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未来の話をするために

こんにちは。rootの岸です。
SaaSアドカレ20日目を担当するはずが、遅れに遅れての提出となり恥ずかしい限りです…。
気を取り直して、今日はrootの中で時折話される「未来の話をしよう」という態度について、書き散らしてみようと思います。

さて皆さんは組織の中で「未来の話」がどれくらいできていますか?将来的にこういう状況を達成したいとか、この状態を脱したいとか、小さなことから大きなことまで色々とあると思います。

一方でこれは普段、なかなか優先度が上げられないトピックなんじゃないかと思います。すぐにお金を生み出してくれる議論ではないですし、取り止めのない結論に終わってしまうことも少なくはありません。
それに事業が大きくなってくると、経営と現場の間に距離がうまれてそういうコミュニケーションが取りづらくなってしまったり、業務量も加速度的に増えて足元の仕事に手一杯になってしまい、未来の話をすることそのものの意味や可能性が薄まっていってしまうように感じています。

「未来の話の量」という指標

先にもお話しした通り、rootではたびたび「未来の話ができているか」という問いがメンバーに投げかけられることがあります。そこには私たちが活動において実践と投資という思考の基盤を持っていることとつながりがあります。

なぜなら、実践を適切な形で進めていく上で、投資は欠かすことのできない要素ですが、さらにその投資をしていくために必要な要素の1つが「未来を分かり合えているか」という点だからです。
そして未来を描けていないと、そもそも投資をしようという話にもならないですし、その未来を解像度高く共有できていないことには、一方通行なやりとりになってしまいます。その帰結として生まれるのは、ものづくりが事業成長の後追いをする構造、という極めて大きな負債です。

もちろん話ばかりしても状況は前に進みません。ですが、未来の事業や組織の形が、この対話の総量によって支えられているかもしれないという仮説は、私にとって見過ごすことができないものです。

小さくはじめた未来の話

rootは基本的にはオーダーを受けて仕事をする形にはなりますが、その中で、業務改善を目的とした振り返りや、期待値のズレを認識するための1on1を積極的におこなっています。
そして、そうした話の中で「今の大きな課題感、直面している難しさ」について話されることもしばしばあります。それは顧客の採用活動に関する悩みだったり、組織的な目標設定に関する取り組みだったり様々です。そして、これを「そうなんですね!頑張ってください!」で終わらせないところから、未来の話は始められるのではないかと考えています。

例えば今私が携わっているプロジェクトの1つはクライアントの組織的な目標や体制づくりに関わるものなのですが、この話は別文脈での担当者との雑談の中で「最近、他でどんなことしてるんですか?」という話から始まったものでした。そのテーマのうちの1つ「自組織の長期的な計画を考えるTRYをしている」という話がきっかけとなっています。

この長計というのも、自分が関わっているプロダクトとはスコープの異なるものでしたが、そのプロダクトの母体たる組織について、同じテーブルの上で話すまたとないチャンスだ!と直感し、「ぜひ僕もアイデアを見てみたいです」とお願いしました。理屈というより、体が先に動いてたようにも思います。そして小さく対話と提案を重ねながら具体化を進め、関係するチーム全体に対して徐々に未来の議論の輪を広げていけていると感じています。またどこかで、このプロジェクトのお話ができることを願っています。

この例は「長期的な計画」というわかりやすいものでしたが、未来の話を具体化するためのTRYは様々な形で行うことができます。Cocodaさんと執筆した事例記事でも、未来に向けた話の具体化を進めた事例があります。

未来の話をするための予備動作

まだ形になっていないものの形を見出し、未来の解像度を上げる呼水となる。
私たちが普段の制作業務においておこなっていることを抽象的に表現すると、そういう言い方ができると思いますが、この「未来の話への呼水となること」は、原理的にはどのような抽象度でも同じことができるはずです。

とはいえ「未来の話への呼水になること」を予備動作なしでやるのはとても難しいものです。そこで、私が経験的に「これはやっておいた方が良いよな」と思うことについて、自分の振り返りも兼ねて、簡単にまとめてみたいと思います。

1にも2にもキャッチアップ

ビジネスや技術トレンドへの追随、業務領域・業界動向の情報収集など、一般的にインプットやキャッチアップと呼ばれることはやっておくのに越したことないと思いますが、普段の業務のためにやるという考え方だと、近視眼的な情報収集にとどまってしまう可能性があります。事業や組織のビジョン実現を願う人間の1人として、知っておくべきことには限りはないはずです。

例えば私自身も、関連するプロダクトを触るだけではなくて、対象業界のレポートやプレスリリースを読んでみたり、APIのドキュメントを読んでみたり、ドメイン専門家に無邪気に質問をぶつけてみたり、とりあえず調べて聞いてをやってきたように思いますが、その下地なしに、未来の話などできなかったと感じます。

いつの間にか制作や設計に視野を閉ざしてしまい、知ることを避けていないか、時折自分に問うてみるのが良いように思います。

能動的に相互理解の機会をつくる

身の回りにいる人は、一体何をみて、何を考えているのか。どんな価値観のもと、どんな期待と課題を抱えているのか。未来の話は、こうした文脈のすり合わせなしにできるものではありませんし、一朝一夕にその理解は起きません。一方で、そうした話が日々の業務的な会話の中で主となることも多くはありません。

能動的に対話の機会を作り、能動的に文脈を揃えにいく。そういう所作を積み重ねて、いつでも未来の話をしあえる状況を用意しておくのが理想系のように思います。例えばrootでは振り返りや1on1をするとお話ししましたが、これはそうした関係づくりの一環にもなっていると感じます。

自分の意見を用意しておく

未来の話とは逆説的ですが、自分から見えてきた景色を振り返って意味づけておくこと、もっと平たく言えば自分の意見を明らかにしておくことは、未来の話を建設的に進めるために必要だと思います。自分の意見がある程度持てた状態でなくては、未来の話の呼水はおろか、壁打ち相手にもなれないかもしれません。

過去の自分と事業の関わり方、事業のありよう、関係者の動向を整理し、本当にそれでいいのかどうかをまずは考えてみる。そうして状況に対する自分なりの意見を持っておくことで、未来の話は始めることができるはずです。少なくともチャンスが訪れれば、意見をまず出してみることができる。

ただしこの動機としては、デザインの価値を高めるみたいなものではなくて、「皆が願う未来に向けて足並みを揃え直す」という具合に広く構えておくのが良いと思います。

未来の話というのは、デザインに関係あるから、ないから、という次元の話にとどめるのはもったいない。この場において、あくまでデザインは手段にすぎない。みんなが叶えたい夢に向けて使える技術や態度の1つなんだと考えるのが、健全な気がします。

未来の話をしよう!

未来の話無くして良い投資は生まれず、良い投資なくして良い実践は生まれません。上に挙げたような下準備をしていれば、未来の話をする機会というのは自ずと訪れるはずです。

どれも小さな小さな工夫ですが、ものづくりに込めた本来の願いが、事業成長の後追いとならないようにできる最初の一歩となると信じています。

最後に宣伝になりますが、2024年1月19日(金)に4社のデザイン組織のリーダーを招聘し、未来の話をするイベントを行います。皆さんの考える未来との重なりを見出す機会にもつながるかもしれません。ぜひ奮ってご応募ください!

年始にもう1つ『「事業成長」を加速させるデザイナーとは?』というテーマで登壇もさせていただきます。クライアントワークという業態の中で、どうやってコミットを高めるかの方法の1つがこの「未来の話」だと思うのですが、そのほかのテーマについてもいろいろとお話しできればと思います。

それでは、2023年は大変お世話になりました。2024年も、皆さまがより良い未来に向かって羽ばたいていける年となることを願っております🎍

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