『medium 霊媒探偵 城塚翡翠』相沢沙呼

言われてみればカバー絵が『屍人荘の殺人』の人の手になるものだ。
(セーラー服の)スカーフを手に巻きつけた緑の目の黒髪女子。あざとさを感じる。(なおスカーフは書籍内、第3の殺人のモチーフ)

「このミステリーがすごい」で大賞を受賞した作品らしく、そして確かにこのプロットには騙された。よくできている。

霊媒を職業とする女の子が、無念を残して死んだ人のおもいを感知するその能力を役に立てるべく、(警察につてのある)推理小説作家と手をくんで謎解きをする──というのが大枠。

霊界と人の世界をつなぐ媒介(メディウム、霊媒)と、これを人の法の世界に媒介する小説家と、というタイトル2段構成。なにしろ言葉を持たない霊が示すのは断片的な材料。霊媒の翡翠が読みとった材料を組みあわせて警察を動かしうる推理とするのが小説家。起きてしまっている事件の状況証拠から筋道を逆向きに読みとる倒叙式推理。この断片の組みあわせかたが読ませる。

一方で各断章の間に差しはさまれる不穏な殺人事件。無欠のシリアルキラーが狙いを定めたのは翡翠。その死はあらかじめ1章の時点で本人も予見している。
殺人鬼と翡翠の暮らしが(そしてその死が)どのように交差するのか。

霊媒と探偵の二人三脚は、最後に探偵によるあざやかな倒叙の解決を見せる!
(ここから探偵が謎を解きますが、自分で考えなくてもよいですか? という確認が繰りかえし入る。僕は解けないのであっさり読みすすめて、へえ、ほお、ふうん!)

* * *

作品にカメラがからむ話が多いので写真部出身なのだろうか? とはおもっていたけれど、どうやらマジックの側らしい。授賞式でマジックを披露したこともあるのだとか。
そういえば『真夜中のサンドリオン』だったか、マジックをネタにして謎解きをするミステリーが最初だった記憶がある。

こうして振りかえると相沢沙呼は「マジック」、「カメラ」、「女性の服装の構造」、「サディスティックな女性とマゾヒスティックな男性ペア」、「ミステリ」というキーワードで作品を語れる気がする。

マジックは観客の注意を誘導して、マジシャンの見せたいものを劇的に演出する。相沢沙呼はミステリーという小説舞台でさまざまな小道具をつかってマジックを披露しているんだな、とおもうとストンと腑に落ちる。

* * *

いやしかし、ほんとうにこのミステリはすごかった。

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