶は清涼飲料水止渇財(=水と同じ喉の渇きを潤す財)として広まってきたものの、ついに時代の変化とともにお茶の捉え方にも変化が起きてきました。嗜好的な意味合いで、カフェ文脈でお茶が語られる機会が極端に増えています。今回は綾鷹×猿田彦×sioのコラボ、カフェの文脈で丁寧にコミュニケーションをとると、お茶を好むユーザーだけではなく、社会全体の層を獲得できるのだという実例を作った、とても良い先行例として言えるプロダクトであると思っています。

またコカコーラ社の綾鷹カフェに追随する形で、サントリー社が出した抹茶ラテは「クラフトボス 抹茶ラテ」こちらもカフェ/コーヒーの文脈で消費される商品ですが、なぜ伊右衛門ではなくクラフトボスのブランドで発売したのか?と問われると以下の回答を公式で発表しています。

「抹茶ラテという飲料としてのニーズから開発に入ったのではなく『クラフトボス』の『現代の働く人を快適にする新しい相棒』として休憩時間にほっと一息つける『憩い』のひとときを提供するというコンセプトから抹茶ラテの開発に至ったため」

既存のお茶をお茶として販売するマーケットではなく、心地よい体験を売るためにそのブランドイメージがつくブランドから発売したと言うことですが、止渇財として機能していたお茶がプロダクトとしての価値を拡張し、少しずつ嗜好性が上がってきています。機能的価値よりも、情緒的価値を追う、人の時や体験を持った体験売りのプロダクトへの変化です。

コカコーラ社のインタビューでも近年の飲料のカテゴリーの変化について述べられています。

飲料のカテゴリーではなく、その瞬間のモチベーションによってその時のニーズを満たしてくれる製品を複数カテゴリーの中から選び、飲みまわる傾向が強まっている。日本コカ・コーラは、その代表的なニーズを嗜好性、健康感、止渇性と定義した。そして、お茶カテゴリーは、この3つのニーズを緑茶や紅茶など異なるセグメントで満たせる数少ない飲料カテゴリーだという。

「嗜好性、健康感、止渇性」という3種類の性格があるお茶というプロダクトをそれぞれの方向性に拡張していこうと奮闘しています。その1番の「嗜好性」が今回取り上げている体験/カフェ主導のお茶のマーケットです。

タピオカが盛り上がった理由

2019-2020年にかけて、みなさんご存知の通りタピオカは大きなバブルを迎えていました。その要因は何であったのか?成長を支えていた本格お茶チェーンGONGCHAの葛目社長(当時)は以下の発言をしています。

「スターバックスは上陸当初こそ“シアトル系”などと言われましたが、今はスタバ自体がスタイルになっていますね。コーヒーが好きな人というよりは、ミルクたっぷりのコーヒー味の飲み物とか、空間や雰囲気が好きでスタバに行く。いわばコーヒー嫌いのスタバ好きがいるんです。そのなかにはお茶好きな人もいるだろうし、その人たちの選択肢の1つになれればと思いました」(葛目氏

タピオカバブルは「コーヒー嫌いのスタバ好き」を社会がついに発見し、許容できたブームだったのではないかと考えています。最近ではスタバに行ってゆずシトラスティーやほうじ茶ラテなどを飲む方々も増えているのではないでしょうか?まさにそういった層がごっそり鞍替えし需要が一気に発生したのではないか?という仮説を立てています。

また、タピオカについての個人的な感想は「#お茶好き」の「#丁寧な暮らし」文脈での相関が面白いなと思っています。お茶を好きなことで、丁寧に人生を生きていることの象徴になる、そのお茶のファッション化は、切り口は異なるものの世界中で同時に起きているトレンドのように感じます。

米国では「お茶を飲んでる人はヘルシーで健康に気を遣っている」という文脈で#お茶好きが伸びています。

朝のセブンコーヒー離れとウェルネス

コロナによる緊急事態宣言が続き、ウェルネス、ウェルビーイングという言葉がSDG'sなどと同じく社会全体に認知されてきたタイミングかと思います。睡眠などのサービスも数多く開発され、人々の健康、生き方がととのってきている中で、現状コーヒーが現代生活における最適な飲料なのかと言われればそれは違うと言えるくらいに一気に時代が変化しているのだろうと思います。酔い潰れた次の日の朝、早く起きてセブンによりコーヒーを飲んで仕事を始めるのが一般的だった時代から、夜はゆっくり寝て、朝気持ちよく起き、リモートで仕事を始める時代において、最適な飲料は何なのか?その答えはもう皆さん見えているはずです。(コーヒーを批判しているわけでは全くないので、そこはご注意ください。僕もほぼ毎日コーヒー飲んでます笑)

スタバもお茶ブランドTEAVANAを本体に吸収

TEAVANAは全米でチェーン展開をしてきた紅茶専門店。2012年にスターバックスが6億2000万ドルで買収したことで大きく注目されたものの、2018年には379店舗を全て撤退、スターバックスブランドへ吸収させています。この理由にモール内への出店を進めていたTEAVANA店舗の不採算化というふうに言われているものの、消費者動向の変化があったからではないかと考えています。
この撤退に対する仮説は「消費者はお茶屋にお茶を飲みに行くのではなく、体験を求めにカフェに行き、そこでお茶を飲む」という風に体験主導での購買の意思決定がされているように思っています。体験主導へのシフトをうまくやってのけたのがいまのコーヒー主導で出来上がったカフェ業態であり、それにお茶は乗り遅れておりました。プロダクト売りから抜けられなかったのです。

スターバックスのお茶として再独立

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日本ではTEAVANAブランドはスターバックスブランドへ統合されたのち、再独立をしています。カフェに体験を求めていく消費者に対して、お茶をソリューションとして提供する店舗で、まさに時代を象徴するような展開です。ちなみに、このTEAVANA独立の前に中目黒のスターバックスロースタリーで、お茶専門家ブースが2階に用意され、数多くの実験をしていたのも意外でした。4階のイベントスペースでは時々茶業者を巻き込んだイベント等も行っており、カフェでの体験にお茶を入れ込むことに注力されていたのではないかとお察しします。

これからのお茶の売り方

ペットボトル大手メーカーも動いているように、これからは体験やシーン主導で販売することが求められます。スターバックスがコーヒーを使ってサードプレイスを創造したように、私たちはお茶で心地よいひと時を届けることをしなくてはなりません。もしくは、心地よいひと時を演出する一プレイヤーとしてお茶を社会に浸透させていかなければなりません。

チルをコンセプトとしたコワーキングスペース、シーシャ屋、スターバックスなど、すでに既存の心地よいイメージがついた空間には相性が良いはずなので、そこに向かって営業をすべきだと思いますし、皆さんが思っているよりもずっとずっとカフェにおいてお茶が頼まれる時代が来ています。「コーヒー嫌いのスタバ好き」は社会全体のアルコール離れと同じくらいの勢いで、社会全体でコーヒーからお茶へのシフトを促進し、それがやっと形になっています。

日本文化、お茶は日本の宝だ!なんて言葉と共に抽象的な議論がされ、具体的な戦略戦術を実行しなかった、いまの日本茶マーケット。これからの変化は嗜好性への挑戦と、カフェの様式におけるソリューションとしてのお茶の姿なのではないでしょうか。

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