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秋山翔吾が3割打つためには?-低Hard%打者との比較

5月になり、秋山翔吾選手がメジャーに戻ってきました。昨年終盤の成績を見れば、今季の飛躍に期待していた人も多いでしょう。しかし5月21日時点で打率.214と、スロースタートのように見えます。

そこで今回は秋山選手と同様に低いハードヒット率ながら、高打率を残している選手の特徴を分析します。そして、秋山選手が渡米時から目標としている規定3割を打つために何が必要なのか考察します。


1. Hard%とは?

ハードヒットとは「強い打球」を意味する用語で、95mph以上の打球と定義されています。ハードヒットの打球はヒットになる確率が高くなり、2018年のデータでは95mph以上の打球がヒットになる確率は.524、95mph未満では.219と大きな差が開いています。したがってHard%(ハードヒット率)とは、インプレーとなった打球のうち95mph以上である打球の割合を指しています。


2. Hard%が低い選手の分類

Hard%が30%以下ながら規定3割を打った選手は、過去三年間で8名います。本稿ではその8名を三つのタイプに分類しました。

① 俊足積極型:ニューマン2019(PIT)、メリフィールド2019(KC)、フレッチャー2020(LAA)、タピア2020(COL)
最も多かったのが俊足積極型です。このタイプの特徴は、全ての選手の四球率(BB%)が平均以下となっている点です。また、足を生かすためメリフィールドを除いた三選手が50%以上のゴロ率(GB%)を記録しています。

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尚、フレッチャー(2020)のファーストストライクスイング率は9.6%でかなりの消極姿勢ですが、BB%はこの年の平均以下のため、積極型として扱っています。


② 積極型:ハンサー・アルベルト2019(BAL)、ブラックモン2020*(COL)
一方、2019年、当時オリオールズのハンサー・アルベルトは、俊足ではないものの積極打法で高打率を残しました。彼の特徴は三振が非常に少ない点です。219打数のうちわずか三振30個で、三振率(K%)はメジャー全体で三番目に低い数値でした。

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*2020年のブラックモン(.303)のHard%は29.7%でしたが、打球の最高初速は109.7mphと上位68%の数値でした。そのため「パワーがない好打者を分析する」という本記事の目的から外れるため、考察対象からは除外しています。


③ 選球型:アダム・フレイジャー2021(PIT)、マクニール2020(NYM)
最後に、好球必打の選球型です。このタイプの特徴は、高打率を残しつつ四球を選べることです。A. フレイジャーのファーストストライク・スイング率は30.1%と低い一方、マクニールは意外にも53.1%で、積極性を持ちながら四球を選ぶ能力があるようです。両者に共通するのは、三振率が極端に低い点です。

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3. 秋山が3割打つためには?

2020年の秋山選手を分類するならば、走力を持ちながら四球を選ぶ「俊足選球型」であると言えます。秋山選手のスプリント・スピードは秒速27.7ftで上位30%に含まれ、これはフレッチャーよりも高い走力です。また四球率は13.7%で、これもメジャー上位15%に含まれるほどの好成績でした。したがって、秋山選手は上記のいずれのタイプにも含まれない選手であることが分かります。

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では、秋山選手にはどのような変化が必要なのでしょうか?ここに二つの道筋を提示してみました。

① 俊足積極型として走力を生かす
先述のように、Hard%が30以下で規定3割を記録した中で、最も多かったのが俊足積極型です。したがって、このタイプを狙う事が一番の近道だと考えられます。四球を狙わず積極的にスイングすることで、秋山選手の走力を活かし、ヒットが増えるのではないでしょうか。

② 選球型としてコンタクト率を上げる
もう一つは、現在の待球姿勢を維持したまま打率を上げ、選球型として3割に乗せるルートです。そのためには二つの条件があります。

第一に、トップした打球を減らすことです。トップした打球とは、ボールの上っ面を叩いて高いバウンドとなった打球のことです。守備的処理もそれほど難しくなく、ポップフライに次いで二番目に悪い結果とされています。例えば、2021年A. フレイジャーのトップ率(Topped%)は23.0%、ポップフライ率(Under%)は33.1%でした。一方、2020年秋山選手のトップ率は45.5%、ポップフライ率は19%です。つまり、ボールの下をこすった打球が少ない代わりに、上側を叩いた打球が非常に多いことが分かります。したがってポップフライを恐れず、もう少しボールの下側を叩く意識を持つことで強いゴロの割合(Burner%)が増え、打率が向上するのではないでしょうか。

第二に、三振を減らすことです(この点が非常に難しいため、個人的には俊足積極型を勧めます)。選球型のA.フレイジャーとマクニールの三振率は10%~11%で、これは上位2%という非常に優秀な数値です。一方の秋山選手の三振率(18.6%)は平均以上ですが、飛びぬけて優秀な成績とは言えません。したがって、少なくともメジャー上位5%以内にまで三振率を低下させることが必要だと考えます。

4. おわりに

近年、打率があまり評価されない傾向にあります。実際、積極型のH. アルベルトは市場であまり評価されず、2021年シーズンも当初はマイナー契約でした。本稿では秋山選手の「規定3割」という目標を基準としていましたが、現在の四球を選びながら.2割後半程度の打率を維持するスタイルの方が、メジャーでは高評価を得られるでしょう。少なくとも昨年の.245では物足りないので、今後の巻き返しに期待したいですね。




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