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10.津の国人

皆様いかがお過ごしでしょうか。
おしるこちゃんです。

穏やかな秋の季節はどこへ行ってしまったのでしょうか?もうもはやダウンジャケットの季節です。
こんな時期には、ぬっくぬくにしたお部屋の中で、布団にくるまりながら本を読むのが至福の時ですね。

とは言いつつも、相変わらず夏に読んでいた本の感想文を綴っていくのです。季節が移り変わっても変わらない怠惰がここに、、、

今回は、2度目の室生犀星作品でございます。
前にここに残した「性に眼覚める頃」とはひと味違う、切なくて美しいお話になります。

※相変わらず抽象的ですが、少々のネタバレを含むかもしれません。

「幸せのかたちはひとつではない」という励ましの言葉があります。この物語の主軸となる 筒井 という女性に多くの人がかけたくなる言葉でしょう。
ただこの言葉を受け取る側が感じること、それは
「ひとつではない幸せの中で、最も幸せなかたちを見つけたのに。」ではないでしょうか。
筒井の最初の暮らしは貧乏であったものの、愛する人と生きることの幸せがありました。
その幸せは、誰かに仕え、人として必要とされ、十分すぎる衣食住や優しさよりもかけがえのないものであったようです。
かけがえの無さを感じれば感じるほど、寂しさや罪悪感のようなものに向き合わざるおえない筒井の苦しさと、ただただ愛する人を想い続ける純粋さに胸を焼かれるような作品でした。

この作品で感じたこと、それは冒頭に述べた
「幸せのかたちはひとつではない」
という1文がいかに残酷であるかです。
果たして幸せとはそんなに流動的でいいのでしょうか。儚いからこそ美しいとは真意なのでしょうか。

「津国の人」は 本当に綺麗で、でもどこまでも残酷な話でした。
読み終わると、自分は 何のために恋に落ち、誰のために生き、何が幸せなのか?と頭を悩まざる追えなくなります。
そして何より、室生犀星がこの作品を通して表現したかったことを、私は読み取ることができているのでしょうか。そんな疑問を残して、感想を閉じたいと思います。


これからもっと寒くなるのでしょう。
皆様の日々が温もりに溢れますように。
相変わらず一貫性のない文章をお読み頂きありがとうございました。


文献: 室生犀星  『津の国人』
        百年文庫 24  「川」より

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