遼短歌、夏、参
長い指俺の前髪かき分ける瞳の奥まで踏み入るように
立ちションを並んでしながら海風が触れ合う髪なぞって行った
ファスナーを長い指先下ろす音汗ばむ背中そっと震わせ
排水溝絡まり合ってヘドロと化すお前の癖毛俺の直毛
キスをしてつま先触れる親指の黄色い巻き爪愛おしくて
酷薄な鋭い視線花を見る一瞬優しくなるのを知ってる
初めから終わりの匂い漂わせふたりの足元蝉が死んでた
日焼け止め俺の手から奪い取り海に投げ捨て笑うお前の歯
潮風で網戸に張り付くカーテンがふたりの影を隠していた
熱帯夜せっせと働く虫たちがお前の落としたスイカバー舐めてる
マイスリー噛んで砕いたひとりの夜俺がなくともお前は眠れる
したたかに酔ったお前が聴きたがるカーペンターズ青春の輝き
優しさのホントの理由は知っている代替品はいくらもいると
喜んで男の足まで舐める俺好きにしろと友はまた消えて
冷ますには短すぎた梅雨の夜にとぐろを巻いてる何か感じてた
キッチンの照明の下得意げに刃物を握るお前が好きだ
最後にと抱かれたつもり深夜2時寝言に俺の名確かに呼んだ
月曜日その腕から逃げ出して朝日の家路の安堵感何度目
寄り掛かる寝顔眺めて思うのは小指の甘皮まで俺のものだと
もみくちゃの満員電車響く声誰でもよかったのは俺の方?
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