ミュージカル『グッド・イブニング・スクール』

PAT Company 旗揚げ公演

2020年12月17日 (木) ~ 20日 (日) 本多劇場にて、PAT Companyの旗揚げ公演となる ミュージカル『グッド・イブニング・スクール』が公演されました。

PAT Companyとは……
原田優一 オレノグラフィティ 小柳心 鯨井康介 の4人が、2020年6月にパッと集まった事から結成された演劇プロジェクトです。


この4人が、舞台が出来るまでの様子を配信で伝えながら、時に視聴者の意見を参考にしつつ完成させたのが、PAT Company の旗揚げ公演となる   ミュージカル『グッド・イブニング・スクール』 です。

物語のあらすじはこちら……

『生まれてから20年頑張れば、その後の80年順風満帆に過ごせる』    父からの厳格な教えを受けて育った若林(横田龍儀)は、父の教えの通り二十歳まで必死に生きた。
そして父と同じ職である教師を目指し、名門進学校の教師となった。
そこで出会った同僚の真田(黒沢ともよ)に淡い恋心を抱き、まさに順風満帆の第一歩を踏み出したのだが、ひとつだけ問題点が。        「生徒が全員、年上だったのです。」                 PAT Company 公式HPより引用

そして、こちらがメインビジュアルです!


パッと集まった4人に、パッと舞い込んできた旗揚げ公演。
こんなご時世だし、皆が笑えるミュージカルがいいね。と決まったのは 【夜間定時制高校】を舞台としたミュージカル。

脚本・音楽も全てオリジナル。
それを、集まって数ヵ月の4人組が圧倒的に少ない準備期間の間、他の現場を抱えつつ本当に公演できるかと、内心勝手に心配しておりましたが……


滅茶苦茶良かったんです!!!!


皆さんを信じていない訳ではなかったんですが、コロナ禍で行動が制限されている中、圧倒的に準備時間の無い中でのミュージカル。
どんなモノが出来上がるのかと思っていましたが、実力派のミュージカル役者と、スポンジの様に全てを吸収していく若手俳優。
そして何より、脚本と音楽、演出の良さ!!!


オレノグラフィティさんが【ソシャゲのガチャを回すくらいの気持ちで見に来てください】と仰っていましたが、今回の『グッド・イブニング・スクール』はまさにそれで、パッと見られてパッと笑える。
けれど、主人公の若林先生の【親に認めてほしい】【自分は落ちこぼれなんかじゃないと信じたい】という気持ちがどこか観客とリンクする、素敵な舞台でした。

本当に、キャラが濃くてどの歌もつい口ずさんでしまう位いいので、感激した後はきっと歌が頭の中を駆け回り、推しキャラが出来ていること間違いなしだと思います!


愛が溢れすぎているので、個人個人の感想も書いていきたいと思います。

主役である新任教師を演じたのは、横田龍儀さん。
生徒が全員年上、年齢も性別もバラバラなクラスの担任という大変な役をフレッシュな力で見事に演じていらっしゃいました。

今回横田さんが演じられた若林先生には……
・新任教師である自分が、年上の生徒達とどう接していくか
・父親に認められたいという感情とどう付き合っていくか
という、2点が求められていたと思うのですが……

完璧でした!!!!

特に【父親に認められたい】という部分の表現が素晴らしいんです。
今回は父親でしたが【誰かに認められたい】という欲求は、誰しもが持っている感情です。
その感情をどう観客と共有し、共感させ、消化していくかは、とても難しい表現だったかと思いますが、思わず若林先生に感情移入せずにはいられませんでした。

感情の起伏の大きさとセリフ量に、一日二公演もやって大丈夫かな?思いましたが、心配してしまう位必死に舞台上で生きている若林先生の姿が、観客を引き付けた理由なんだと思います。
認められたいという本心と、父親の言う通りにしなくてはいけないという強迫観念。
全部を持っている人への妬みと、持っていない自分への焦り。

見ている側が一度は感じたことのある人間の弱くて脆い部分をありのまま表している姿がとても印象的で素敵でした。


続いては、中井智彦さん演じる鈴木源の話を……

まず最初に、発表されたビジュアルとの違いに驚きました。

どうして最初のビジュアルからこうなった!と、初めて舞台上の姿を拝見したときは驚きを隠せなかったのですが、板の上ではびっくりする程お似合で違和感の無い所が、中井さんの役者としてのスキルの高さがなせる技なのでしょう。

源さんは、2歳の子を持つお父さんなんですが、父親らしく、作中で何かと若林先生の事を気に掛けるシーンが多いんですが、それがまた最高なんです……!

普段源さんは若林先生の事を「若」と呼ぶのですが、呼びかける言葉が凄く自然で、あたたかく、うっかりすると泣いてしまいそうになるくらいです。
名前を呼んでいるだけなのに、その「若」の2文字に感情が全部乗っているんですよ。好き。


私は、このミュージカルの副題を「父と子」だと解釈しているのですが、若林が理想としていたのはもしかしたら源さんと息子さんのような関係だったのかもしれないなと思える位、素敵なお父さんでした。

そして、そんな風に思わせてくれる位の中井さんは本当にすごいんです。
セリフ量。存在感。影響力。すべてが圧倒的!!!
中井さんがいらっしゃったから、このミュージカルはいい舞台になったんだろうなぁと思います。本当に最高でした!



次は、ヒロイン。
皆が通う学校の全日制、特進クラスの担任。
真田奈々を演じるのは、黒沢ともよさんです。


生徒の事を思って少し弱ってしまうところ。若林先生のちょっと不思議な漢字談義に付き合ってくれる所。本当に育ちのいい、生徒にとって先生なんだなぁ~と思っていたら……

これです。(Twitter動画の1:35秒参照)
いやぁ。びっくりしました。
ビジュアルは勿論の事、何にやられたかといえば、このシーンでの『声色の表現力の素晴らしさ』です。
同じメロディー。同じ歌詞なのに、声色の表現方法ひとつでここまで変わるのかと、演技の奥深さを突き付けられた感じがしました。

時に、あざとい位に可愛いく。
時に、不安をあおるかのように力強く。

芸歴を重ねていらっしゃるとはいえ、座組で最年少。
ミュージカル経験が少ないと仰っていた画面に「えっ、嘘!」と呟いてしまう位の素晴らしさです。
千秋楽を迎えてしばらく時間が経っていますが、黒沢さんの歌う歌がずっと頭に残って離れない。そんな素敵な演技でした。

多彩で様々なお仕事をされているのは重々承知なのですが、もっともっとミュージカルで見てみたいというワクワク感が凄いです!!!!


続いてなんですが……
まず、ビジュアルどーん。
こちら(右側)が、谷口ゆうなさんが演じられていた福ちゃん(福巻 久美)です。


私は福ちゃんという人物を知らないはずなのですが、谷口さんが演じられている福ちゃんは、絶対にこの地球上のどこかに実在する福ちゃんです。
間違いなく生きてます。
その位、最高で完璧な福ちゃんでした。

どれくらい完璧かというと、細かすぎて伝わらないモノマネに『パチンコがやめられない女』という名前で出ていてもおかしくない。そんなレベルです。

圧倒的な歌唱力を持つ素敵な女優様だというのは重々存じていたはずなのですが、コミカルな動きがここまで上手いのは反則なんじゃないでしょうか?
オレノさん演じるミキちゃんとのコンビが最高すぎて、福ちゃんミキちゃんのスピンオフ公演を!!!を熱望せずにはいられません。

パチンコややめられなくて怪獣になってしまう所を【ス●ッカーズのCM状態】と勝手に呼ばせていただいているのですが、あれだけで1時間見れます。
最高です!!!!

そして、谷口さんといえばそう。
圧倒的な歌唱力です!!!!!!
この圧倒的な歌唱力を持って、満を持して歌っていただく歌が「パチンコ is my life」ですよ?


パチンコ is my life???


最初に歌詞を聞いた時には、大爆笑でした!!!
今回は配信での参加だったのですが、これほど劇場でなくてよかったと思ったことはありません。
大爆笑です!
いや、逆にこれを笑わずにいられる方法があったら教えて欲しい。
あと、これを谷口さんに歌わせたいって決めた関係各所の方々にはお礼申し上げたい!!!
全体的に最高。最高でした!!!


そして、そんな福ちゃんとコンビを組んでいたのがオレノグラフィティさん演じるミキちゃん(左側)です。


なんで最初のビジュアルからこうなった?パート2です。
稽古映像がYouTubeにアップされているときから、スカート?と、薄々疑問には思っていたのですが……

女子!!!!!!!

しかも、名前が明かされているのは「ミキ」だけ。
謎多き女子ですが、そのバックボーンには全く触れないという贅沢さ。
これだけキャラが濃い人が沢山いるのに、そこに触れないでもガンガン進行できるんですよ。びっくりです。


ですがね。一言だけ。


とても女子でした……!


仕草がとても女子。
特に、足の運び方が女子です。素敵です。

前職は、単位制の高校の子と話す機会が多かったのですが、パジャパ~とはしゃぐ姿や福ちゃんがパチンコに行くのを止めるシーンに、その子達の事を思い出しました。
あの系統の女子。毎年、間違いなく居ます。好き。


そして、パトカン社員的には、パジャパの説明で崖とヤギと猫が出てきたところが嬉しかったと同時に、もれなく腹筋が崩壊しましたが……

あれ、日替わりなんですね!!!!

小柳さんが配信で「オレノさん寝てない筈なのに、日替わりをきっちり用意してくる」とおっしゃっていましたが、あれだけのクオリティーが日替わり。
本当にありがとうございます!!!!


そして、オレノグラフィティさんといえば音楽ですよね。
これに関しては本当に長くなるので、一言だけ。


天才的だった……!


いや。社歌がドンピシャで、ついつい気が付くと口ずさんでしまっているので、素敵な音楽を作られるんだろうな。という期待しかなかったのですが……

全部最高ってどういう事ですか?

全部歌える。最高です……
というか、宣伝動画が出た時点で「蛙の子は鯨なの♪」口ずさんでいました。

アンケートにも書かせていただきましたが、公式様におかれましては、是非サントラの販売。もしくは、どこかの媒体での配信のご検討をお願いいたします。

そして、岡島 悟という、いかにもいかにもなキャラを演じられた小柳さん。
いや、本当に最初から最後まで、キャラが強すぎて……!(写真後列右から2番目)

タイムリープ。
つまり、時間を移動して平和を守っていると自称しているのですが、どこからどこまでが妄想で、どこからどこまでが本当の事なのか、最初から最後まで謎です。
これは厨二設定だな?と思っていたんですが、若林先生のお父様が亡くなる電話に出るのを止めるのは、本当に未来が見えていたからなのか?とも思ってみたり。

そもそも未来警察だとしたら、何故そんな人が高卒の資格を取りに来ようとしたのか。一番謎でしたが、一番腹筋を崩壊してくださったキャラクターでした。


本当にね。よくわからないけど笑いながら見れるって素敵だと思うんですよ。
意味が分からないけど、パッとみてパッと笑える。ある意味PAT Companyの象徴みたいなキャラクターでした。


そして、小柳さんと言えば脚本ですよね。
本当に、びっくりです。


何故この短期間にこんな脚本が書けるのか……!!!

パトカンは全体的にスピード感がおかしいのですが、本当にこの短い間でこれだけの脚本を(刀ミュの本番もあるのに)書いてしまうのが凄すぎる。

次回作も、どうかよろしくお願いいしたします!!!


最年長なのに、きっちり学生服。それが、コング桑田さん演じる山田 宗一郎です。
いやもう、ビジュアルからして最高です!!!

パトカンの配信にゲストにいらしてくださった時から、物凄くおちゃめで素敵な方なんだとは思っていましたが、いやぁ。役もご本人も素敵なおじい様でした!
世の中のシニア世代の皆様が全員山田さんみたいな人なら、世の中はさぞ明るいんだろうなぁと思いながら見ていたのですが……

「人はいつ死ぬかわからない」「会社を大きくして、成功するだけが幸せなのか」という、ともすれば思い題材を若い若林先生にポップに諭していくところ。
よくわからない事を言っている岡島さんを受け止める器のでかさ。嫌味なく表現して下さったコングさんの素晴らしさ。最高でした!


特に、今回は若い役が多かったので、コングさんの役柄は少し間違えれば浮きがちになってしまう所ですが、若者言葉を使いこなすという所だけではない、何か若者に負けない大きなパワーのせいなんですかね?全く違和感がない所か、可愛すぎて素敵でした!

特に千秋楽でミキちゃんと福ちゃんが日替わりとして歌った新曲に「俺も歌いたい」と素直に反応する所なんかは、可愛さの極みでした……!


さて、ここまで個人の感想を述べさせていただきましたが、締めはプロデューサーでもあり、用務員役をやられていた鯨井康介さんと、演出をされていた原田優一さんです。
(集合写真後方一番左が原田さん。左から2番目が鯨井さん)

グッド・イブニング・スクールの公演直前まで他の舞台に出演されていた鯨井さん。
出演されると聞いた時は「マジで?」と、割と本気で思いましたが……

まさか、鯨井用務員による、幕間オンステージが開催されるとは思ってもいませんでした……!

このミュージカルは、一部の最後。
大量の紙が舞台上にまかれるのですが、それを用務員として15分の幕間の間お客さんに見守られながら1人で片付ける鯨井用務員。

いや。びっくりです。

普通なら幕を下ろして、モップなどで複数人で片付ける所を、そのまま見せるというスタイル!
しかも、そのまま2幕の開演アナウンスまで、演技の延長で自然としてしまうという演出。

最高です!!!

ただ黙々と片付けるのではなく、休憩中も観客を楽しませてくれるスタイルと、舞台の物語という魔法にかかった観客を、そのまま魔法にかけ続ける演出。
幕間を幕間とさせないというのは、原田さんの演出と鯨井さんの1人で場をアドリブでもたせる力のなせる技なのでしょう。本当に流石です。
休憩時間だというのに、ずっと物語の中にいるようで、とても素敵でした。


さて、ここで各皆様の感想は終わりなのですが……
忘れちゃいけない裏方さんの凄みです。
私が書くのもあれなので、こちらの配信をご覧ください。
打ち上げという名の、裏方さんへの【感謝】と【愛】を述べる会です。


私はこの配信が好きすぎて何度も見返しているのですが、この配信で、舞台というのは、表に立つ役者さん以外にも沢山の【プロの力】によって成り立っているんだなというのを実感しました。
改めて、素敵な舞台を作ってくださった皆様に感謝を。
(配信でも語られていますが、パチンコ is my lifeの時の扉が開く照明の表現は最高なので見てください! あと、散々話し合っていた音響問題を「何話し合ってたんだっけ?」って位完璧にしてくれた音声さん!素敵です!)


そして、とても個人的な事で申し訳ないのですが……
コロナ禍。
家族の仕事の都合で県外移動が出来ないので、配信という形で希望と舞台を届けてくださった皆様に最大限の感謝を。

今回私は、画面越しの配信観劇だったのですが、配信で観劇してこれだけの満足感です。
劇場で、実際に演技と音楽の圧、空気感を感じる事が出来たらどれだけ素敵だろうと思いましたが、出向くことが出来ない社員にも観劇の機会を与えてくださりありがとうございました。



いやね。本当に、配信でもすごい楽しかったんです。

昨今の事情で【希望を持つと絶望する】という言葉が、私の中で今年一年一番共感できたワードです。
PAT CompanyのYouTube配信は、家族の仕事柄コンビニなどへ買い出しに行くのも自粛し、自転車で5分の職場と自宅を往復する日々だった私が持った【希望】でした。
そんなメンバーが作り出した、ミュージカル『グッド・イブニング・スクール』
パッと笑えて、パッと元気になれる。
先の見えない状況だからこそ、今このミュージカルが心に染みたのではないかと思います。


私以外にも、今この状況に疲れてしまっている方が沢山いらっしゃると思います。
是非、ミュージカル『グッド・イブニング・スクール』をどうぞ。
配信は終わってしまいましたが、Blu-rayがございます。
きっとあなたの希望になってくれると思います。


いや、Blu-ray発売まで待ちきれないという方は、無料で見られる【公演ダイジェスト】や【稽古場動画】をどうぞ。
きっと音楽が耳に残って離れなくなるはずです。

ちょっと気になったという方は、グッズやパンフレットも通販で購入可能です。
是非チェックしてみてください。


また、8月にはPAT Companyの次回公演も決定しています。
どんな話になるのか、キャストはだれなのか、どの劇場でやるのか。まだまだ未定な事は沢山!!!
なので、これから会議で社員の意見を聞きながら舞台をつくっていくそうです。


今回の旗揚げ公演で実感しました。

このカンパニー、グッズしかり、日替わりしかり、会議の意見を結構くみ取ってくるぞ……!

まだ第2回公演までは日があります。是非皆さんも会議に参加してPAT Companyを支えてください。


今までの会議様子はYouTubeにアーカイブが残っており、誰でも無料で見ることが出来ます。


次回会議の日程などは、こちらのTwitterで更新されるので是非フォローをお願いします。



最後はどこかの回し者の様になりましたが、私はただのPAT Company社員(視聴者)でなんの権限も持っていません。
しかし、そんなただの社員が、これだけ楽しめるのがPAT Companyという場所です。


色々な情勢で先が見えないこんな時代ですが、目の前には楽しい事もあるはずです。
なら、まずその楽しい事を一緒に楽しみましょう。
そして、頑張って生きていきましょう。


りょう


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