『きみはだれかのどうでもいい人』伊藤朱里


あるできごとを代わるがわる四人の登場人物の視点で描く物語。それぞれの諦めと、怒りと、後悔とに、どれにもこれにも覚えがあってとにかく苦い。
読み終わるまでいったい何度読む手を止めて「つらい!」と口にしたことか。

立場が違うことで、ある人の何気なさげな行動におもいもよらない意味があったとわかったり、救いようのない後悔の発言がまわりには蚊ほども影響していなかったり。
ぼくは自家中毒を起こしがちなんだけれど、「そんなに深刻にならなくてもいいかもよ?」と「相対化」するためにもう一度読んでみたい、……とおもわなくもない。(でも重いんだよな、とにかく)

それぞれが人生の荒波を渡ろうと溺れかけながら足掻いていて、しかしタイトルのとおり誰もが誰にとっても「どうでもいい人」。
救いはないのだけれど、かえってそれが救いでもあるような重くて苦しい物語。

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