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#コンテクスト

コンテンツとフォーマットのずれが生む意味~『コンテクストデザイン』の感想

このnoteは『コンテクストデザイン』という本と、その一連の出版活動に対する正直な感想と考察です。 はじめに断っておくけれど、この本の著者である渡邉康太郎さんから「アウトロー」と称されるほど僕はちょっと変な考え方をするらしいので、もしかするとうがった見方をしているかもしれないことを先に断っておきます。 1. コンテクストデザインについてコンテクストデザインとは、ユーザー自身が新しい使い方を発見したり、新しい意味を見出したり、そのプロダクトを介して人との新しい関係を紡いでい

露出過多と「意味のイノベーション」

イノベーションに求められることは、人が見いだす価値の「意味」を変革することだ。いま、ろうそくは光源ではなくむしろ「暗源」となり、電球よりも暗闇のある時間をつくっているように──。ロベルト・ヴェルガンティ教授の「意味のイノベーション」はTakramでのものづくりと共鳴する部分がある。特に一冊だけの本屋「森岡書店」や花と手紙のギフト「FLORIOGRAPHY」など。 2018年前半は、TakramCastやTakram Radioと連動して、意味のイノベーションを引き続き取り上

「意味のイノベーション」 TEDxプレゼンの日本語訳

デザインとその周辺を扱うポッドキャストTakramCastでロベルト・ベルガンティ教授の「意味のイノベーション」をテーマに収録をしたところ、Twitter上でちょっとした反響がありました。 イノベーションプロジェクトではよく「デザイン思考」が用いられますが、それだけでは片手落ちです。ときによって「意味のイノベーション」を使ったり、両者の要素を組み合わせたりしていきたい。実際、欧州委員会ではこの二つをデザインの両輪として扱っています。 2017年5月25日にミラノ工科大学で

Message Soap, in timeの強い文脈、弱い文脈

「強い文脈、弱い文脈」の枠組みを通して、前回は一冊だけの本屋、森岡書店のことを考えた。 文脈の強弱はあくまで相対的なものだ。次の例として、向田麻衣さんという人物の活動を取り上げ、その文脈の強弱を(私の解釈や想像も少し交えて)考える。なお別項にあるように、Takramは向田麻衣さん率いるLalitpurとともに「Message Soap, in time」というプロダクトを手がけている。石けんのなかから手紙が現れるというものだ。 ■ Coffret ProjectとLali

語ること、語り直すこと

うわさアメリカのイラストレーター、ノーマン・ロックウェルの絵に「うわさ」というものがある。 絵はマンガのように左上から始まり右下へ。黒革の手袋の女性が、どこかで聞いた話を別の女性に伝えている。するとその女性もまた次の人へうわさをリレーする。途中で電話を介している(実際に対面していないのに目線があっているようで愉快)。途中で会話を盗み聞きしている人。そこからどうやら非常に声の大きい人の耳に入ると、話が誇張されている雰囲気もある。最下段の中央、指を差されて笑われているのは、きっ