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昔の恋人とピアスの穴

人生で本気で後悔している事は、あまり沢山ない方だと思う。でも、時々頭をもたげるように「やっておけば良かった」と思うことがある。それは「昔の彼氏にピアスを開けて欲しかった」ということ。

すでに3つピアスを開けている。2つは最初に結婚した時の元旦那に、1つは今の旦那さんに開けてもらった。でも、「最初に結婚を考えた、学生時代から社会人の始めの時期を一緒に成長した元彼」に、開けてもらっていないのだ。今でも時々夢に見る、大事なひと。別れてしまったけど、彼はずっと私の中で生きている感じがする。彼の中にも、忘れていても、私の要素はきっと生き続けているはずだと思う。お互いに人を愛し始めた時に手を繋いで、人生の様々な初めてを探究した人。私は元旦那も今の旦那さんとの間にも子供がいる。でも、彼と私の間には目に見えるものが何もない。

今思うとその頃の身の回りのものはキラキラしていて強烈な印象だ。初めて社会人の彼氏が出来て、いつの間にか自分も社会人になり、一緒に通勤して、物件を2人で見つけて半同棲し、近所に行きつけの店が出来、洗濯機が壊れて2人でコインランドリーへ手を繋いで出かけたりした。お互いの家の宗教の違いで揉めて、結婚するのしないので何度も話し合った。それなのに、私の体のどこにも彼の傷が残っていない。

時々思う。「ねえ、10分だけで良いから会えない?たまたま近くにいるの」と電話して、会ったら「あ、お願いがあるんだけどさ、ピアス開けてくれない?ここにホチキスみたいなのあるから、パチンってするだけなの」と言ってみようかしら。何年かに一度しか連絡を取らないのに、そんなこと言われたら驚くよね。顔合わせるのほぼ20年ぶりの元カノにそんなこと言われるのホラーだよね。分かってる。私自分が同じ目に会ったら走って逃げ帰るもん。

今の旦那さんと大喧嘩して、家を飛び出したら彼に会いに行こう。私は彼に恋はできるけど、一緒に住んだり結婚したりはきっと出来ない。まして子育てや親戚付き合いなど無理だ。あくまでその人とは「恋人止まりだった」、と今ならよく分かる。

勝手に幻想を抱く馬鹿な私はきっと痛い目を見るはずだ。「お前、馬鹿じゃねえの?おっかねえな」と、タバコをふかしながら言ってくれるに違いない。

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