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【読書】泣きそうになる瞬間は「かがみの弧城」ー辻村深月

あらすじ
学校での居場所をなくし、閉じこもっていた“こころ”の目の前で、ある日突然部屋の鏡が光り始めた。 輝く鏡をくぐり抜けた先にあったのは、城のような不思議な建物。 そこには“こころ”を含め、似た境遇の7人が集められていた。 なぜこの7人が、なぜこの場所に―― すべてが明らかになるとき、驚きとともに大きな感動に包まれる。 生きづらさを感じているすべての人に贈る物語。

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「時間を忘れる読書」をしたのはいつぶりだろう。
純粋に、本の世界に向かって、本の登場人物に会いに、そして結末を見届けるために貪るようにページをめくった。
「読書」ってこうだった!
小難しい本をクリアするための読書ばかりが読書とは言わない。
久々に物語を楽しんだ時間だった。

「本屋大賞受賞作」でもこの「かがみの孤城」は一味違う。
いやはや「辻村深月」さんはマジで天才だから。

読書仲間からこう言われてやっと手にしたこの「かがみの孤城」
彼には素晴らしい出会いをくれてありがとうと言いたい。
そして作者様には、素敵な物語と時間をありがとうと言いたい。

1.本屋大賞と辻村深月

この「本屋大賞」というのが嫌いだった。
どうせ本屋、というか出版業界が今一番売りたい本。
それを「賞」というものにくるんで話題にしたがっているような、今年の流行ファッションがあらかじめ決まっているようなイメージだった。

「本屋大賞」を読めば間違いない!という人はなんとなく信用できず、作品に罪はないものの、ちょっと冷めた目で見ていた。
そんな「本屋大賞」の中でも一際目立っているイメージだったのが「恩田陸」さんと「辻村深月」さんだった(なぜかはわからない。近くの本屋で毎回フェアってたのかも)

読書仲間からこの「かがみの孤城」を紹介されたものの、「辻村深月さんか〜、かの本屋大賞の常連の方ね〜」って感じの先入観があった。

しかし、この「辻村深月」「天才」と彼は言う。
そして、この「かがみの孤城」「時間を忘れる本」だという。

最近、続きが気になって読書に没頭したことないな〜と思っていた僕は騙されてもいいやの感覚で本書を手に取ってみた。

2.いじめ、不登校、家庭という重いテーマ

あれ?これってファンタジーじゃないの?

設定は確かにそうなんだけど、主人公の「こころ」は理不尽ないじめに遭い、不登校になり、序盤からマジかよと思うぐらい重いテーマがのしかかる。

それを「暗い」と捉えるかは読み手それぞれだと思うが、僕はそうは思わなかった。
「こころちゃんがんばれ!」
泣きそうになりながら、ひたすらそう思い読み進める手が止まらなかった。

「こころ」以外の登場人物も背景には暗い過去を秘め、学校に行けなくなってしまった子たち。

僕自身、学校へ行けなくなった経験はないが、ふと、学生時代学校にこれなくなった人を思い出した。
こんな気持ちだったのか。
理不尽に

「殺される」

と思ってしまう気持ち。
固まって足が一歩踏み出せなくなる描写がリアルで、心苦しくなる。

この本では「学校」が舞台だが、シチュエーションを変えていつでも僕らにこの恐怖が襲ってくることは容易に想像ができる。

「こころ」の行く末と「いじめとの闘い」にページをめくる手が止まらなかった。


3.散りばめられた伏線・ギミック、愛される結末。

本書で一番驚いたのはラストの「怒涛の伏線回収」である。
推理小説よろしくバンバン謎が解けていく。
普通なら「爽快感」と感じることが、「愛」を感じながら一緒に紐解くことができる。

謎が解明される時、「絶対そうだと思ったんだよ〜」と思ったとしても、それに付随する「愛」にはあなたも気づくまい。

作者は「ギリギリ、ミステリ作家を名乗れる」と仰っているらしいが、こんないファンタジーと社会派なテーマと、伏線回収を「愛」で包んでしまう作家など本格ミステリ作家にもいないだろう。

恐るべし、辻村深月。

あ、この人「天才」だわ。


4.映画の「こころ」がマジ「こころ」


最後に、おまけとして映画の情報を。
まだ公開前だし、この映画はアニメなんだけど、「こころ」役の声優さんがマジでこころそのものでビビる。
當間あみさんというらしいが、実写でいける。
年齢も同じくらいらしい。
マジで実写で見たい。
ウレシノの実写も梶くんでいいよ、もう。

5.まとめ

この「かがみの孤城」はただもんじゃない。
「辻村深月」女史も。
僕と一緒で「本屋大賞」に先入観を持っている人でも圧倒的に楽しめるし、「時間を忘れて読書したい!」という人にもおすすめ。

僕の大好きな、冒頭の導入文を真ん中と最後に持ってくるところ。
最高にニクい演出でハッピーでした。

こんなにいい作品、映画も見るか迷うね…。









100円でいい事があります(僕に)