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ご都合主義が売れる理由は「速度」にある。

先日、「偶然」のお話をしました。

記事をざっくり説明すると、

物語の中で偶然を使うには必然にする必要がある。
その為の方法として、偶然を書いてから後で理由付けをしていく……

といった感じのお話でした。

その話で冒頭に言ったのは……
「ご都合主義」はどっちかというと悪い意味である、ということ。

そのカウンターとして、今日はご都合主義の良さを語ります。

理由付けが不十分、そこにあるのはデメリットだけじゃない。
なぜ人気になるのかを分析してみましょう。


ご都合主義のデメリットは「信頼性のなさ」。

ご都合主義のデメリットは何だろうか。

一番は「出来事への信頼性」だと思います。

何故それが起きるのかという理由付け・根拠がないから、
「なぜ起きるのか理解できない」と思われた結果、ご都合主義と呼ばれる。

特に主人公たちにとって利益のある出来事だと呼ばれやすいですよね。


無論、出来事すべてを納得させることは難しい
というか、全部を詳細に書けるわけないよね。

だからこそ私たち作家は、
「書くもの」「書かないもの」を分けて考えているのですが……

その考え方とご都合主義の生まれる理由は似ているのです。

簡単に言えば、
「書くべき根拠を、書かないものとしてしまった」ということ。

これこそが最大のデメリットなわけですが……
別に根拠が必要じゃないと考えた場合、大きなメリットへと変わります。


メリットは圧倒的「速度」にあった。

ご都合主義のメリットとは、その速度にあると私は考えています。

根拠の提示には時間が必要です。
ユーザーの納得を強く引き出す場合であれば、それはもう多くの時間が。

分かりやすいのは以前も紹介した「5why」「なぜなに分析」かな。

一つの問題に対して何度も「なぜ?」と考えることで、
その原因の対策を導き出すフレームワークなのですが……

逆に考えれば、
完全に納得(解決)するにはそれだけの根拠が必要になるということ。

それらを全てユーザーに提示していくのは多大なる時間が必要です。
(物語の根幹となる大きな問題として有用な考え方ですが)

これを前提として考えると、根拠提示を端折るご都合主義な作り方は……

圧倒的に物語の展開速度が高いのです。


物語を読むには大きな時間が必要だ。

なぜ速度がメリットになるのかを知る前に、
現代における「時間」について考えてみましょう。

人が「1分間に読める文字は、平均で500文字」と言われています。

ライトノベルが大体12万字とすると240分。
それだけでも4時間は掛かる計算になりますね。

ちなみに自分がどれくらいの速度で読んでいるか、
を計測できるサイトがあるので一応ご紹介。

読書速度測定 | 株式会社ザイナス

この平均値から考えると、
物語を読むというのはかなり時間を食う趣味だと分かります。

つまり小説やノベルゲームというものは、
他と比べても圧倒的に時間の掛かるコンテンツなのです。


短時間コンテンツの時代が生んだ、ご都合主義文化。

それに加えて、日本社会はかなり忙しい文化となっております。
(他国は知らん)

時間ピッタリであることを求められ、
効率よりも働く時間の長さが求められ、
自分の好きなことに費やせる時間はそう多くはありません

そしてスマートフォンはそんな文化に沿って、
どこでも空いた時間(スキマ時間)で趣味を楽しめるものとなりました。

通勤通学の時間や、仕事の休憩時間。
スキマ時間でスマートフォンを触っていない人の方が少ない時代ですから。


こうしてコンテンツを手軽にそして安く楽しめるようになったことで……

「短時間で楽しめるもの」が評価されやすくなりました

つまり「根拠を少なくして物語が速く展開するご都合主義」も、
評価されやすくなったのです。

そして人は対比で物を考えるもの。
故に評価される短時間で楽しめるものが増えた結果……

「楽しむのに長時間掛かるもの」である、
「根拠をしっかりと提示した物語」が評価されにくいのかもしれません。

これらこそが、ご都合主義のメリットではないかと私は思います。


暫定的なご都合主義の使い方。

さて、ここまでご都合主義のメリットについてまとめました。

最後に一つ、
「どうやってご都合主義を使えばいいのか?」を考えてみます。
※まだ実証できていないので参考にどうぞ。

私が考えるご都合主義の使い方は、

「物語の大きな問題の根拠付け以外、全てご都合主義前提で考える」
というものです。


まず解決すべき大きな問題、というのは物語の中で重要ですよね。
ドラクエであれば「魔王を倒すこと」みたいなものです。

その大きな問題に関係するものは根拠重視で考えます。

「魔王を倒すこと」であれば、

・なぜ魔王を倒さなければならないのか
・魔王を倒すには何が必要なのか
・魔王がどこにいるのか
・魔王と自分の関係はどういうものなのか

みたいな感じ。
ここらへんは物語の中で根拠を多く提示します


しかし、それ以外は根拠なんてほぼ出さないように書いていくのです。
先ほどの例でいくと、

・魔王と関係しない街での出来事
・武器屋、防具屋などの品揃え(なぜか後になるほど強くなる)
・レベルアップする理由(経験値とは何なのか)
・モンスターの生息、再出現(リポップ)のついて

こういったことに根拠は必要ないと思い切って判断してしまいましょう。

必要のない情報を与えないことで大きな問題を目立たせたり、
重要な部分以外を長く書かなくても良くなります。

なお当然ですが、多少ご都合主義だと言われることには目を瞑ります
どんな作品であれあーだこーだ言う人は一定数存在しますからね。
しゃーなしや!


この方法で重要になりそうなのは、
大きな問題に対する根拠の出し方でしょうか。

あまり丁寧に出しすぎると結局間延びするような、
短時間で楽しめないものになってしまいそうですよね。

根拠そのものは軽く簡単に説明できるものにして、
数を増やすことで強い理由付けにしていく方がいいのかもしれません。


とまあ、
まだ自分で実証できていない考え方ではありますが解説してみました。

これから活動を通してより良い使い方を考えていければと思います。
あと現在売れている作品をもっと分析したいですね。

一緒に研究会してくれる人、いたら声掛けてください。

という所で今日はここまで。
あなたの創作活動の一助となれば幸いです。

では、また次回お会いしましょう。


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